9話 お互いの存在
「さぁ、見せなさい!!」
スマホを持っている手を掴まれ、そのまま画面を覗こうとされる。
「これだけは秘密なんです」
最後の抵抗として必死に訴える。
すると、鳥居さんはニヤニヤと表情をほころばせる。
「いや、軽いジョーダンだから(笑)」
「え……」
僕は毒毛が抜かれたように真っさらになる。
すぐには今までの行動が全て嘘だったとは信じられない。
「あまりにも必死な姿がかわいく……、じゃなくて、面白かったからさっ」
「だからって、僕で遊ばないでください」
「ごめんて! 人のスマホなんて勝手に覗かないからっ。嫌な気持ちはメッチャ分かるしさ」
今日で分かったことがある。
それは、僕が鳥居さんの”おもちゃ”だということだ。
虐めの対象としてではないが、変に目を付けられてしまったのかもしれない。
その後は鳥居さんのイジりを極力回避しながらプレゼンについての方針を固めていった。
そして、明日から3日間はクラスで実験的に15分間の昼寝タイムを設けることにした。
議論が終わり、僕は帰宅のためにバスに乗っていた。
徒歩でも通えなくない距離だが、疲労が溜まっていたので楽に帰りたかった。
慣れない人と話すと体力を削られるものだな。
『アオト君は生徒会順調??』
ララルからメッセージが届いた。
バスの中で暇を持て余していたので、こういうタイミングで『シーマ』で楽しめるのはありがたい。
『まぁ、順調かな』
今日はプレゼンのためにするべき事が明確になったので、良い方向へ進んでいる手ごたえがあった。
今の調子で行けば、それなりのプレゼンを披露することは可能だろう。
『そうなんだ! あたしもいい感じ!! プレゼンをレクチャーしてくれたアオト君のおかげ(#^^#)』
感謝してくれているが、僕もララルにお礼を言いたいくらいだ。
ララルが相談を受けたことで『シーマ』でのアオトになって考えがまとまったからだ。
『てかさ、同じ生徒会のクラスメイトの名前が”アオト”って言うんだよ! アオト君と同じだね~』
『珍しい名前じゃ無いしねw』
『確かに(笑) しかもさぁ、その子が弟みたいな存在でめっちゃ可愛いんだよね(#^.^#)』
ララルさんにそこまで言って貰える”アオト”は羨ましいな。
同じ名前なのに僕とは大違いだ。
『だから、ちょっと困らせたくなっちゃう時があるんだよね(笑)』
『程々にねw』
話を聞くほど、その”アオト”が幸せな環境に居ることが伝わってくる。
ララルさんみたいな人が居るだけで毎日が充実しているんだろうな。
『アオト君の生徒会メンバーはどう??』
ララルに聞かれて思い付いたのは鳥居さんのことだった。
鳥居さんは意外と面倒見の良い人というのは分かった。
少し意地悪してくるけど……。
それを含めて鳥居さんの魅力なんだろうなと思う。
改めて鳥居さんが僕にとってどのような存在かと考える。
その答えに辿り着くのに時間は掛からなかった。
『姉のような存在かなw 少し揶揄ってくるのは、玉に瑕だけど……』
『あたしと逆じゃん(笑)』
そんな生徒会のメンバーについての話題でチャットは盛り上がった。
すでに僕は家に着き、ララルとのやり取りも頃合いかなと考えていたらフラワーから通知がきた。
『下着は何色が好みかな?』
顔こそは映っていないが、黒色の下着から少しはみ出しそうに胸が強調された写真が送られてきていた。
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