輝ける場所は自らが作るもの
リアンにラッセルと話していたことを報告した。
「なるほど。そこに落ち着いたのね」
食事の席で、二人きりで話せる場を作る。この会話は他の者に聞かれたくないし、ラッセルとて、他言してほしいものではないだろう。クロードとエリックにも口止めしておいた。ドアの前にアナベルとセオドアだけが待機している。
フワフワの焼き立てパンをちぎってモクモクと食べるリアン。
「え!?それだけなのか!?」
「うん」
「うん!?あのリアンが興味ないのか!?」
「さすがにラッセルに後宮に引っ込んでろざまーみろ的なことを言われた時は多少、心のダメージはあったわ。でも私の性格的に引っ込んでろと言われても……」
無理だろうな。オレは話を最後まで聞かずともわかったので頷いた。
「ラッセルがわざとわかってて、私に対して暴言を吐いて王宮政務官を辞めるつもりなんだって気付いたの。私が傷つけばウィルが黙っていないと思っていたんでしょうね」
ラッセルはオレとリアンの性格を知っている。確かにラッセルがリアンに傷つくような言葉を浴びせるならば、城から叩き出したかもしれないな。でもリアンもオレもラッセルの能力は認めている。能力のある人材は貴重だし、本来の性格はそんなに悪くはない。むしろいいやつだ。
「それって相手の思うツボだし?そんなのひっかかってやることは面白くないし?やり返すなら、私がウィルを愛するだけで良いんだもの。そっちのほうが良くない?」
オレは肉を切る手を止め、パッと顔を上げてリアンを見た。彼女はフフッと笑った。
「うん。断然、そっちのほうがいいな」
「ラッセルはラッセルで王宮政務官として優秀だし、そんなにウィルが好きなら、そこで自分の場所を作って輝けばいいのよ。私に見せつけてみなさいよって思うの。私だってウィルになにかできることあるなら、負けないわ!王宮政務官のほうが仕事が明確だから有利かもしれないけど……」
「リアン……」
「私だってウィルのことを好きな気持ちは負けないわ!」
かっ、可愛すぎるだろおおお!いつもオレのことを好きとかなかなか言ってくれないのに、負けず嫌いを発揮して、つい口走ってる。本人が気づいてないのが良いよ!本心だってわかる!ラッセルが、その機会を作ってくれたことに感謝しよう。
リアンにくっつきたい気持ちになったが、彼女が美味しそうに黄金色のかぼちゃのスープを食べているから、我慢した。
「勝ち負けで言うならば、オレがリアンのことを好きな気持ちのほうが何より誰よりも勝っている」
クスッとリアンに笑われる。
「リアンはウィルバートのオレを受け入れてくれたのはなぜだ?ラッセルから180度ウィルとウィルバートは違うと言われた」
ピタッとカラフルなサラダを食べていた手が止まる。そうねぇと考えている。
「ウィルはいなくなったわけじゃないわ。それに、私はどちらのあなたも同じってわかってるの。だってウィルの時のあなたもウィルバート時のあなたも同じように、私のこと大事にしてくれるし……好きでしょ?」
首を傾げて、そう問うリアン!!!!可愛すぎるーーーー!大好きだよ!そう叫びたい!!嬉しすぎる!!
「も、もちろ………」
もちろんだよ!と席を立とうとしたとき、空気が読めないセオドアが入ってきた。なぜこのタイミング!?
「陛下、そろそろ時間です」
「セオドア、わざとじゃないよな?」
「なにがでしょうか?他国の王が訪問してきたのに出迎えないわけには行かないかと思いまして……ましてや待つのが嫌いなシザリア王ですよ」
わかってる!わかってるが………リアンがいってらっしゃーいと手を振る。
気ままなウィルに戻りたいよと思った瞬間だった。
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