先輩は彼女と語りたい?
「ミンツ先輩のスカウトに成功するなんてね。確かに心強いけど、めんどくさい人が来ちゃったわ」
ウィルがどうしてもミンツ先輩が私に会いたいと言っていると言い、会うかどうするか?と尋ねられたから、機会を作った。
静かにセオドアが佇んでいる。ミンツ先輩は別にボクは怪しくないのに護衛つけるなんて、ウィルは嫉妬深すぎるよっと肩をすくめている。確かに私とミンツ先輩がどうにかなるとかお互いに気に入るということは絶対にない。まったくない。言い切れる。
理由はお互いになんとなくわかるのだ。『こいつとは腹のさぐりあいしかできない相手だ』と。
「お久しぶりです。エイルシアの王妃様であり天才リアン……様!王妃という立場になっちゃうなんて、少しつまらないなぁと思うけど、仕方ないですね!麗しき王妃リアン様。相変わらずお美しい!」
褒め言葉がわざとらしい。鳥肌がたつ。
「無理矢理媚びへつらう必要はないわ。思ってもない態度をとられるのは気分が良くないもの」
「アッハッハ!さっすがー!よくわかってるねっ!」
相変わらず、変なテンションで、明るい。伸びすぎた前髪を切ってやりたくなる。
「ラッセルが過労死する前でよかったよねっ。久しぶりに会って顔色をみたら最悪だったよ!」
「ラッセルはああみえて真面目だから、根を詰めすぎるわ。……で、先輩は何故城に来てくれたの?なにもないのに来ないわよね?」
ミンツ先輩が細い目をスゥッと開けた。アメジスト色の目がチカッと光る。
「リアンなら、そう言うし、気づくだろうって思ったよ。もー。そういうところが、いちいちさすがなんだよねっ!」
しばらく間をおいてから、ミンツ先輩は私を見た。そして真顔になる。
「先生が消えた」
……そのことね。
「ミンツ先輩もそれを気にしてるのね」
「も……ということは君もそう思ってるんだよねっ?そりゃそうだよっ!あんな人がもし敵側になったらどうなると思うんだい?」
脅威。その言葉しか思い浮かばない。
「厄介でしかないわね。まあ、いつものとおり山に引きこもってるのか、一人気ままなぶらり旅にでも行っちゃったんじゃないのかなとか思うんだけどね」
「それなら良いんだけどねっ!ボク達がもし……先生と対峙したら勝てるかな?」
「五分五分というところでしょうね」
無言になるミンツ先輩。そして、はぁ……とため息を吐いた。
「そうならないことを願うねっ。文官は平和な時代こそ良い仕事ができるってものさっ!」
「あら?ミンツ先輩は軍師になりたいんじゃないの?軍事、兵法が好きだった記憶があるけど」
「………リアン、そのことだけど、ボクと一戦交えてみないかい?盤上でね」
私は首を傾げる。私とゲームで遊びたいわけじゃないわよね?どうしたいのかしら?
「いいわよ?」
でも特に断る理由もないので、受けて立つ。ミンツ先輩はにっこり笑った。
ほどなくして机にチェスが並べられた。
「リアン、君ができないことをボクがしてあげるよっ!」
そうミンツ先輩が、宣言したと同時に戦いが始まった。
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