私の印

「ん……んん」

 鈴ちゃんが、うっすらと目を開けた。

「あ、起きた?」

 私は鈴ちゃんの顔を覗き込んで、にっこりと笑った。

 鈴ちゃんは手首につけられた手錠を不思議そうに眺めた。

 そして、体を起こそうと身じろぎしたとき足枷に気づく。

 それと同時に、足枷からベッドの脚に伸びる鎖にも。

「何、これ」

 鈴ちゃんはぽつりとつぶやいた。

「鈴ちゃんが逃げようとするからだよ」

 私は冷淡に告げる。

 それを聞いて、鈴ちゃんは自分の置かれている状況を理解する。

「はっ、外して! こんなの茜ちゃんじゃない! いつもの優しい茜ちゃんはどこにいったの?」

 じたばたと暴れる鈴ちゃんの頭を、優しく愛でるように撫でまわす。

「これが、本当の私。今まで我慢していたけど、鈴ちゃんがあんなこと言うから」

 鈴ちゃんは鈍感なのだろうか。

 意味が分からないと言った表情で私を見つめた。

 私はいらだって、鈴ちゃんの鎖骨に噛み痕をつける。

「痛い! な、何したの?」

「鈴ちゃんが私のものだって印」

 鈴ちゃんは、涙目になってなおも暴れる。

「そんなに暴れると、綺麗な手足に傷がついちゃうよ」

 少しはおとなしくなったのを確認してから、私は朝食を取りに行った。

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