第3話 リロード
「え、なぎささんできた?」
2つのことを同時進行している彼に聞かれた私は、どちらのことを聞いているのか分からずに首を傾げた。
「これですよ〜。」
スマホの画面を見せて指差す先には、講義で使われる資料が映されていた。
「これは読んで感想書けば良いと思う。」
「ええ…苦手なんだよなあ…。」
可愛く否定する彼は私に答えを教えてほしいと言わんばかりの視線を向けてきた。
私はこの笑顔に弱い。
はいはい、と二つ返事で答えを教えようとすると彼のスマホの画面に映る資料にバグが発生していた。
構内のWi-Fi環境は良いとも言えないし悪いとも言えず普通の速さ。
私はリロードする様に頼み、彼に少しでも手伝えと暗喩した。
「少しは自分の意見を書きなよ。」
ある程度の構成は教えたつもりで、彼にバトンを渡した。
「ありがとうございます…!」
また可愛い笑顔でこちらに視線を向けた。
「そういえば講義被ってるんだっけ?」
私は複雑な感情を掻き消すために、話を120度ほどずらした。
「なぎささんと全部2人。嬉しい。」
掻き消したはずの気持ちがまたリロードされた。
私の心は複雑なように見えて意外に単純なようだった。
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