使者は脅しにくる

「最終通告だ」


 なんなの?この高圧的な態度はっ!使者として一国の王に対する態度ではないでしょ!?無礼すぎるわ。海の男らしい荒々しい雰囲気がある使者だ。


 シザリア王国はもともと海賊がその昔、国を奪って建国したという、歴史も荒い国だ。しょせん海賊の国と嘲笑う国もいるが、海に囲まれていて、海の戦いも慣れているし、強い。


「こちらとしては、きちんと姉を説得し続け、本人も帰ると言っている」


 ウィルバートは威圧的な使者の相手をするが、落ち着いていて、王としての揺るがない雰囲気を出している。


 王としての彼はすごいと正直思う。エイルシア王として演じきってきた彼の努力は並大抵のものではなかっただろうと推測できる。


「姿を見せない、声を聞かせない。まさかどこかへ逃がしているのではないだろうな?」


 顔に傷のある男は疑い深い目を向けた。私はここでようやく口を開いた。


「ソフィー様はそちらの国で何があったかは話してくれないものの、かなりショックを受けておいでです。元エイルシアの王女をどんな扱い方をしたのか?我々としてもシザリア王国に問いたいものです」


「なっ!?そんなひどい扱いをした覚えはないっ!」


「では、何があったのか、我々に教えてくださるのですか?」


「言えぬ!」


 言えないのに私達に解決させようなんて……この国、どうなってるの?


 私はペラペラと口を滑らかに動かしていく。すでに戦いは始まっている。


「そうそう。海の上は退屈でしょう?そちらの船がエイルシア近海でウロウロとしておりますが、シザリアの王妃が帰る気になるまでの暇つぶしに余興を用意しました」


「……余興だと?」


「ええ。いかがでしょう?エイルシア王国自慢のお酒ももたせましょう」

  

 船にたくさん……それはそれはたくさん載せれるだけのお酒を。


「黒髮に緑の目……の軍師?参謀?今まで見たことがない顔だな?エイルシアの三騎士や右腕のセオドアという者ではないと見受けられる」


 少年のリアムになっている私を胡散臭そうに見る使者。


「能力のあるものは、どんどん起用していく」


 ウィルはサラッとそう言って返す。


「ふん!そんな子どものような姿の参謀がいたところでなんになる」


 子どものような!?そりゃ……男にしては背が低いけど。しかし私は使者に少しひっかかるものがあり、嘲るような言葉は気にならず、ジッと見つめた。相手は視線に気付いて怯む。


「な、なんだ!?」


「なんでもありません。ただシザリア王国は気が短すぎですね。人生楽しんだもの勝ちですよ」


 クスッと私笑うと、不快だ!馬鹿にしてるのか!と使者は帰っていった。なんとなく今、糸口が見えた気がした。


 後宮へ帰るとソフィーが青い顔をして待っていた。


「帰るわ。わたくし一人でね。王子は連れて行かないわ」

  

「待ってください」  


「え?」

  

 私はニコッと笑いかける。


「シザリア王が自ら迎えに来てほしいのではありませんか?ここまでソフィーは粘っていたのですから……2日程、待ってみませんか?」  


 ソフィーは私の言葉に狐につままれるような顔をしたのだった。

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