2話 些細なキッカケ


中学2年生の夏休み、僕は初めて告白をされた。

相手はとても可愛かった。

しかも、ヒエラルキーの高い1軍グループのリーダーだ。

クラスメイトたちはお似合いだなと勝手にお祝いムードになっていた。

当時の僕は……。いや、俺は男子のリーダー的存在だったのでクラスメイトたちの気持ちも分からなくはない。


だが、俺は告白を断った。


そこから俺の中学時代は思い出したくもないものになる。

本で読んだ通り、愛情は憎しみへと変貌した。


告白を断った次の日からは地獄だった。


「こっち見んな」

「あんたが告白を断るとか、何様だよっ」


最初は暴言を言われるだけだった。

数日経てば意外と慣れていった。

それに、男友達が一緒に居てくれたのでメンタルも保てた。


しかし、俺が一向に気持ちが折れないのを見た女子たちの行動はエスカレートしていった。


「青斗さ、あんたの悪口言ってたよ?」

「それ、私も聞いた!」

「あたしなんか直接グチたれたし(笑)」


そう、いつも一緒に居る男子友達に対し、俺が陰口を言っていると嘘を言いふらし始めた。

友達も最初は俺がそんなことを言うはずが無いと分かっていたので庇ってくれていた。


しかし、それも長くは続かなかった。

なぜなら、女子達は僕の友達のデタラメな嘘を広め始めたからだ。

俺を庇ったら標的にされると知った友達は一人ずつ離れていった。




告白を断ってから1か月後、僕は独りぼっちになった。




だが、幼馴染の花だけは最後まで僕の味方だった。

花は家が隣ということもあり、小さいころから兄弟のように仲が良かった。

なので、俺が周囲から腫物のように扱われても花だけは守ってくれた。



(だからこそ、花だけは守ると決めた……)


幼馴染の贔屓目を抜いても、花は可愛かった。

女子は成長が早いので中学3年生になる頃には、女性らしい可愛さが目立っていた。

ショートカットの黒髪の女性が好みになったのは、花が原因かもしれないな。


だから、花にまで危害が及ぶのは我慢ならなかった。




「ねぇ、筒井さん。青斗にくっついて回るの辞めてくれない?」


「どうしてかな? ワタシの自由だと思うけど??」


「男子から少し人気があるからって、調子に乗らないで欲しいんだけど」


「そっか。あなたはアオに振られたからワタシに嫉妬しているんだ」


「は? 勘違いしないでくれる? てか、男好きとかキモっ」


「別に男好きじゃないけど? あなたこそアオに嫌がらせするの辞めてくれないかな」



放課後、教室で花と俺が振った女子が言い合いをしているのを廊下で盗み聞きしてしまった。

このままでは花に被害が及ぶことは想像できたので、俺は決心した。

そして、教室の中に入って花に告げる。



「花、二度と俺に話掛けないでくれ」


胸が張り裂けそうな思いだったが、何とか全て伝えきった。

俺を振った女子の前で、花と決別したことを見せることが出来た。


これで俺と関わってことで向いていた花へのヘイトは無くなるだろう。




「どうして? 何を言ってるの……かな」


「言葉通りの意味だ。いつも隣に居られて迷惑だったんだ。いい加減気づけよ」

嘘だ。

本当は花が居てくれて嬉しかった。

これからもずっと隣に居るのが当たり前だと思っていた。

でも、もうダメなんだ……。




「まじウケる(笑) あー、スッキリした!!」

この場面を見ていた女子は大笑いしながら喜んでいた。

花が目を付けられる理由を取り除いたので、満足したのだろう。





次の日から、女子グループは花への関心を失った。



そして、僕は花との接触が無くなった。




それからは不登校になり家族以外とは誰とも話さなくなった。

ある程度の高校には進学しないと片親で育ててくれている母親が心配するので、不登校ながらも勉強だけはしていた。

高校では中学のようにならないように、初めから親しい友達を作らないようにした。


だからこそ、親しい他人を作れる『シーマ』にハマっていった。


そして、個性的な人達と出会うことになる。












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