第32話

 行きと同じようにバイクに乗って帰る。

 ずぅっとドキドキしたまんまやの。ドキドキで爆発してまいそうやの。ううん。物理的にも爆破されへんか心配になってきたやの。

 神父様の後ろをぽてぽて歩いてついていく。お昼のお祈りとミサの時間やの。定期的にお祈りするの大変やの。熱心な人が教会に集まって来てる。見慣れた顔やの。

 おじいさんおばあさんが仲睦まじくお祈りに参加して、神父様の難しいお話を聞いて、一緒に聖書のお勉強会して……って、してるやの。

 ウチも一応参加してるふりしとかな。この人らには修道女に見えるんやから。

 うーん。いまいち意味がわからへんやの。文字が読まれへんわけでもないし、書かれへんわけでもないけど、意味がわからへんやの。

 神父様に質問するんもええけど、修道女って、教える側のはずやから、聞くタイミングがわからへん。あと、ウチが聖書の勉強してる意味もわからへん。神様なんてどうでもええの!

「それにしても、けいちゃんは可愛い子だねぇ」

 急におばあさんが話だしたから驚いてしもた。可愛く見えてるだけやの。おばあさんには幻術がかかってるから、ウチが理想の女の子の姿に見えてるはずやの。

 ウチのありのままの姿を見てくれてるんは、神父様だけやの。神父様だけが、幻術にかかってへん。魅了チャームも効果無しやの。でも、ウチの見た目が好きって言うてた。……もしかして、魔法なんて使わなくても、神父様は既にウチにメロメロになってるんやの?

「ウチ、可愛いなんて……」

「いやいや可愛いよぉ。こんな孫がいたら、あたしも嬉しいんだけどねぇ」

「神父様と並んでたらお似合いだぁ」

「……神父様は、神父様やから、ウチとお付き合いできへんやの」

「そうだねえ。神父様は真面目だからねぇ」

「真面目をひとのかたちにしたような人だものねえ」

 こうなったら、おばあさん達をウチの味方にしたらええんかも。でも、おばあさんから精力を抜くわけにはいかへんし、もう干からびてるようなもんやから、出涸らしっぽいやの。

 だからっておじいさんも同じやの。こちらもこちらで噛み終わったガムのようなものやの。

 ウチはやっぱり、神父様から精力を奪いたいやの。せーえきを搾り取ってやりたいやの!

 信徒の人なら、神父様のこと色々知ってるかもしれへん。今がチャンスやの!

「あの、神父様の両親って……」

「お母さんがダークエルフで、これがまたサキュバスに育てられたって噂よぉ」

 サキュバスに育てられたダークエルフ? まさか、チェンジリング……? ややこしいやの。もう、ややこしくなってきてしもたやの。

 神父様に魅了効果が無いんは、サキュバスの血を引いてるってことにしたら、わかるやの。もうよくわからへん。

「そこ、いつまで話しているつもりですか?」

「ごめんなさい」

「ごめんなさいやの」

 神父様に叱られたので、おばあさんと一緒に落ち込む。

 聖書の勉強会もしょんぼりしたまんま終わり、やっとお昼ごはんやの。

 今日のお昼ごはんは……また白濁色の液体がテーブルに置かれてる。

「神父様。ウチに牛乳あげといたら良いと思ってへん?」

「半分思っています」

「むぅ。ウチもごはん食べたいやの」

「今作っているので、それでも飲んで待っててください」

 仕方ないから待っといてあげるやの。

 コップを両手で持って、白濁色の液体を口に含む。舌の上でじっくりねっとり味わってから、飲み下す。美味しいやの。今朝よりも濃厚やの。ヤギではなさそうやの。でも、牛乳でもなさそうやの。

「神父様、これ、何やの?」

 神父様に声をかけたら、舌なめずりされた。そんでから体の側面をつーって、指でなぞって、ふとももの辺りで止まって、またコンロに向きなおした。

 いったいどういう意味かさっぱりわからへんけど、なんか、えっちやの! 下手したら、ウチよりもえっちやの!

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