第12話 あとしまつは大事だよね

本日二本目の投稿です。


週末祭りだ!わっしょい♬


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 朝日が昇った。

 俺にとって異世界二日目の始まりだ。


 「昨日は濃〜い一日だったので、今日はのんびりと過ごしたいもんだ。」


 決してフラグではないとだけ言っておこう。


 「う〜ん!コーヒーが飲みたい!」


 少女の傍から立ち上がって、一晩中の看護で凝った体を解した。


 「ピッ」


 ゴンがコンテナハッチを開閉させている。ゴンのマニピュレーターは少女の輸液パックを保持しているので、手が空かないから自分で取れと言ってるようだ。


 俺は恐る恐るインベントリの闇に手を突っ込んだ。


 「突っ込んだ手の感覚が無いんだけど・・・コワ〜!」


 すると頭に愛用のコーヒードリッパーのイメージが浮かんだ。

 それで手をインベントリから抜くと、手には趣味のキャンプで愛用してるコーヒードリッパーが握られていた。


 「ピッ、キューピピッ」


 どうやら先に欲しいものをイメージしてから、インベントリから取り出すのが正しい手順らしい・・・。


 マグカップ、ジェットボイル(バーナーとクッカーが一体になった優れたギア)、バーナー用ガスカートリッジ、コーヒー豆・・


 必要な物が全部揃った!


 だが、ビールはどんなに必死にイメージしても出すことは叶わなかった・・・げせぬ!


▽▽▽


 朝日に煌く清らかな泉の岸辺、遠くに小鳥の歌声を聴きながら淹れたてのコーヒーの芳醇な香りを楽しむ!


 「ああっ、これぞアウトドアの醍醐味だよな〜・・・・・って、背後にゴブリンの死体の山が無ければなっ!!」


 「ピッ」


 昨晩ゴンがモンパレして引き連れて来たゴブリンゴンの愉快な仲間たちの死体が、森と空き地の境に散乱していた。

 優雅な朝の景色がぶち壊しだ!

 死してなお俺に精神攻撃をしてくるとはな!ゴブリン死すべし!いや、もう死んでるが。


 カロリーバーをコーヒーの残りで飲み込んで俺は立ち上がった。


 「さてと、ゴンさんよ。土方ひじかたさんではないして来るから、警戒を厳にしてくれ。気付いた時には接近されてましたでは洒落にならんからな。」


 「ピッ」


 作業に取り掛かる前に、もう一度ケモ耳少女のバイタルを確認した。


 「良し。バイタルは安定して来たし、顔色も大分良くなったな。次からは通常カロリーの輸液にできるかな?」


 俺はゴンから受け取った円匙えんぴ(シャベル)を担いで、本日のミッションに向かった。


 なんか森との境界から小動物が顔を出してこっちを覗いているんだが・・。

 口にベリーなんかを咥えてるのも結構いるな。何んなんだろ?


 目が合った途端に動物たちが逃げ出してしまった・・・。オレ氏傷付くorg


▽▽▽


 さて、本日のミッション。そう、それは巨大クマの怪物とゴンのパーティー仲間たちゴブリンの死体を埋めるための穴掘りだ!(とおい目)

 

 それから俺は人間重機と化し、ひたすら土と格闘した。

 こんなに穴を掘ったのは国防軍の新兵訓練ブートキャップ以来か?

 

 途中汗だくになったので、ヘルメットやIVAS等の個人携帯情報端末を含め、ボディーアーマーや武装を全部外して、Tシャツ姿になり地面に挑んだ。 

 SFP9(ハンドガン)だけは携帯していたがな。


▽▽▽


 ・・・果てしない戦いだった。


 援軍は無く、敵勢力地面は圧倒的!

 

 恨めしげにゴンを睨んだら、“頑張って〜“と言うみたいに輸液を持ったマニピュレーターをヒラヒラさせやがった!


 そして、夕方、黄昏時。

 ついに俺はやり遂げた!

 52匹のゴブリンと、1匹の巨大な怪物の全部を穴に埋めたのだ!


 これぞ勝利!俺は自分自身に勝ったんだっ!!


 俺は零れる笑を抑えようともせず、ゴンに勝利の証を見せようと振り返った。


 「ふふふっ、まあ、そうなの?」


 黄金の少女が身体を起こして、ゴンと楽しげに話していた。手にはポカリのペットボトルを持って。


 「ピ、キュ〜ン、ピッー」


 「なに楽しそうに話したんだァ?ゴン!」


 脱いだ装備一式を抱えて、ゴンを威圧した。

 少女と楽しげに話しているゴンを見たら、何か無性に腹が立ったんだよな。


 「キュゥン」


 ゴンは伏せの姿勢を取って動かなくなった。どうやら岩に擬態したつもりらしい。

 




 



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