第4話 主人公様が苦手なヒロイン様
次の日
「………」
朝起きていつも通りに学園に行こうとすると、目の前に馬車があった。
「…えーと…これは?」
見るからに豪華な馬車が家の前にあるため、周りの人たちは驚きながら通り過ぎていく
そんな中、馬車の中から顔見知りが現れる。
「おはよう、エイト」
「おはよう御座います、エイトさん。」
「…ミュウに…シルフィ?」
何故ここにいるのだろうか?学園に行く時にこんな馬車が通った記憶もないし、そもそもここの通学路ではないはずだ。
「?…どうしたの?早く乗りなよ。」
「…え乗るの?」
「それ以外に何があるの?」
「……歩いて学園に行く。」
ここからの距離ならいつも歩いているし、わざわざ馬車で行く程の事でもない…が
「……………」うるうる
「………」ちら
「………」フルフル
涙目になるミュウを見てどうすればいいのかシルフィにアイコンタクトすると
"諦めろ"と言われたので、諦めて馬車に乗る
「………!」パァァァ
すると新しい玩具を買ってもらった子供の様に一気に元気になる。
(この子ますますわからなくなるな)
本当に不思議だが、今は取り敢えず置いといて、2人の向かい側に座り、ドアを閉める
するとゆっくりと動き始め、馬車が移動し始めたことがわかる。
「………」
外を眺めると少し高さがある為、いつもと同じ場所なのに少し雰囲気が違い、なかなか良かった。
「どうやら気に入ってくださった様ですね?」
「ああ、でもこの時期はまだいいかなぁ」
「と、言いますと?」
「夏や冬の季節…」
「………ああ、でもこっちも辛いよ?」
エイトとシルフィの話にミュウが入る
どうやら2人だけで話すのはいやらしい。
(雰囲気的に)
「そうなのか?」
「そうよ、夏は窓しかないから暑いし、冬は窓を閉めても寒いし。」
「魔法を使えばいいのでは?」
「そんな暖房器具代わりないよ。」
「そうですねぇ、夏は氷魔法でなんとかなりますが、冬はどうしようもありませんね。」
氷を使って周りの空気を冷やしながら、自身も涼める事はできるが
冬は火の魔法だと酸欠になるし、窓を開けてらあったかいのが逃げる為意味がない。
「なんか便利そうなのありそうなんだけどなぁ」
「それなぁ、なんかこう、あったかい風を作れたり、あったかいのを持ち運べたり出来ないかな?」
「そんな物、あったら欲しいくらいですよ。」
そんな事を話しつつ、エイトはふと思う事をミュウ達に話した。
「ところでさ?ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「ん何、エイト?」
「なんでございましょうか?」
「ミュウってさ、もしかして無口じゃない?」
昨日と今日の間だけだが、ミュウはエイトとシルフィに対してとても饒舌だった。
昨日なんて夢なんじゃないか?って寝る前に思った程だ。
そんな事を言うとミュウはキョトンとした顔でこちらを見る。
(なんか変な事言ったかな?)
何かおかしな事を言ったか?と考えていると
「いや、当たり前じゃん、何言ってるの?」
「は?」
貴族様相手だけど、普通に舐めた態度で言ってしまった、しかしそうだろう?
学園ではほとんど喋らない人間が、無口じゃないって言うのだ。
「私はお喋りは大好きよ?でも嫌いな相手とは話したくないだけなの。」
「嫌いな相手とは?」
学園の人とほとんど喋らないのだ、そうなると全員って事にもなるので、心配になる
しかし、そんな心配とは裏腹に思いがけない相手を言う。
「カイ…かい…か…誰だっけ?」
「ガイジ様ですよ」
「カイトな」
「そうそうカイジ様です。」
「それはギャンブルな」
顔がグニャアとなりそうだが、必死に抑えて
ちゃんとした名前を伝える
そもそも幼馴染みではないのか?
(そう言えば、前に…)
無神経とか、ご都合展開とか散々言ってた様な…?
まるで自分ではないかの様に話していた為、あまり記憶にないが、確かその様な事を言っていた筈だ。
そして案の定
「うーん、前にも言ったと思うけど…まぁいっか、改めて言うよ。」
「…私、あの人嫌いなんだよねぇ、やけに話しかけてくるし、小さい頃からずっと近くにいるし、気味が悪いの。」
「彼も貴族の息子で、家もそれなりに近いせいで、何かしらを理由にこちらへ来るので、本当に迷惑です。」
「………」
まさかの嫌い発言、カイトの姿を見る限り、明らかにミュウに好意を抱いている
なのに当の本人が、嫌いと言っているのだ。
「だから話も必要最低限にして極力関わらない様にしていたのに、ずっと付き纏ってくるし、シルフィに頼んでも意味ないし、本当に嫌い。」
「お嬢様に近づくのはやめてください、お嬢様は迷惑をしていらっしゃいます…と何度も説明しているのですが………」
嫌よ嫌よも好きの内、っとでも思っているのだろうか?もしくはただ単にツンデレとでも思っているか?
兎にも角にも、カイトの想いが実る事は永遠に起こらないだろう。
それからもミュウと話していたのだが、どうやら相当カイトに対しての愚痴が溜まっていたらしく、吐き出す様に話す。
しかし、シルフィとエイトはそれをしっかりと聞く
彼女を一眼見た時は所謂高嶺の花
と呼ぶに相応しい人だった、しかし今いる彼女は年相応の女の子にしか見えない。
「たしかに…カイト…君…だっけ?とは他の人達から見れば幼馴染みと言う部類には入るわ…」
でも、と続けて言う
「ただ小さい頃から一緒にいる…
いや、いた…かな?
好きでいたわけじゃないけど
親は貴族同士の関係で多少は仲良いけど、
彼とはそこまで仲良くないし。」
(…本当に喋るなぁ)
(幻滅しましたか?)
(いや?なんか親近感が湧くぐらいかな?)
本当にストレスが溜まってたんだろうなぁ
そう思いながら話を聞く。
「貴族のせいかわからないけど、本当にずっとひっついてくるの、何をしても一緒にいようとして、私が好きで選んだ道なのに、それを何処からか聞いてついてくるからもうストーカーよ。」
(それで口癖が、離れたくないから
お前は俺が必要だから
俺がいないと駄目だから、で、この学園も
ミュウ様が行くと決めた事なのにあたかも
自分が一緒に行こう!っと誘ったかの様に
お前なら来ると信じていたよ!
と言う始末です。)
シルフィが小さな声でそうエイトに呟く
本当に何処のらのべ(?)の世界だよ
これがこの世界の主人公なら
ヒロインは絶対についてくる。
(まぁついてこない世界もあるが)
(こりゃあ完全に好意持ってるなぁ)
カイトは絶対にミュウの事が好きだ
だからこそ、彼女とずっといたいから
ついていき、きっと周りが勘違いをしカイトを応援していたのだろう、だからここまでいってしまったんだ。
「本当に嫌だ、幼馴染みだから結ばれなきゃいけないとか、本当にあり得ないし、あんな唐変木を理由に人の気持ちを理解しようとしない人とか無理。」
「確かになぁ」
昔の自分を重ねて、第三者から見て思う
彼はハーレム主人公特権の恋愛に関して物凄く疎い。
あそこまで好意を向けているのに、それが当たり前だと思っているのだ。
ミュウはきっともっと多くの女性を見てきたのだろう。
だからこそ彼の醜さがわかり腐れ縁故の嫌悪感もあるのだろう。
「あんな人に好かれる人は相当な不幸者よ、数多の女性達の悲しみを背負うんだから。」
「………」
「………」
その人がお前だよと言いたいが、黙っておく
そんな事を言ったらきっと気絶する
しかしそれなら…
「んじゃあさ?なんで俺と関わろうとしたの?」
それがきっとこの前の違和感の正体につながるだろう。
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続く
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