第30話

「神父様って、ウチの見た目が好きやの?」

「好きですよ」

「どのへんが?」

「それを聞いてどうするんですか」

「気になるから教えてほしいやの」

 教えてもらえたら、もっとメロメロにできるかもしれへんし。

 ……もしかして、もう既にけっこうメロメロやったりするんかな? でも、メロメロになった男はだいたいせーえき出してるやの。神父様は微動だにしてないやの。まさか、不能? それならウチが魔法で……って思ったけど、そうでもないような気がする。精神力がすごいやと思うの。理性があるから、それを崩せたら、ウチを獣のように求めるようになるはず!

 メロメロなら理性がぶっ飛ぶはずやのに……。やっぱりまだメロメロになってへん?

「けいを初めて見た時、まず、その尻の丸みと太腿のもちもちとしたフォルムに惹かれました」

「急に性癖を暴露せんといてやの」

「貴女が聞いてきたんでしょうが」

「それはそうやけど……。神父様ってお尻が好きやの?」

「胸か尻かで聞かれたら尻のほうが好きですね。ニーソックスに乗っている太腿の肉が好きです」

「……信徒さんの前で同じこと言える?」

「神の言葉ではないので言えませんね」

 そういう意味の質問やなかったんやけど……。

 更に詳しく聞いてみたら、神父様はお腹がぽこっとなってて、胸がぽいんっとなってる子が好きってわかった。幻術にかかってないのに、ウチの姿はそう見えるらしい。

 ウチ、そんな体型やったんやの……。確かに他のサキュバスに比べたらセクシーさとかが足りないとか言われたことあるけど……。

 ウチの縄張りを奪ったサキュバスは今頃色々吸い取って生きてるんやと思う。ウチが牛乳ばかり飲んでる間に、いっぱいせーえき飲んでるやの。

 契約してるんやから、ウチは神父様から魔力も補給してもらえるはずなんやけど……、よく考えたら、神父様の一方的な労働契約やから、ウチから持ち掛けた契約やないやの。だから、魔力も精力もなんもエネルギー補給できてないんやの! 今更気付いたウチのおばか! ばかばか!

「神父様、ウチと契約してやの!」

「既にしていますよ。ダブルワークでもするんですか?」

「違うやの! ウチの条件で契約してやの!」

「悪魔と契約するわけないでしょうが」

 そう言うとは思ってたやの。

 悪魔とは、サキュバスとは、契約しない。わかりきってることやの。仕事熱心な神父様が魔物と契約することはないやの。

「それなら、ウチと個人的に契約してやの」

「どういう意味ですか?」

「悪魔とかサキュバスとか抜きして、ウチを、小焼様のお嫁さんにしてやの」

「…………」

 ちょっとだけ驚いたような表情をしてくれた。

 これは良い感じにクリティカルヒットを出せたんかもしれへんやの。

「私は祭司ですよ」

「あ」

 ウチのばか! 祭司は結婚できへんやの! それはわかってるはずやったのに! ウチのアホ! スカポンタン!

 神父様はあきれたような笑みを浮かべて、ウチの頭を撫でてくれた。これはどういう意味のなでなでやの?

「気持ちだけは受け取っておきますね」

 なんかウチがフラれたようになってるやの!?

 ウチ、神父様のことがめちゃくちゃ好きで告白した結果フラれたような惨めな子やと思われてへん!? 恥ずかしいやの! なんか、すっごい恥ずかしくなってきたやの!

 顔が熱いやの。顔から火が出てそうやの。今ならウチの顔でおもちも焼けそうやの。いっそ焼いたら褒めてもらえそうやの。

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