天使の疑問

蒼衣 ツキ

天使の疑問

今日この世界から消えようと決意し、よくあるような廃ビルに来た

まぁ、なんとなくだ

現実は良いことなど何も無くただ、辛い日々を過ごしていた。

そんな世界に居る意味はあるか?と考え始めたのが昨日の事、それからここに来るに至るまでそんなに時間はかからなかった。


さて、夜も遅くなったことだし…

「行くか…」

最後の取り返しのつかなくなる1歩を踏み出そうとした。


「ちょっと待って!」


突然聞こえた声に驚きのあまり身を引いてしまった。

誰かに見つかったのかと慌てて振り返る…

「…誰もいない?」


「上だよ〜」


上?……!?

振り返り、上を見ると目の前にはよく絵画で見るような「輪」を頭に浮かべ、純白の翼をもった「天使」としか形容出来ないような者の姿があった

人は本当に驚いた時は声なんて出ないんだなぁ…と冷静(?)な思考をしながら惚けていると


「今、何しようとしてたの?」


あまりに驚き過ぎてここに来た目的を忘れていた、でもこの人(?)に言って警察とかに言われても困るし…

「何もしてないです!」

と慌ててその場を離れようとした


「待って待って!絶対貴方今ここから落ちようとしてたでしょ!」


うっ…誤魔化せなかったか…

「…そんな事はやめろとか言うんですか?」


「まぁ確かにやめて欲しいな〜、とは思うけどそれよりなんで落ちようとしたのかな?って気になってさ」


理由なんて…

「ただ、疲れただけですよ。信じてはないけど天国なんかに行ければ楽だろうし、無くても何も考えなくて済むから」

天使はキョトンとした顔でこちらを見ていた


「んー、とっても言いにくいんだけど、君たちの思ってる天国ってここの事なんだよね」


?それは…どういう…


「んじゃ、ちょっと良くないものを見せてあげようかな、今君が落ちようとしてた地面を覗いてごらん?」


…何故か言われるがままに覗いてしまった

「…っ」

黒い人(?)のようなモノが手を広げていた


「あれが君を待ってたモノだよ、あれに捕まって良いって言うなら止めないけど…」


「この世は君たちの思ってる天国とは違うだろうけど、これから君の人生がどうなるかも分からないでしょ?どうしても無理だと思ったら次は止めない、だから今日は素直に帰ってもらう、って感じでどうかな?」


あれには捕まりたくないし、確かに私の未来の時間はまだあるからな…

「うん、今日は帰るよ」


「それは良かった、君の人生がこれから輝きますように…じゃあね〜」


天使はそう言って去っていった

「バイバイ、天使さん」

自分も家に帰ろう



「やれやれ…最近はああいう若者が多いなぁ…

君たちにはこれから沢山働いてもらわないとね〜、この『地獄』で」

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