見つかる王子

「あの……お嬢様、王子を見つけてしまったかもしれません」


 意外なところからの話に私はえ!?と思わず立ち上がる。アナベルがみつけたの!?


「確認はしておりません」


「本当に?どこで!?」


「下働きの少年として城で働いております」


「なるほどね……」


 ウィルの姉はなかなかの策士。ウィルと同じ血が流れてるだけあるわ。木は森に隠せというわけね。思っていた以上に聡明な彼女かもしれない。


「そこにいるなんて、さすがに気づかなかったわ」


 よく考えたら、確かに身近におけて、安全ではある。他の姉や祖母などに頼るとなるとバレやすい。


「新しく入った少年と仲良くなってしまいまして、会話をしていて気になることを相談されたので、きっとそうであろうと思います……それに下働きの少年にしては労働に慣れてませんし、品が良すぎるのです」


「どんなこと話していたの?」


 アナベルが黙っていて欲しいと言われたのですがと躊躇う。


「父と母は仲が良い。良すぎるほどだと。だけど僕を巡って喧嘩したんだ。強く逞しくしたい父と僕を守りたい母との間にいる。僕は何者になればいいのかわからないって言うんです」


 そしてと続ける。


「僕は病弱だと思っていたら、ある日毒を盛られて居ることに気づき、母はその瞬間に連れだしたと……こんな話、普通の下働きの少年から聞いたことありませんので……もしかしてと思いました」


 これはウィルバートに聞かせられないわけだわ。そっくりな身の上に同情し、なにがあっても守るかもしれない。だから、あえてソフィーは話さなかったの?


「ソフィーはシザリア王に我が子の命を狙われていることを話さなかったのかしら?」


「どうなんでしょうか?」


 アナベルは悲しそうな顔をした。


「休憩のときにおやつを一緒に食べるようになって、仲良くなったのですが、どこか寂しそうなのです。お嬢様、どうか……」


 優しく愛情深いアナベルだからこそ見つけてあげれたのかもしれない。目に止まり、声をかけたのだろう。


「わかってるわ。とりあえず、今は下働きの少年でいることが一番だと思うの。まずは夫婦喧嘩をおさめてからよ」


 ハイと頷くアナベル。


「アナベルは変わらずに接してあげて。王子と気づいていることは絶対に出してはだめよ。バレたと思ったらいなくなると思うの……早く安心させてあげたいわね」


「そうなんです。あんな小さい子が思い悩んでるのはせつなくなりますし、すごく重たいものを背負ってると思いました」


 私の脳裏に幼い頃のウィルバートが浮かぶ。彼もまた……どれだけ耐えて来たのだろうと。

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