ボタニカルガーデン
リアンの行きたいところは、期間限定の王都にある植物園だった。
「へぇ、期間限定でこんな催しを王都でしていたのか。ジャングルに来たみたいだ」
巨大な温室の中には珍しい南国の色鮮やかな花や希少な薬草などがあった。
テーブルと椅子が置いてあり、お茶のセットまで用意し、アナベルが待っていた。
「たまにはこんな変わったお茶会も良いでしょう?昨日までの開催だったんだけど、撤収する前に父に頼んで、1日だけ貸し切らせてもらったの」
「なるほど、クラーク家の主催のものなのか。手広く商売してるなぁ」
「薬草の仕入れから広がったものらしいけどね。……母が『お花に囲まれてみたいわ』って言ったのが一番の原動力ね」
その一言で、この巨大な温室と世界各地の珍しい植物を集めてくる男がすごい。リアンの父、やはり普通の商人ではないと思う。
「いや、すごいな。面白いよ」
温室の中は暑いので上着を脱ぐ。冷たいお茶もございますよとアナベルが注いでくれる。
ふと、お茶のカップを持つリアンの手の指にはまっている指輪に目が留まる。
「その指輪、見たこと無いやつだけど?」
「あ、コレ?ソフィーが海に捨てたと言っていたけれど、私にくれたのよ」
エイルシア王国の国宝の指輪を海に捨てるなよと思ったが、リアンに渡していたのか。
「ソフィーが言うには、魔力の増幅の指輪らしいわよ」
「なんでリアンに?」
「自分にはもう必要ないと言ってたわ。嫁入りする時に、あなたのお父様が気性の荒い海賊の国へ行くのだから、身に危険を感じたら魔法でもなんでも使えと言ったらしいわよ」
「父が……そんなことを……」
やはり父は冷たく無関心なわけではなかったのかもしれない。
「シザリア王がソフィーと王子を守ると約束するか、それともソフィーが罰せられて終わるか賭けていたって……」
「なるほど。なんか、リアンと気が合ったみたいだな」
「そうね。話していて楽しかったわ。魔法の勉強をかなりしてる感じね!ウィルバートと少し似てたわ」
似てたかなぁとオレが苦笑するとリアンがフフッと笑う。
「でもこれはエイルシア王国の国宝だし、返しておくわ………っ!?はずれない!?なんで!?太ったわけじゃないのに!?」
突然慌てだすリアン。指輪が外れないらしい。オレは落ち着いてお茶を一口飲んだ。
「それ聞いたことあるが、指輪は主人を選ぶ。真の主人に取り憑くってな……」
「こ、怖すぎるー!ウィル、ちょっと!とってよ!」
「いいじゃないか?身を守ってくれると思うぞ」
「呪われてるみたいでイヤーっ!」
動揺をする彼女がかわいすぎるから、本当は外す方法があるけど教えないことにした。ふと、ある薬草に気付いた。緑の葉に白い筋の入ったものだ。
「そう言えば、これは月宵草の薬草だったっけ?」
「え?あ、うん。そうね……薬の原材料になるやつね」
涙目で指輪を取ろうとしていたリアンは薬草を見て、冷静になる。
「懐かしくないか?二人で採りに行ったよな」
そういえば……とリアンも思い出したようだった。師匠からめちゃくちゃ怒られた事件だ。
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