会話をするのは難しい
「病院と学校を?」
ウィルが後宮顔を出し、ゴロゴロとソファーでしている私の横にポスッと座る。
「そうなのよ。予算と相談しつつだけど、病院学校を整備して、ある程度無償で提供したいわね」
「無償!?というと、国がお金を出すってことか?」
「そうね。ウィルなら、説明はそこまで不要かと思うけど……」
「そりゃ。長い目で考えたら、学校で人材育てで、病院に誰もがかかることができるようになれば最良だよ。だけど予算はどんなものかなぁ」
ファ〜と私は1つ欠伸をして、クッションの上に顎をのせた。
「そこの紙に財源についてまとめてあるわ。最初は無償じゃなくても、少しずつできるようになっていくと思うの」
「おー!すごい!……すごいこと言ってるのに、怠惰な感じだから、いまいちすごさが伝わらないけどな」
「あら?」
私はきちんと座り直す。ウィルが面白そうに書類を読んでいる。
「良いんじゃないかな?よし、会議で議題にしてみるよ」
「ほんと!?良かったわ。国の基盤をしっかりしておけば、どんなことがあっても揺らがない国になるもの」
「国は大木みたいなものだよな」
そうよねとニコニコして私とウィルが話していると、アナベルの何か尋ねたそうな視線に気付いた。
「なに?アナベル??」
「えっ?いいえ……失礼しました!」
パッと目を逸らすアナベル。なにかしら?
「どうしたの?なにか気になることあった?」
ウィルも首を傾げる。仕事に真面目なメイドのアナベルがいつもと違う雰囲気だったからだ。
「何か聞きたいなら聞いても良いんだが……?」
「いえ!そんな!いちメイドがお二人の貴重な時間を頂くことなんてできません!」
固辞するアナベルに私はフフッと笑う。
「余計に気になってしまうわ。教えてよ。お願い」
私にお願いされると弱いアナベルは困った顔をし、躊躇った後、口を開く。
「あの……好きな人とする会話って、どんなよのがよろしいのでしょうか?あっ!陛下とリアン様の会話に聞き耳をたてていたわけではありませんよ!?でもお二人がとても楽しげでしたので……」
「好きな人との会話……ねぇ?私、そんな会話を考えたことないわねぇ………」
それに今の内容の会話は決して恋人らしい会話ではなかった気がするわと上を向いて考える。ウィルはフフフッと楽しそうに笑った。
「それはもしかしてセオドアとか?」
アナベルの顔が赤くなった。やっぱりなぁとウィルは頷いた。
「セオドアとの会話はあいつの性格的に難しいと思うが、そんなに深く考えなくていいんじゃないか?」
え?と私とアナベルはウィルを見た。
「好きな人となら、会話しなくても一緒にいるだけで良いものさ」
まあ!とアナベルが頬に手をやる。私も確かにそうねと笑った。アナベルはありがとうございますと可愛らしく頬を染めて、お茶の片付けをするため部屋から出ていった。
静かになる部屋。二人でソファーに並んでいる。そうね……これだけでも、なんだか幸せね。
二人ならボンヤリ何もしない怠惰な時間も幸せなのね。
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