第20話

 夕のミサも終わっておゆはんやの。

 ウチはキッチンに立つことを禁止されたから、ダイニングで待機してる。これ以上お皿を割られたり食材を無駄にされたりしたくないって言うてた。朝の卵は神父様が全部食べたから無駄になってないのに、ひどいとばっちりやの。

 神父様はウチの前にお皿を並べていく。きちんとしたおゆはんやの。神父様と同じやの。昨日はすごく雑な扱いをされてたような気がするけど、今日は全然違うの。

「クリームシチューにしてみました」

「食べてええの?」

「食べないでどうするつもりですか?」

「じゃあ、いただきますやの!」

 神父様は食事前のお祈りをしてるから、ウチは先に食べ始める。

 今日のおゆはんは、クリームシチュー、鮭のバター焼き、アボガドと豆腐のサラダ。

 どれもほっぺたが落ちそうなくらいに美味しかった。クリームシチューは、お野菜が一口大に切ってあって、どれもホクホクしてて、甘くって美味しかったやの。鮭のバター焼きはバターの甘味としょっぱさが上手くマッチングしてて、鮭の脂の美味しさを優しく包んでくれてて、蕩けるような口当たりやった。アボガドと豆腐のサラダでクリームシチューと鮭のバター焼きの脂っぽさをマイルドにしてて、さっぱりして、お口直しにもぴったりやったの。あと、パンが美味しかったやの。

 お腹をなでなでしながら、けぷぅってしてたら、神父様がほんの少しだけ笑ってた。食事の時だけ笑ってる姿を見る気がするの。

「美味しかったやの」

「口に合ったようで良かったです。サキュバスでも味覚は同じだということですね。……いや、私はダークエルフの血が混ざっているので純血の人間とはまた違うかもしれませんが」

「神父様のお母様ってどんなヒトやったやの?」

「聡明で美しいヒトですよ」

「お肌が褐色で、耳が尖ってて、おっぱいがぼいんぼいんしてるやの?」

「貴女のダークエルフのイメージはどうなっているんですか。確かにその特徴は合っていますが、全てのダークエルフがそうではないでしょうに」

「ううん。種族的にはそういうものやの」

「では、サキュバスは皆こういう体なんですか?」

「ぴぎゃっ!?」

「いちいち驚かないでくださいよ」

 急に胸をつつかれてビックリしたやの。不意打ちでずるい。

 この神父様はどうして突飛な行動ばかりとるんやろ……。ドキドキしてまうやの。

「違うの。ウチはどちらかと言うと、もちもちしてるやの。むちむちやの」

「それは見たらわかりますよ。オーバーニーソックスに乗る太腿の肉がナイスだと思います」

「……神父様。心の声が駄々洩れになってるやの」

「心の声ではありませんよ。私は貴女の太腿の肉が好きです」

 太腿の肉限定!

 ……メロメロになってきてると思いたいんやけど、これは性癖の問題なんかもしれへん。神父様が脚フェチってことなんかな? それやったら、ウチの太腿ですりすりしてあげたら喜ぶかな?

「ウチの太腿、触ってみる?」

「神聖な太腿を触れませんよ」

 ウチ、サキュバスやから神聖ではないと思うんやけど。

 ほんまにどの角度からアプローチしたら良いかわからへん。太腿なら触ってくるんかと思ったら、触ってこぉへんのに、胸を突然つつくことはあるから……。

「おっぱい触るやの?」

「触るというより揉むほうが良いですね」

「どうぞやの」

「揉みませんよ。自分のを揉んで我慢します」

 ……どういうことか更にわからんくなってきたやの。

 胸の筋肉がしっかりしてるから、おっぱいがあるってことなんかな……。

 ますます謎が深まってしまったやの。

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