43話 FREEDOM VS JUSTICE Ⅲ
瓦礫の山から石ころサイズが1つ落ちてきた。
「こいつは俺が回収させて貰う。残りは貴様が持っているな」
灯は懐からカプセルを出し見せた。
「これのことですか?」
「それは警察の物だ。回収させて貰うぞ」
「生憎、これは元々、貴方達の物じゃないわ。私のーー友のモノよ」
「なんだと......」
「それに、欲しいなら来なさいよ!!」
前方に猛進してくる緋山。
灯は
「——ッ!」
これに対応しますか。流石ですね。
緋山が避けた方向に灯は
灯には左手が残っているのでライフル銃を取り出し迎撃しようとトリガーを引く。
しかし、懐に入られ突貫された。
「ガハァッ」
そのまま灯は吹っ飛ばされた。駐車場に設置されている柱に背中からぶつかる。
(い、いったぁぁぁ......)
【
その音声と共に緋山が持っている警棒が【
その状態の武器を持ち、こちらに向けてオーラを飛ばした。
周囲を巻き起こる煙。
緋山の方にも煙が飛んできて、全体に被った。視界を覆う煙を手で払う。
柱を確認したが巨大な穴が開いてるだけで怪盗の姿はなかった。
「やったか......悪は許さない」
「この力がもっと早くあれば俺の親は......」
俺の両親はもういない。父は俺と同じく警察官だった。いろんな犯罪を捜査し、多く解決してきた。幼かった俺は父が偉大に見え、もして自分もいつか父のような立派な警察官になると心に決めていた。しかし、ある犯罪グループのトップを逮捕したことが原因でそこに所属していた奴に両親を殺された。
緋山はその日に限って帰りが遅かったため殺されずに済んだ。その一件から緋山燐兎は変わった。絶対に悪は許さないと心に決めた。
そしてここ最近、暴れている怪盗と良く出くわすことが増えていた。
最初は市民を救ってくれたことから自分でも珍しく見逃したが、そこから奴は未確認生物「ソドール」と一緒に市民を恐怖に落としている。
あいつらは自分のために好き勝手行動しているがその結果、周りに被害が出ている。今は軽症などの怪我で済んでいるがその内、市民が殺される可能性も広がる。
ソドールがあと何体存在しているか分からないが、目の前にいた怪盗は2人ぐらいしかいないため先に奴らを倒すことにしている。
「うん?」
怪盗が居たと思う柱の近くに山吹色の破片が飛び散っていた。その破片は銃の形をしていて修復不可能な状態で粉々になっていた。
「危なかった、間一髪って奴だね」
緋山が振り向くとそこにいたのは先程まで着ていたアシンメトリーデザインで山吹色の革ジャンにレザースカート、軽くて滑らかで美しい表面をもつアクセントになるウェイトベルトがなくなり、腰まで伸びている真っ赤な髪、モデル体型のような細い体は烏の羽のような艶のある黒色のワンピース・ドレスに包まれている。ドレスの上に羽織っている深みのある華やかなワインレッドカラーのコート。右手にはナイフを持っていた。
「運のいい奴だな。お前に聞きたいことがある」
「この状況でなんですか、一体?」
「なぜこんなことをしている......」
「自分の目的のためにソドールを狩っているわ。それじゃダメなの?」
「くだらない目的だな。なぜ警察に頼ろうとしない」
「今の言葉ーー聞かなかったことにする。なぜ貴方達を頼らないのか。それは貴方達には、もう期待していないからよ」
巌(いわお)さん達がどれだけ探しても灯を含め31人のクラスメイトは見つけられなかった。
それは警察も同じだった。
誘拐された当初はきっと警察が助けるにくるだろうと大多数が願っていた。
しかし、そんな希望は1年、また1年と薄れ次第に助けは来ないと全員思っていた。
私が脱出後に巌さん達からこの10年のことを聞き、どんなに調べても痕跡すら見つけられなかったらしい。
これでは警察もお手上げ状態ですぐさま迷宮入りの事件になる。
だから、これは一方的な八つ当たりである。もうこいつらには頼らない。
ソドールの問題はそれに関わった人である私達だけでいい。
「警察に何かしら不満があるのはわかった。だが、貴様が怪盗という手段を取って市民を危険に晒しているのは紛れも無い事実だ。お前やあのソドールと言う化け物がいろんな場所でお構いなしに戦い被害が出ているのが、分かっているのか。俺は正義のために貴様を逮捕する」
青奈:灯ちゃん......代わって......
緋山さんが右手に持っている特殊警棒を振る下す仕草をしている。
身体の直線上に、左足を踏み込み、つま先立ちになる。右手を前に出して身体のバランスを取りながら、右足を膝から上げる。相手に当てる瞬間に、右足を伸ばし切って蹴った。
緋山は脇腹に激痛が走り回った。
「ガハッ」
マスクで分からないが大量の血が口から吐き出された。
目の前にいる怪盗は上げていた右足を下ろしながら、こちらを睨んでいる。
『ブルー』
「変身」
低く、重く、胃の底から落ちるような声をしていた。
青髪を後頭部で一つにまとめて垂らしたポニーテール姿。烏の羽のような艶のある黒色のワンピース・ドレスに包まれている。ドレスの上に羽織っている深みのある華やかなブルーのコート。
右の腰から膝まで伸びているホルスターが装着され、そこには二刃の剣がついている。
になり、器用に
「正義ねーー貴方、昨日自分が何したかわかっているのかしら。私しがいなかったら、貴方が守る守る言っている市民が死んでいたのよ。そんな正義が罷(まか)り通るならーー私しは自由を選ぶわ」
「それは......」
「そんな貴方に正義を語る資格はないわ」
「キサマァァァァァ」
激昂した緋山がこちらに向かってきた。
「はぁ、これだから男は嫌いなのよ」
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