第5話 貴方と話す理由
「………」
エイトの質問にミュウは黙る
まるで何か考え込んでいる様な感じだ
時間にして数十秒程度だと思うが、彼にとっては数十分くらいに感じている。
「…わかんない」
「………へ?」
「だから、わからないの、ただなんとなく貴方のことが気になってお話したくなっただけ…」
それがよくわからない所なのだが、どうやらミュウ自身もなぜこの様な行動をしているのかわからないらしい。
「でも、貴方と話すのは正直言って初めてじゃない気がする…まるで長年ずっといたかの様な感じだった。」
それに関しては同感だ、あんなほぼ初対面の相手、しかも自分よりも身分の上の貴族様にあんな態度を取れるわけがない。
(学園にはそんな差別はないが)
「ミュウ様がおかしいのはいつもの事ですが?」
「おいこら」
「すいません、でも確かに、人と全く接しようとしない人が赤の他人に等しい人とここまで話せるのは、何か理由がありそうですね…一目惚れ?」
「「いや、それはないだろ(でしょ)」」
エイトとミュウは2人で否定する。
「…ですよね?」
なんとも不思議な事だが、これはもうお手上げだ。
「ミュウもわからない、シルフィが知るわけないし、俺もよくわからない………なんなんだろうな?」
「でも、なんか引っかかるのよねぇ、こう…喉まで来てるのに、きてる感覚だけで…もどかしいあの感じ。」
エイトも同じような感覚がある
多分あと一つ、何かしらのヒントかピースがあれば、一瞬でわかる感じだ。
「…なぁもうこれに関して考えるのはやめようぜ?、これ以上は多分わからないと
思うから。」
その言葉に賛同した2人は頷く
「そうね、せっかくエイトがいるんだもの、もっと楽しい話がしたい。」
「頭の中がスカッなミュウ様にしてはいい案ですね。」
「それって遠回しに私の事馬鹿って言ってるよね?」
「馬鹿って意味を知っているんですか!?」
「それくらいわかるわ!」
(シルフィって実はドS?)
ミュウのメイド…の筈だが、相当無礼な事を言っているのはエイトでもわかる
しかし何も起こらないと言う事は、もういつもの事なのだろう。
「シルフィもそれくらいにして…ね?」
「エイト…」
「今は勉強の時間じゃないんだから。」
「ちょっと!?」
「エイトさん、最高です。」
「…グス…もういやぁ」ひぐ…えぐ…
ミュウの弄りはあともう少しだけ続き
それからは他愛もない話をして、気がつけば
校門まで来ていた。
「もうお嫁に行けない、エイト貰って…」ギュッ
「…ちょっと弄り過ぎたな。」
まともに会話をし始めて2日目、まさかの告白(冗談だけど)
「これで被害者がまた1人、ご愁傷様です。」
「もうやだこのメイド…」
そう言いながら馬車を降りる時はシルフィの手を借りて降りる、本当にただの戯れあいなのだろう。
そうして馬車を見送った
ここで待つのかと思ったが、放課後にもう一度来てくれるらしい。
「思ったよりも早く着いたな」
「そう?いつも通りだと思うけど?」
いつも歩いて来ていたのでここまで余裕で来たのは入学してから初めてだ。
「それでは早く教室に向かいましょう、ここにいても時間の無駄です。」
敬語なのに威圧感が凄いシルフィの言葉に従って中に入る。
——————————————————————
~教室~
「思ってたよりも静かだな。」
いつもならもっと賑やかになっているのに
とても静かだ。
「この時間が学園に居る時で一番好きな時間なの。」
そう言って、ちょっと不機嫌に話す。
「そうなの?」
「そうよ?いつも私の周りにうるさいのがいて、とても迷惑してるんだから。」
「だからこそ、私も極力関わらないようにしていたのです。」
「それはなんで?」
「私がミュウ様と話していると面倒くさい人も混ざって来て、そのせいで他の女性の方達も混ざり始めるともうやってやれないので。」
「…ああ…なるほどね」
絶対にカイトだ、彼はミュウの事が好きだ
だからミュウが楽しそうに話している内容を聞いて自分もあたかも好きなんだとアピールしてもっと仲良くなろうとくる筈だ。
そして彼女を利用して仲良くしようとする
人達も現れて…多分前の学園であったんだと想像出来る。
だから2人は表向きは、赤の他人の様な感じなのだろう
これで2人の謎はわかった。
「それじゃあ、アイツらが来るまで話してようぜ?」
彼らが来れば自然と周りがうるさくなる、
その時になったら、喋らなければいい。
「ええ、そうしましょう!」
「では、ミュウ様がお漏らしを始めてした事について。」
「シルフィは黙ってて!!」
「是非聞かせて貰おうか?」真剣
「エイトも聞かないの!」
今まで溜まって来た負の感情が、ミュウと話す度に無くなっていくのを感じる。
カイトに奪われた悔しさを彼女が拭ってくれる。
それがとても気持ち良くて、この時間がいつまでも続いて欲しいと思ってしまった。
——————————————————————
そんな楽しい時間もある声でかき消される
それは最も聞きたくない声だった。
「あ…アイちゃん、む…胸が当たっているんですが?」
「あ…当ててるんです!は…恥ずかしいので言わないでください!」
「カイト君、私の胸の方が大きいよ!」ギュム
「わぁカイト君って幸せ者~」このこの~
カイトを中心に集まる集団、ハーレム集団が教室に入って来た。
周りの目は嫉妬、憎しみ、妬み、嫌悪等様々な目線が行っているが、彼らには効果がない様だ。
「皆さん!カイト様の独り占めは駄目ですよ?」
「そうよ!不公平よ!ね?カイト君?」
他の女子達もいたらしく、アイ達を引き剥がして、口論する。
「ぼ…僕は、別にどうでも………」
「…………………………」
カイトが周りの女子に困っていると不意にこちらと目が合う。
きっと彼の事だ、周りの女子達を見ながらミュウの所にいきたかったんだろう。
そして見たくない光景がそこにあったのだろう。
「っ!!」
ミュウが他の男と仲良くしている姿を
自分には見せてくれない、笑顔を
(うわ、面倒くせぇ)
シルフィに目を向けると
"諦めろ"と死んだ目で伝えてくるので
心の中で深い溜息を溢しながらカイトを待つ。
カイトは他の女子達と話していたのにも関わらず、一直線にこちらに来た
"俺の女に何してやがるんだ!"
そう言わんばかりに睨みつつ、敵意全開で
こちらが困惑するほどだ。
「よ…よう、ミュウ、どうしたんだ?いつも寝ているお前が起きてるなんて…珍しいな?何か困ってることでもあるのか?手伝うよ?」
(うっわ、これに気づかないの?)
(だから言ったでしょ?諦めろって)
他の男と話す焦り
怒り
悲しみ
それがこちらからよくわかる、そんな態度で話しかけてくれば一目瞭然だ。
そして先程まで笑顔を浮かべていたミュウは
「……」
死んだ目に戻り、興味なさそうにそっぽを向く。
「…特にない。」
たった一言、いつもの彼女だ
"私に関わるな"
そう全体からオーラ全開のミュウに対して
カイトはハーレム主人公特有の一方的な善意を無理矢理押し付けようとする。
「ない…って、そんな訳ないだろ?こんな知らない男と話すぐらいの事なんだろ?…だったら僕みたいに知ってる人に頼った方がいいよ、遠慮しなくていいからさ?」
そう言って馴れ馴れしくミュウの頭を撫でようと手を伸ばすカイト、それを手で弾き
エイトとシルフィの影に隠れる。
「私がいるので心配無用です。」
シルフィが簡潔にカイトに言う
知ってる人が必要ならシルフィがいるから
テメェは失せろと言う。
「そ…そ?まぁ…」
カイトはシルフィのことは納得したが
もう1人の男に目線を向ける。
「んじゃあこいつは何なんだよ、こんな奴クラスにいたか?」
(ハーレム主人公様…せめてクラスメイトくらい覚えてろよ…)
そう思いながら、エイトは軽く自己紹介を始める。
——————————————————————
続く
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