第37話

 これはもしかすると、もしかする感じやの。

「で、どんな気分ですか?」

「気分がアゲアゲになったやの! 魔力も全回復したやの」

「それは良かったです」

「で、で、うちの人は何処に行ったんだい?」

「夏樹なら、けいのエサを作るのに疲れて向こうのソファで寝てますよ」

 それを聞いておはるさんはすぐにぱたぱた飛んで行った。メロメロやの。あんなにピクシーが気に入るなんて、珍しいやの。

 ダメンズエクソシストが疲れて寝てるってことは、これは、そういうアレなんかも。自分のが駄目やからって他人から搾り取るなんて……、この神父様はほんまに半分悪魔やったりしやん? ほんまにダークエルフなん? ううん。お父さんが魔法使いなんやったら、ほぼダークエルフみたいなもんやの……。悪魔ではないけど、エルフ族に入ってくるやの……。人間とはちょっと違うやの。

「これって、夏樹様のせーえきやの?」

「逆に聞きますが、夏樹の、だったとしたらどうするんですか?」

「どうするかって聞かれたら、どうもしやんの。せーえきを貰えるんなら、ウチは嬉しいやの」

「精力を取れるなら、相手が誰でも良いんですか」

 そんな言い方されたら、ウチが誰にでも股を開くようなオンナのようで嫌やけど、サキュバスってのはそういう生き物なんやから、ド正論やの。でも、一応、相手は選んでるやの。自分の好みに当てはまって、精力の有り余ってそうな活きの良い男を選んでるやの。

 ……って、あれ? 他のとらえ方をしたら、神父様がヤキモチ焼いてるようにも思えてきたやの。

「神父様。夏樹様にヤキモチ焼いてるやの?」

「醤油で食べたいですね」

「その餅の話やないやの!」

 すぐに食べ物の話にすり替えられてもうたから、そうなんかも! 照れ隠しなんかも! メロメロにできたんかもしれへん。おはるさんが言うてたもん。ここに来たサキュバスは木っ端微塵になったって……。

 木っ端微塵って怖すぎるやの。ただの噂話なんかもしれへんけど、この神父様なら本当に木っ端みじんにしてそうやし、花壇に撒いてそうやもん。マンドラゴラが生えてる家庭菜園があるくらいなんやもん。あれを家庭菜園扱いしてええんかわからへんけど、花壇って言うてたから、家庭菜園って言うてええんかわからへんけど、畑やの。

「ねえ、小焼様。ウチのこと、好き?」

「嫌いではないですし、見た目は好きですよ」

「見た目だけやの?」

「いえ? 中身も好きですよ。私に従順なところが特に」

 なんか怖いんやけど。

 従順なところが特に好きってどういうことやの。ドSやの? ドメスティックでバイオレンスな感じになってへん? ツノを掴んでポイッとしてきたくらいやし、布団でウチを素巻きにしてたくらいやから、既にドメスティックでバイオレンスな感じがしてならへんやの。

 けっきょく、これが何の液体かわからへんやの。

「小焼様はどうしてウチのことがそれだけ好きやのに、ウチにせーえきくれへんやの?」

「悪魔にエサを与える聖職者が何処にいますか」

「ここにおるやの。ウチにエサあげてるやの」

「……それもそうですね」

 言い返されるんかと思ったら納得されてしもたやの。神父様はウチにごはんもくれるし牛乳もくれるから、言い方が悪いけどエサをあげてるやの。自分で気づいてなかったんかな? それとも、わかってて気づいてないふりをしてたんかな?

「だから、小焼様のせーえき、ウチにちょうだいやの」

「どっちの口に与えるのが正解なんですか? 上ですか? 下ですか?」

「口は上にしかないやの」

「……は?」

 神父様にギラッと睨まれた。ちょっと跳ねてまうくらいに怖かったやの。おかしいやの。口は上にしかないのに。おかしいやの!

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