本当の愛とは

「不安だったのでしょう? 私が離れて行ってしまうことが。不満だったのでしょう? 私が他の人と仲良くすることが…………ふふっ……私、茜ちゃんを試したかったの。どれくらい私のこと愛してくれているのか知りたくてね」

「試したかった?」

 わけが分からない。

「私は、本当の愛を求めた。でも、家族も、親戚も、友達も、恋人も、私に本当の愛をくれることはなかった。だから最後に、一番私を愛してくれていそうな茜ちゃんという親友を試した」

 数秒間の沈黙。

「でも、結果はみんなと同じだった。自分のことしか考えていなかった。ねえ、こんな世界に生きている意味なんてないわ…………私を、茜ちゃんの大好きな私を、今すぐ殺してええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 私は、息をのんだ。

 すがるように黒々と渦巻く鈴ちゃんの瞳。

「ねえ、早く」

「嫌だ! 私は鈴ちゃんに死んでほしくない!」

 私の瞳から溢れ出す大粒の涙は、悲しさからだろうか。

「そんなこと言わないで! もう生きたくない。お母さんは、私を周りに自慢するための人形にも、ストレスをあたるためのぬいぐるみにも、自分の願望を押し付けるための傀儡かいらいにもした。お父さんは私のためにお金を使わない。自分ばかり。助けを求めても、親戚は去っていった。友達も恋人も、結局は自分のことしか考えていない…………もう、嫌になったの。こんな私に、生きてなんて言えるの、茜ちゃん?」

 鈴ちゃんの口の端が醜く歪んだ。

 私も鈴ちゃんの渦巻く闇に飲まれる。

「私も、もう生きたくない。私は、望まれた子ではなかった。お母さんにもお父さんにも求められないし、愛されない。曲がった性格だから、友達も鈴ちゃんだけ。私だけを愛してくれる人が欲しかった」

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