俺と平井

本当にいい加減にしてほしい。毎日毎日決まった時間にああして平井はやってくる。



それはあの日、梓ちゃんが平井に怖い思いをさせられたと言っていた日もそうだった。


その日に起きたことは梓ちゃんが話していたこととほとんど同じだ。

突然ドアが叩かれて、平井が叫んでいた。


「桂!いるか⁈助けてくれ!」


最初、俺は正常な人の反応として、ドアスコープで確認してドアを開けようとした。

ドアの前に立っていたのは血相を変えた平井。そしてあとはドアを開け、平井を家にいれてやればよかった。

でも、平井の顔、大嫌いな平井の怯え切った顔を見て気が変わった。


俺はドアを開けるのをやめた。


平井の方もスコープから覗いている気配をなんとなく感じ取ったようで


「桂?いるんだな?頼む、開けてくれ!」


とドアをたたいた。


「嫌だよ」

俺はそう答えた。俺の手はとっくにドアノブから離れていた。


「え……桂?ちょっ、まじでやばいんだって!開けてくれ!」


「嫌だよ」

俺はもう一度繰り返した。


「冗談なら面白くないぞ⁈ほんとにすぐそこまでバケモンが来てるんだって!」


「冗談なんか言うかよ。前から気に食わなかったんだ。俺が梓ちゃんのこと好きだったの知ってて横取りしていきやがって。その上見せつけるみたいに三人で遊ぼうなんて言い出して。そっちの方がよっぽど面白くない冗談だ」


「そ、それは……」


「じゃあな」


「待ってくれ!桂!俺たち親友じゃないか……クソっ」


部屋の前から走り去っていく足音が聞こえた。


そして梓ちゃんの体験談へとつながるわけだ。

というのも、俺と梓ちゃんの家は近く、駅付近には色々な店や大きいモールがあるのもあり、よく平井は俺たちの家を行ったり来たりしていた。

しかし駅に近いのは俺だ。あいつは駅の近くで遊んでいて、帰り道で追いかけられているのに気づいた。駅に逃げ込めばよかったのだろうが、大方自分を追いかけているものがなんなのか見えて、知った人もおらず、閉鎖的な駅より、知人の家にかくまってもらった方が安全と考えたのだろう。

しかし俺が拒否したため仕方なく梓ちゃんの家に走り去っていった。というところか。


しかし俺のときと違い、梓ちゃんのほうでは化け物が電話で細工をしたようだ。俺より開けてしまう可能性が高いとでも思ったんだとしたら、あの化け物は知能があるのかもしれない。









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