王の周りに集うもの
城に帰ってからエキドナ公爵と会ったが、助けろ!とか自分に罪はない!とか意味不明なことを言うため、地下牢から出すなと命じ、一族も離宮に集め、処罰が決まるまで閉じ込めてある。
だがオレは彼に一つだけ問いたいことがあった。
「なぜそこまでして玉座を欲する?」
「ある人に認めて貰いたかっただけだ」
「それは誰だ……?」
乱れた黒髪の中からギョロリと光る眼がこちらを見ている。
「おまえに教えるものか!」
オレは嘆息し、スッと目をそらす。狂気に満ちたこの男に、もはや聞くことはない。
待て!出せ!と叫ぶ声を無視してオレは牢を後にした。出ていくとガルシア将軍がいた。
「陛下、大丈夫か?」
「なにがだ?」
物事をあまり深く考えていないと思っていたガルシア将軍だったが、リアンのおかげで意外と考えていることがわかって、それから印象が変わった。
大丈夫か?と聞いているのはオレの感情についてだろう。
「別に……。昔から信用してはいなかった。母を毒殺したのもほぼエキドナ公爵とみて間違いからな」
「……一時期は父のように慕っていたことを知っている」
母が亡くなるまでは、確かに慕っていた。怪しく感じてからは慕っているフリをしていただけだ。
「だいぶ昔のことだ。そんなことで感傷的にはならないし、温情をかける気もない」
「王は辛いな」
「信じられる者が少ない。ガルシア将軍、裏切るなよ。裏切れば容赦しない」
わかってると将軍は両手を挙げて、大きな体を一歩ひく。
「陛下〜!」
エリックの゙声だ。三騎士達が歩いてくる。ガルシア将軍が指差す。
「まあ、しかし陛下には昔よりも信用できる者も味方も増えたんじゃないか?」
「そうだな」
父はエキドナ公爵と仲が悪かったのだろうか?それすらもオレは知らない。無関心だった。……まぁ、父王の方もオレに関心はさほどなかったけどな。父に味方はいたのだろうか?信頼に足る者たちはどれほどいた?
「ガルシア将軍、警備が甘いのではありませんか?陛下がいない時に誰も王宮に入れてはならないとリアン様は言っていたはずですが?」
「うっ……仕方ないだろ!あの方たちには逆らえなかった」
達?オレは眉をひそめる。
「二人で来たんだよ。前王の母であり、陛下の祖母であるベラドナ様とエキドナ公爵が揃ってやってきて、城の中へ入れろと言われたんだ。圧倒されてもしかたないだろうが!誰が止めれるんだ!?」
「お祖母様も一緒に来ていたのか?」
そうだとガルシア将軍が頷いた。
……ああ。なるほどね。オレはそこでようやく合点がいった。父とエキドナ公爵は母である者に影からコントロールされていたのかもしれないな。父から祖母の話を聞いたことがなかった。逆にエキドナ公爵の家にはよく出入りしていたし、夜会でも並んでいるところを見たことがあった。
城の中で一人で孤独だったのはオレだけではなく、父もまたそうだったのかもしれない。誰も信用できず、父にいたっては……もしかすると実母すらなのか?
これは思っていた以上に根深い問題かもしれないな。
無言になったオレに陛下?と三騎士が尋ねてきた。
「なんでもない。もう一人会いたい者がいる。来ているか?」
「来ております」
そうかとオレは向かう。もう一人の人物には助けてくれて感謝すべきか?それとも恐るべきか?わからないが、一度話す必要があった。
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