第4話 ちくわ

「ちょっ…。」


彼は講義中に笑いながらこちらを向いた。


講義のトピックは、食。


厳しめな先生がパワーポイントを使いながら説明している中、私はレジュメに冗談を書いて彼に見せた。


思っていたより笑ってくれて嬉しいと感じる反面、先生からの視線が痛く刺さった。


「ごめんって。そこまでハマると思ってなかった。」


彼は得意なペン回しをしながら、はいはいと言わんばかりの顔で頷いた。


「レジュメのメモ、見せてください。」


笑わせた代償だ、と等価交換を求められた私はレジュメを彼の方へと滑らせた。


「……。」


彼は少し動作を止めて、考え出した。


「もしかして、字が汚かった?ごめん。」


私は小声で伝えた。


「ううん、なぎささんってやっぱり面白いなあって。」


私の心はちくわのように穴がぽっかりとあいている。


彼なら…なんて1ミリほど感じたものの、その気持ちは捨て去ろうと勝手に蓋をした。


「なぎささん、どうしたの?」


やっぱり蓋は簡単に外れるような気がした。

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