3話 ゆけむりの中では遊ばないように

「クロ、次はこれでいくわ!!」

 灯もまた、手を後ろ腰に回し、縦長の箱を出した。箱全体が山吹色で統一されている。

 【太義の蛮輪】ブロ・ウォーガー



「来なさい、灯!!」

 クロは手をひらひらさせながら灯を挑発していた。


 灯はクイーンズブラスターASKから【レッド】のスライドキーを外し、代わりに縦長の山吹色の箱を装着した。

 この縦長の山吹色の箱は【太義の蛮輪】ブロ・ウォーガー

 クロと同じ悪魔である黄色のカサンドラの成分を採取して、璃子さんが開発した私達の強化アイテム。

 先日、警察との小競り合いで使用日数僅か一日で使用不能になった哀れなアイテムである。

 壊れた【太義の蛮輪】ブロ・ウォーガーを璃子さんがなんとか修理し、今日やっと再使用に漕ぎつけた。


『デストロイ』

 なんとも怖い言葉が実践場に響き渡り、すぐ後に灯はクイーンズブラスターASKのトリガーを引く。

 縦長の山吹色の箱が展開し徐々に形を変え、スコープ付きのライフル銃に変形する。


 先程までの赤と黒の怪盗服がなくなり、山吹色をした専用の怪盗服に早変わりした。

 アシンメトリーデザインで山吹色の革ジャンに軽くて滑らかで美しい表面をもつレザースカート。アクセントになるウェイトベルトが付属している。


 右手に持っている武器も【裁紅の短剣】ピュニ・レガから【太義の蛮輪】ブロ・ウォーガー専用武器【義心の大剣】ヘルズ・ギドリ

 黒と黄色のバスターブレード。

 灯の身の丈ほどもある大剣で見た目からは大きく重量がある。本来ならば人の手には余る巨大な大剣は主に両手剣の形をしているが凄く重くて、重量バランスも先端の方まで重いから、持ってると歩くのが遅くなる。しかし、【義心の大剣】ヘルズ・ギドリを持っている灯からすれば意外と軽いのはわかっている。


 【裁紅の短剣】ピュニ・レガのようなナイフではないため小回りは効かないのが難点だが、

 振り回したり......振り回したり.....振り......回す??

 あれ、これから思いつかない???


 1回、投げナイフのように【義心の大剣】ヘルズ・ギドリを投げた経験があるが、それだけだ。他の使い道がない......

 あれ、これはマジで運用方法を増やさないといけない


 左手に持っているライフルを撃ちながら、【義心の大剣】ヘルズ・ギドリを振り回し、走る灯。

 クロは前屈みになり【黒志】ブァークを横に構え、灯を待つ。

 自分に向かってくる銃弾の雨を余裕でかわす。


 上から振り下ろされる【義心の大剣】ヘルズ・ギドリ、抜刀された【黒志】ブァークがぶつかり合う。


 訓練は続くーーーー




「はぁ〜 気持ちいい!!」

 私は訓練が終わり、お風呂へ。

「あぁ〜 癒される!! 〜〜♪」

 湯船に浸かりながら、鼻歌を歌う私。


「確かにいい湯ね!! 若返るわ!!」


 私とクロは並んでまったりと湯船に浸かっている。

「クロは年齢なんて、無いようなものだし関係ないじゃん」


「甘いわね、これは心の問題なのよ。いくら魔力操作で見た目を若くできても、何百年以上生きていると、色々あるのよ。よく覚えておきな、灯!!」



「は〜い!!」


「ねぇ、灯。身体、洗ってあげる!!」


「いいよ、別に。てか、何で少し頬を赤く染めて言うの......怖いんだけどっ!!」


 クロが急に変なこと言うもんだから、こっちまで変に気にするじゃん。

 胸の上部分を突かれた。

「キャッ!!」


 不意にクロに突かれたので可愛い悲鳴を上げてしまった灯。

「やめてよ、いきなり!?」


「久しぶりに見たけど、灯のはかたちが良いね」


「そ、そう? クロのは殺意が湧くけどね、サイズといい、大きさといい......ズルい」


「なら、灯のいじってあげましょうか」


「良いよ、別にーーーーねぇ、本当に私のが今よりボンになれるの?」


「えぇ、本当よ!!」


「でも、どうやって? まさか、追加の契約とか?」


「それは無いわ」

 同じ悪魔からの契約は追加できない、先に結んだ契約内容が終われば、別の願いを依頼できるとされているが、一度、召喚された悪魔は契約完了と同時に消える。

 別の悪魔を呼び出し、別の願いを言う必要がある。

 現代ではそういったオカルト要素を信じる人が減ってきており、悪魔召喚に必要な道具が絶滅危惧種のような扱いになっていて、入手困難とされている。

 契約内容を悪魔が他人に明かすのは固く禁じられている。これを破った場合、消滅してしまう。


「既に契約した内容も叶えられない悪魔なんて悪魔失格の烙印を押されるわ。てか、灯の場合、代償がどうなるのかの方が心配だわ」


「それはそうだけどさ......」


「まぁ、安心して。そんな物騒な話じゃないわ。この場でできる最も簡単な方法よ」


「この場でできる最も簡単な方法......? それって、一体、どんな方法なの?」


「それはね......えい!!」

 クロの手が神速で見えず、いつの間にか、揉まれていた。

「あっ......ち、ちょっとやめてよ。うぅぅっん......ダ、ダメェ!」


「灯のはかたちも良かったけど、触り心地も良いわ。これなら、いけるわ。色々とね〜」


 クロを引き剥がしたいけど、タコの吸盤並みに手が取れなくて嫌になる。

「な、何させるのよ......あぅん! どこで身につけたのよ、その手の動き......」


「色々、経験していたしてきたからね〜」


「何の経験してきたのよ」


 ようやく手が離され安堵する灯。

 手を顎に置き考えるクロ。

「ふむふむ、なるほどね〜」


「何よ、何されるつもり? いやよ、卑猥なことはしないから」


「うん〜、何考えてるのかな〜、頭桃色の灯ちゃん!」


「別に何も考えていませんよ〜」

 あんなことやそんなことは決して考えていません。まぁ、この前すずちゃんの教えで綾ちゃんと3人ですずちゃんの家で見たけど、あれは違う。あくまで釣られて見たというか。

 でも、いつかは私も......待て待て、私には大事な使命がある。

 うつつを抜かしている場合じゃないわ。


「ねぇ、貴方達、何、卑猥なことやってるのよ」

 バスタオルを巻いて歩いてきたのは璃子さんだった。


「脱衣所まで聞こえてきたわよ。クロもあんまり灯にセクハラしちゃダメよ」



 クロはクスクスと小さい笑いをしていた。

「誤解よ。灯がでっかくなりたいから、その手助けをしただけよ」


「はぁ、灯、これは唯の脂肪よ」

 璃子さんが自分のを指差ししていた。


「今のままで十分じゃん、灯もそこそこあるんだし」


 クロと璃子さんは同じ位のサイズだから、そんなこと言えるのよ。

 先日も璃子さん、またブラを変えたとか言ってたっけ。


「2人はその大きさだからそんなこと言えるのよ」

 頬を膨らませてそっぽを向く灯。


「はい、揶揄うのはここまでにしましょうか」


 クロに背中から抱きつかれた灯。

「これも揶揄うたぐいに入ると思うんだけど......」

 てか、やっぱり、凄いな。弾力とかハリとか感触とか



「貴方達、本当にお互いが好きなのね。今のご時世、難癖つける人はいないし、問題ないけどさぁ〜 本人達が幸せなら良いしね」


「別に私も好きでこんなことしません。クロが離れないんです」

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