第5話 ターン
外でお散歩をするという中々にラッキーな講義の日。
私はお気に入りのワンピースにサンダルを着て散歩をしていた。
当日に発表されたため、本来ならばパンツスタイルで望みたかったが、教授のサプライズならば仕方ない。
30人弱のクラスで構内を散歩しながら、自然と子どもの交わり方を学ぶ目的だと聞いたが、それを真面目に学ぶ学生がどこにいるのだろうか。
私と彼も例に漏れず、やはりふざけながら散歩をするのだった。
「あ、てんとう虫ちゃんだよ。」
私は道端に咲いているたんぽぽの葉で休んでいるてんとう虫を手のひらに乗せた。
「こうた君、てんとう虫だよ。」
彼に見せると彼は嫌そうな表情を隠すことなく私に見せてくれた。
「なぎささん、冗談はやめてください。」
逃げそうな彼についつい意地悪をしたくなった私はてんとう虫を彼に渡そうとした。
「やめ!!」
笑いながらも本気で嫌がっていると分かっていた為、私はてんとう虫を近くの花びらに戻した。
「なんで虫触れるの?」
同じ故郷で育ったはずなのに、なぜ触れないのか逆に聞きたいくらいだった。
散歩を続けると、目の前に綺麗なたんぽぽやすみれの花、ハルジオンが咲いていた。
私は彼から少しばかり離れて花束として摘んでいた。
できた花束を背中の方に隠しながら、彼に手渡した。
「はい、ファーストインプレッションローズ。」
彼はなんのことを言ってるのか把握したらしく、笑っていた。
「喜んで…。」
彼は花束を受けとった。
彼も私もごっこ遊びでやっていることは暗黙の了解だった。
それでもやはり、私が花束を見せた時と受け取る時の表情はかわいらしくて微笑ましかった。
その夜に来た連絡の内容を見て、私は目玉焼きに殻が入ってしまった。
「楽しそうにくるくる回るなぎささん、かわいかったです。ワンピースもふわりと綺麗でした。」
意識してなかった自分の行動に驚きながら、褒め上手な彼の表現を盗むことにした。
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