第33話

 白濁色の謎の液体を飲みながら待ってたら、テーブルに次々に料理が並んでいく。神父様の席にだけやけど。

「ウチの分は?」

「今運ぶから待っててください。『待て』は苦手ですか?」

「焦らされるより、焦らす方が好きやの」

「サキュバスらしいですね」

 ウチの前に料理が並ぶ。本日のお昼ごはんは、鶏肉とジャガイモのクリーム煮。かぶとブロッコリーの炒め物。アボガドとトマトのサラダ。……オシャレやの。悔しいくらいにオシャレやの。

 神父様がお祈りしている間にウチは食べ始める。どれもこれも美味しくてほっぺたがとろけ落ちてしまいそうやの。

 ほくほくのジャガイモとふっくらやわらかな鶏肉。噛めば噛むほどお肉のうま味がお口の中でふわっと広がるの。

 かぶは口に入れた瞬間にとろけるくらいやのに、ブロッコリーの歯ごたえが絶妙な加減やから、満腹感があるやの。

 そんで、サラダがさっぱりしてるから、クリーム煮が軽い食べ物のように感じるやの。カロリーを心配しなくても大丈夫なくらいに考えられたメニューやの!

 おなかいっぱいやの。エネルギー充電された気がするやの。クリーム煮やから、牛乳やと思うの。ちょっぴり回復やの。

「貴女って、美味しそうに食べますね」

「美味しいやの。神父様の料理、美味しいやの」

「……デザートにプリンがありますけど」

「食べるやの!」

「わかりました」

 神父様はウチの前にプリンを置いてくれた。猫のかたちのプリンやの。可愛いやの。癒されるやの。思わずにこにこしてまうやの。

「プリンも美味しいやの」

「それは良かったです」

 神父様はほんのちょっとだけ笑ってくれた。ずっとこれくらい笑ってくれてたらええけど、それやと顔が綺麗やからモテモテになってまいそうやの。

 女性と付き合うこともできへんし、結婚もできへんのに、モテても仕方ないやの。それなら、ムスッとしたまんまのほうが? でも、ふとした瞬間にこの笑顔を見たほうが惚れてまいそう……。難しい問題やの。

 って、ウチが考えても仕方ないんやの!

「神父様。この後は何するん?」

「特に変わり映えもしない仕事ですよ。私は神に仕えるものなので」

「神父様なら、討伐のお仕事のほうが似合いそうやの。教会で祭司やなくて、エクソシストのお仕事したらどうやの?」

「私は悪魔憑きと精神病を見分けられませんよ。殴ったら治るかなって思いますし」

 殴っても治らへんと思うの。悪化しそうやの。

 高い魔力を持ってるんやから、傭兵とかのほうが向いてそうやけど……、ウチは神父様の何の心配をしてるんやの。

「エクソシストの仕事は夏樹のようなタイプが向いてるんですよ。私は教会で勉強しているほうがお似合いです」

 ……ウチには、前線で殴り合いしてるほうが似合うように見えるんやけど、言わんとこ。ウチもぶっ飛ばされそうやもん。

 神父様はお皿の後片付けをするからって、ウチをぽいっと外に放り出した。花に水やりして欲しいって言われたやの。

 花壇にはいっぱいお花が咲いてた。どれが何て名前の花かわからへんけど。綺麗やの。とりあえず、言われたとおりに、水やりするやの。こういう時は、水の魔法やの!

 ちっちゃな雨雲を出して花壇の上を飛ばす。これぐらい楽勝やの。

「修道女が雨雲を出したぞ!」

「えっ!」

 見られたやの。でも、一般人が魔法を使えてもおかしくないはずやの。本屋に魔導書も売ってるくらいやの。だから、読んだら誰だってできるはずやの。……才能があるんやったら。

「悪魔だ!」

 な、何でバレたんやの!? ちびっこには幻術が効いてへんやの!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る