第166話 婚約の条件 カイトside

「…どう言う事だよ」


「言葉のままですよ?」


唖然とするカイトを他所にミュウ母は淡々と話し続ける。


「3年前、エイト君が私達の家にやって来ました、勿論、ミュウやシルフィ、アリアンも一緒にね?」


「3年前…」


ちょうどカイト達が隔離寮で過ごしていた日だ、つまり"その時期を狙ったのだ"

カイト達が邪魔に入らない、絶好の機会に。


「彼を初めて見た時、すぐにわかりました、ミュウが心から信頼を寄せている相手なのだと。」


ミュウが秘密基地(隠し部屋)に泣きながら来た時、エイトは真っ先にミュウの所に行きミュウを慰めていた。


そしてミュウもエイトに心を開いているからこその心の痛みや悲しみを打ち明けていた

だからこそ、ミュウ母はエイトに接触したのだ。


「しかし、あれは洗脳されている状態…つまりまやかしの信頼です。」


「まやかしの信頼?」


その言葉が出てカイトはヨシ!と思ったのだろう、虚言を言い始める。


「そうです!ミュウは僕の事が好きなんです!相思相愛、本当は僕と結婚したくて仕方がないのです!」


「私の眼からだとそうは思いませんでしたけど?」


「騙されてはいけません!あれは勇者である僕に不正行為で勝つ程の屑です!」


あれ程の関係を洗脳やまやかしで一蹴するなど、周りから見ればあり得ない事だが、カイトにとっては真剣な話なのである。


「不正行為程度で負ける程、貴方は弱いのですか?」


「な!?」


「ちょっと!今の言葉なんですか!?」


「そうです!いくらミュウの母親とはいえ失礼ですよ!」


「言って良いことと悪いことの区別ができないんですか!?」


カイトが驚きのあまりたじろいでいるとアイ達がミュウの母に抗議するが、ミュウ母の威圧に圧倒されて黙る。


「貴方は勇者、つまり世界の厄災を止める義務がある、そんな人がたかだか英雄如きに負けるのですか?」


「で…ですから不正行為によって…」


「殺すか殺されるかの世界でそんな戯言が通用すると思うのですか?」


「そ…それは」


無理だ、世の中正々堂々と戦うやり方なんて人間対人間の戦い程度しかない

人間同士でさえ、不意打ち、奇襲、条約破り

毒ガス、生物兵器、原爆投下などありとあらゆる事をして自国の勝利の為に使っていた。


勝てば正義、負ければ悪

カイトの言葉も負け犬の戯言に過ぎないのだ。


「それに私はエイト君にある条件を与えました。」


「条件?」


「ええ、いくら私の権限でも貴族と平民の結婚には大きな壁があるわ。」


「それは分かっています。」


事実、アイ達も平民だが、カイトが勇者だからこそ、許される事であり、ただの貴族なら無理だ。


「だからこそ、私はエイト君が一代貴族にさせる為にこう言う事を言いました。」


「どう言う内容ですか?」


「"勇者であるカイトよりも先に厄災を倒す事"この条件をエイト君は飲みました。」


その言葉を聞いてカイトは、大きく笑う

まるでなんて馬鹿な男なのだろうと

言わんばかりに


「成る程、貴女も私の味方でしたか」


「はい?」


味方とはどう言う事だろうか?ミュウの母の頭の中で「?」マークが浮かぶが、カイトは気にせず話し続ける。


「良いでしょう、では僕もその条件で挑みましょう。」


挑むとはどう言う事だろうか?

不思議に思ったミュウ母はカイトに質問する

するとカイトは


「簡単な話です、僕もエイトと同じ事をするだけですよ。」


「…つまり、"先に厄災を倒し方がミュウと結婚出来る"と?」


「ええ、まぁあのモブに負けませんけどね?」


何故これ程までに余裕があるのかはわからないが、これは好都合だ、そう思ったミュウ母は


「わかりました、その条件でエイト君と勝負して下さい、負けても文句は言いませんね?」


「当たり前だ、僕は勇者だ、あんな卑怯な事でしか勝てないモブの屑に僕は負けませんよw」


そう言うとカイトはアイ達を連れて馬車に乗り、フローラ邸から去っていった。


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食中毒の原因はカンピロバクターと言う細菌らしいです、生肉か水か、どちらかが原因らしいです。

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