俺
あれから数日たった。
あの日からずっと平井の行方に心当たりがないか周りに聞いてみたりもしたが、誰も平井のことを知らなかった。
それどころかこの聞き込みにより、知人らに平井行方不明の件が広まったくらいだった。平井の家族も平井と連絡がつかないことに気づき、俺や梓ちゃんに連絡が来たが状況はみな同じだった。平井は俺なんかと違い、定期的に実家と連絡を取っていたんだな。
今日もまた平井のいなくなった日常を一日更新した。
家につき、携帯を見てみるも当然平井からの連絡は入っていない。
あの日から、梓ちゃんの言葉が頭の中の一部を占領している。
『桂先輩、先輩だったらどうしていましたか?』
桂先輩だったら……か。俺だったら……
ドンドンドン‼
けたたましいノック音で思考は中断される。とはいえ、これはノックなんて落ち着いたではものない。ただ力任せにドアを殴りつけているだけだ。
ピンポーン、ピンポン、ピンポ、ピンポ……
今度はインターホンだ。壊れないだろうか。
時計を見て、意外と時間がたっていたことに気づき、ゆっくり腰をあげる。
この現象はここ数日、いや、平井に何かあったと思われる日から毎日続いている。
ぺたぺたと廊下を歩いていき、ドアの前につく。
「桂!いるんだろ⁈開けてくれ!」
聞きなれた声が聞こえた。
「開けてくれ!桂!いるんだろ?」
声の主は変わらず必死な様子で叫ぶ。
はぁー……
大きい溜息をつきながら玄関に座り込む。
「……なあ、平井。いい加減にしてくれないか?もう何日たったと思ってるんだ?いい加減諦めろよ」
そういうと、ドアをたたく音がやんだ。
「どういう意味だよ?いいから早く開けてくれ、やばいんだって!なんかが追いかけてきてて……」
「知ってるから騒ぐなよ」
「は⁈意味わから「喋るなって。」
平井はごちゃごちゃ言っているが、無視して声をかぶせる。
「そんなことより……梓ちゃんはいい子だよな……。
お前がいなくなったあと、無言電話がかかってきたり、ドアが叩かれてるのに覗いても誰もいなかったりで怖いって相談受けてさ……。お祓いとか色々アドバイスしたらすんなりいうこと聞いてくれて。
お守り渡しても素直に受け取ってくれたし、盛り塩もしておいたら?って言ったら手伝ってほしいって家に呼んでくれたよ。
ま、それがお前を追い払うことになってるって知ったらどう思うかは知らないけど。あはは。でも彼女にはもうお前が全然見えてないみたいだし、同じようなもんだよな?大事な彼女怖がらせたくないだろ?
大丈夫、お前の大事な可愛い彼女は、これからは俺が守るからさ。お前からだけど。ははは。」
「何言ってんだよ⁈意味が分からないって!頼むから開け……あ、桂……助け……」
そういったきり、ドアの前から声は消えた。
「はぁーやれやれ。やっと終わった」
玄関に背を向け部屋に戻る。
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