憂鬱な騎士
「あら、これも似合うわねぇ」
キラキラした宝石、靴、ドレスの数々が並べられている。
「お嬢様、こっちの物もよろしいと思いますよ!」
「あら!本当ね。可愛いかも〜」
アナベルと私はキャッキャウフフと盛り上がる。
「おい、無視すーるーなー」
低い声がした。顔を向けると、そこにいるのは金の髪に豪華なドレスと飾りをつけた美女だった。
「なに?美しい貴婦人さん」
「貴婦人じゃなーーーい!騎士だよ!騎士なんだよーーっ!」
女装させられたエリックが叫ぶ。
「知ってるわよ。でもアナベルに身代わり頼めないし、むしろ腕が立つ人がしてくれたほうが、なにかあっても返り討ちにできるでしょ?エリックの゙腕を買ってのことよ!」
「褒められてるのかな?いや、違うよね?陛下の腹心である三騎士の一人が、なんでこんな真似をしなくちゃいけないんだ」
「安心して。陛下からも許可を得てるの」
陛下もおかしいだろおおおお!と叫んでいる。
「エリックなら、器用だから何をさせても出来る!と太鼓判を押してたわよ?」
「えっ……まぁ……期待されてるのかな?」
もちろんよ!と私は強く頷くと、悪い気はしなかったのか、エリックは大人しくなる。
「エリック様は思いのほか似合ってますねぇ。素材がよろしいのでしょう」
アナベルは楽しそうにフワフワとしたドレスをエリックにあてて見ている。
「確かに。前に女装してもらった時から思っていたのよねぇ」
「そんな前から狙って!?」
エリックがゾッとしたように叫ぶ。
「敵が大きくなればなるほど、私やウィルの身は危険になるわ。アナベルでは危なすぎるって思っていたのよ。なかなかいい素材が見つかって嬉しいわ」
「大きい敵と戦う予定なのかよ〜」
それはわからないわと言葉を濁しておく。この先の未来はわからない。でも私は50年100年先でもこの国が幸せであるようにしたいと思ってる。それは壮大過ぎる夢かしら。
ガチャと扉が空いた。真面目なトラスだった。
「トラス〜!見てくれよぅ!ひどくないか!?」
エリックがトラスに泣きつく。しかしトラスは顔色1つ変えずに真顔で答える。
「これもリアン様を守るという大事な使命です。陛下にはセオドアがいるから良いが、リアン様の影武者には誰か必要だと思っていたんです」
「え……いや……真面目に言うんだね」
トラスなら三騎士にそんなことさせないでくださいと言ってくれると思ったのに……と逃げ場の無くなったエリックは一筋の汗を頬に流す。
「しかもエリックならば小柄な騎士ですから、リアン様の影武者にうってつけです。このトラスがしたら、すぐにバレるでしょう」
私とアナベルは想像してしまい、笑いを堪える。トラスの女装とか何かの罰ゲーム中なの?という感じにしかならない。
「くっ……えーい!なんでも持ってきてくれーっ!」
半ばやけっぱちに美人騎士のエリックはそう叫んだのだった。
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