第7話 主人公様の(身勝手な)優しさ
「んまぁーーー!!!」
「ミュウ様、はしたないですよ?…あら、ほんとですね。」
「口にあったなら良かったよ…ふむふむシルフィさんのも美味しいけど、なんか足りないなぁ」
お昼休み、3人は屋上にて昼食をとっていた。
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30分前
チャイムが鳴り、昼休みに入った
ミュウはその音を聞くと同時に、エイトの足を踏む。
「いって!?なに!?」
授業が終わった瞬間に踏まれれば、誰だって驚く、しかしカイトに気づかれるのは嫌なので、聞こえるのはシルフィとミュウの範囲内に抑えた。
「ご飯!食べに行くよ!」ボソボソ
元気だが、ミュウも考えているのは同じなのか、声のトーンは低い。
「今、あの方は他の人達に囲まれていて身動きが取れません、今がチャンスです。」
たしかに、ここで機会を逃せば、カイトは必ずこちらに来る、そんな面倒くさい事はしたくないのでシルフィの言葉に頷く。
「さあ!行こう!」
鼻息を荒くしてエイトの手を掴む
それ程までに彼と一緒に昼食を食べれるのが嬉しいのだろう。
「…シルフィさん」
「…はい」
「首輪あります?」
「尻尾(意味深)もありますよ?」
「つけないからね!?」
「「誰が付けるなんて言った?(言いました?)」」
「鬼!悪魔!魔王!」
ミュウの喜び方が散歩に行ける事を喜んでいる犬に見えた為、また弄られるミュウであった。
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(そして誰もいない屋上で飯を食うことになったんだが…)
エイトの弁当が美味しそうに思えたミュウが
弁当を交換して欲しいとの事で交換し、今に至る。
因みにシルフィはミュウの弁当も作っており
エイトの弁当はミュウから少し分けて貰って食べている。
「あー、エイトのご飯とても美味しいよー♪」
「嫉妬してしまいますね、次こそは勝ちますからね?」
「次って…いつかな」
「明日かな?」
「明日ですね。」
「…もう確定なのね。」
そう言いつつ、断らないエイトに2人…特に
ミュウは大いに喜んだ。
「私ね、こうやって楽しくお昼食べれて嬉しいの!」
「いつもはあの男が
"1人は寂しいだろ?"とか
"皆んなで食べようぜ?"
等と訳の分からない事を言ってミュウ様の邪魔をしてくるので困ってたんですよ。」
それはただ単に好きな人と一緒にご飯を食べたいからだと思うが、アイツのことは嫌いなので、何も言わない。
「まぁ…俺も久しぶりに誰かと食事が出来ているから…嬉しい…かな?」
いつも…と言うかアイ達がいた頃はエイトと一緒に昼食をとっていた。
カイトが来てからはそれはなくなり一人で食べていた。
だからこそ思う、"幸せ"だと
しかし、幸せの反対は不幸、良いことが起きれば、逆の不幸も来る…まさしく。
今…とか
「カイトお兄ちゃん、早く早く!」
「ちょっと!アイ!カイト君が困ってるでしょ?」
「そんな事を言ってちゃっかり腕に抱きついているからメグミはタチが悪い。」
…エイトは酷く絶望する
何故こんな時間にコイツらが来るのか?と
なぜ足音に気づかなかったのか?と
それはミュウとシルフィも同じ事を思ったのだろう。
「ふざけんなよ、なんでいつも私が楽しい時に限って来て邪魔してくるの?いや、辛い時も関わって欲しくないのに絡んできてマジでうざいし、正義のヒーロー振りやがって私にとっては疫病神なんだよ…」ブツブツ
ミュウに至っては完全にヤバいスイッチが入っており、周りからは黒いオーラが流れてくる。
「はぁ、本気で殺そうかしら?」す…
「洒落にならないからやめてね?」
何処からかは敢えて言わないが、ナイフを出して仕留めようとするシルフィを理性で抑える。
「ほら皆んな、仲良くしようよ、早く皆んなの作ったお昼食べたいな。」
そう言って、何処で食べようか悩んでいるカイト。
「…あれ?先客がいた?…!?」
そこに両想い(カイトの片想い)であるはずのミュウは今別の男といる、それが焦りとなってこちらにその表情を見せながら近づいてくる。
「ミュウ!なんでこんな男といるんだ!?」
こんな男とは失礼だが、仕方ないだろう
エイトもつい最近まで仲良かった彼女達がそちらに行ってしまった悲しみと似ているからだ。
そうしてカイトは3人を無視してこちらに来て酷く動揺しながらミュウを見つめる。
「…最悪…折角の時間を…」
そう言ってカイトに聞こえないくらいの舌打ちをする。
「行きましょう、こんな人と話すのは時間の無駄です。」
そう2人に聞こえる程度の声量で伝える
それに納得した2人は弁当を片付け始める。
その間でカイトはミュウの目の前まで行き
話しかける。
「どうしたんだよ?一緒に昼食食べようぜ?まだ時間はあるだろ?ついでにコイツとの関係も知りたいしな。」
「…別にいい」
「本当!じゃあ早く食べよう!」
どうやらカイトは別にいいを一緒に昼食を食べても良いよ?と言う意味で解釈したらしい、その為カイトはミュウの手を掴もうとするが…
「…嫌っ!」パシッ
「………え?」
そう言ってカイトの手を弾き、エイトとシルフィの影に隠れる
(エイトお願い)
(ハァ…わかったよ)
この男は何処まで面倒くさい事をさせるんだ
そう思いながらミュウを庇う。
目の前のハーレム姿に腹が立って仕方ないし、アイ達のあの姿を見たくない
…けど
(彼女の為にも…人肌脱ぐかぁ)
そう思ってカイトの前に悠然と立つ。
「てめぇ…僕のミュウに何をした?」
そう言って胸ぐらを掴み上に持ち上げる
細身の体のくせに思った以上に力があり、エイトを持ち上げる事が出来るようだ。
物凄く動揺しているのだろう、ハーレム主人公様のカイトは女の子達に囲まれながら
"僕なんかがモテるわけがない、皆んな彼女じゃなくて、ただの友達だよ"
と鈍感主人公の様に過ごしている彼は
とても戸惑い、焦っている
その姿を見て
「………フフッ」
笑ってしまった、仕方ない
カイトのハーレム姿にはうんざりしていたし
心の中では仕返し…というか、酷い目にあってほしいと思ったりしていた。
それが叶ったのだ、笑わずにはいられない
さらに笑うのは
「ミュウはな…昔から身体が弱いんだ!だから体力もないし、少しの運動も出来ない程なんだぞ!」
「…え?」
ミュウの事を身体が弱い女と言った事だ
彼女と仲良くなって2日、そんな姿見たことないし
「そんな訳あるかよ…」ボソ
とシルフィがタメ口でそう呟く。
もう怖いよ…この人
「それなのに無理矢理こんな所に連れ出して…倒れたりしたらどうするんだ!!」
(倒れるって…転んでもタダでは起きない様な人だと思うのだが?)
て言うか、この男はそう思っているのか?
幼馴染みと自負しているのなら、彼女の事も最低限知っていると思ったのだが…
(こりゃあ…ミュウの事を全く理解していないなぁ)
だからこそカイトは女の子達に囲まれていてもその子達の想いすら気づかない。
故に彼の次の言葉は彼女達の心を傷つける
「と言うか、彼女達はどうするんだ?一緒に食事をするんだろ?」
「そんなどうでもいい事で僕の話を逸らすな!てめぇ!僕のミュウになにをしたぁ!!!」
「…カイト…お兄ちゃん…?」
「どうでも…いいって…」
「…私達の事は…どうでも…?」
アイ、メグミ、サユリはそう言って酷く絶望している、当たり前だ好きな人にお前達なんてどうでもいいと言われたのだ、普通はこうなる。
「…心が腐ってますね」ボソ
「だから嫌いなのよ」ボソ
シルフィとミュウがカイトを嫌う理由はここにもあるのだが、カイトはそれにすら気づかない。
「お前の物じゃないだろ?…それに何もしてないよ、それに俺は2人きりではない。」
そう言ってシルフィを見る
「またお前かぁ…!!!」
「また…とは失礼ですね?私がいてはいけないのですか?」
彼はシルフィの事も知っている、だからこそミュウと一緒にいてはいけない理由はない。
(そもそもエイトと一緒にいてはいけない理由もない。)
「ああ!だってミュウは身体が弱いし!君とは仲良くないだろ!」
「…くだらない、行きますよ、お二人共」
「………ええ」
「すまないな、俺はただ彼女と仲良くなりたいから一緒に食事をしたんだ、悪かったな。」
「待て!話はまだ終わっていない!!僕は彼女の幼馴染みだ!彼女を守れるのは僕だけだ!」
「…もし、俺がミュウに危害を加えようとしてもシルフィにやられるよ。」
そう言ってエイト達は屋上から出る
カイトはまさに親の仇を見るかの様に
アイ達はゴミを見るかの様に
見つめながら、昼休みが終わった。
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ミュウ、シルフィ…もう1人はもう暫く後に登場します。
早く登場させたい
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