華やかな後宮に招かれる
コンラッド殿下の命を助けたと言われ、お礼がしたいとコンラッドの後宮の王妃様たちに招かれることになった。
「お嬢様、他国の後宮を見てみるのも勉強になりますよ!」
ニコニコしながらアナベルが用意してくれる。
「お嬢様は怠惰に特化しすぎですからね!本来なら、陛下のために尽くすのが後宮の役割のはずです。陛下はリアン様には甘いと言うかお優しすぎです」
「怠惰に特化してても良いじゃない?ウィルも私が幸せそうにゴロゴロしてるのを見るのが癒やされるなぁって言ってたわよ」
「いつです!?いつ陛下がそんなことをおっしゃってましたっ!?」
いつだったかしらー?と私はとぼける。アナベルが私の金の髪を櫛で丁寧にといてくれる。
「お嬢様の怠惰好きにも困ったものです。陛下が他の女性に興味を持たれたらどうするんです?」
「ウィルが?」
しばらく思考してみる……想像つかないわと笑うとアナベルは愛されてますねぇと笑う。違う。そうじゃない。想像することが臆病でできないのよね。ウィルはいつだって自分の意志、決定一つで後宮に私以外の妃を招くことができるもの。その時、私はどんな感情を持つことになるのだろうか?
本来の後宮はどんな感じなのかしら。私は緑のドレスに合うペリドットのアクセサリーを身に着ける。王妃様たちと会うので失礼のないように、気合いをいれて準備した。
コンラッドの後宮はかなり広かった。歩いて行ったが、部屋がいくつもあり、長い廊下が続く。天井も高くて、思わず見上げてしまった。これがユクドール王国の王宮内なのねと王宮の広さに舌を巻く。大国だと感じさせられる。わかっていたけど、いまさら、この国を敵に回したことをちょっと怖くなった。
「これより先はエリックは行けないのね」
エリックが男子禁制なんですよーと困った顔をする。
「大声あげてくれたら、すぐ助けに行ける距離にはいるから大丈夫です。お気をつけて」
「わかったわ。待ってて」
エリックと私のひそひそとしたやりとりに後宮の使用人がニッコリ笑う。
「きちんとお守りします。昨夜、コンラッド様をエイルシア王国のお守りしてくださったことを皆が知っております」
「あ、いえ、警備に不満とかそういうわけでは……」
口ごもる。エリックは昨日の今日で、久々に陛下の怖さを思い出したと言い、朝から私の警備にピリピリしている。
「こちらへどうぞ」
私がアナベルを連れ立って歩いて行くと、廊下で出会う人々は立ち止まり、頭を下げる。かなりの人数の使用人がいるように感じた。花や絵画が飾られ、香りの良いお香が焚かれている。
広いホールをいくつも抜けて、広々とした場所へつく。その部屋の窓は大きなガラス張りで噴水や庭園が見え、開放感がある。5人の王妃が並び、その後ろに何人ものメイドを控えさせている。色が決まっているのか、それぞれの王妃様たちもメイドも決まった色の服や装飾品を着用しているのが印象的だった。
「正妃の第一王妃ですわ。皆を代表してご挨拶とわたくしたちの大切なコンラッド様をお守りいただいたお礼を申し上げます」
白色に金色の糸で刺繍されている清楚に見える服のデザインで、決して派手ではないのだが、最上級品とわかる布を使ったドレスを着ている女性が深々とお辞儀した。私も慌ててお辞儀をする。
その言葉に後ろに控えている4人の女性たちも深々とお辞儀した。
なんだかすごい雰囲気よねと私がアナベルに耳打ちをすると、緊張した顔でアナベルもはいと答える。
ここの華やかな後宮は私が一人で住んでいるところとは大違いだと、私もアナベルもすでに気付き始めていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます