41話 FREEDOM VS JUSTICE Ⅰ
5月29日
昨日の炎上事件は各局で大きく取り上げられ、ニュースの話題はずっとそれだった。
今の現場の状況が中継され続け、外に出動していたアナウンサーが実況している。
スタジオのコメンテイターの人達は今回の事件のことを討論していた。
「車が炎上したのは偶然だったとしても、燃える現場から救うはずの警察官がそれを放棄していたことに問題があると思うのですが」
饒舌で語っている少しふくよかな男性。
「救ったのはあの女怪盗だと言うじゃないですか」
「怪盗が市民を救い、警察官がそれを邪魔したと被害者からの報告もあるみたいですし」
スタジオでは怪盗に対して好意的な人達が多くいて、警察官、それもソドール対策室の連中のことを色々、言っていた。
黄華:まぁ、そうだね
灯:でも、少しこれは酷いと思うけど
黄華:灯、あいつらに擁護する必要ないぜ
灯:そうだよね......青奈ちゃんはどう思う?
青奈:......
灯:ねぇ、こうちゃん? 青奈ちゃんどうしたのかな......
黄華:ほっとけ、ほっとけ
「灯、行くわよ!!」
クロと一緒に昨日の立体駐車場に向かった。
いつも通り、クロは後方支援。私が前衛のフォーメーション。
ショッピングモール『ウィル・バス』と『クロースボルト』空港は急遽、一部営業停止になっていた。
『クロースボルト』空港は出口専用が被害、ショッピングモール『ウィル・バス』は直接的な被害はないが炎上になった方角にある店などが営業停止でそこから遠い場所は営業している。
そして、私達とネコ型のソドールも立ち入り禁止のテープが貼られていた。
テープを潜り、暗い駐車場に入った。
念の為、入ってすぐに【レッド】に変身した。
薄暗い駐車場を警戒しながら進んでいく。
ネコ型のソドールからの奇襲を避けるために柱を使って隠れながら注意深く進んだ。
2階、3階進んだがネコ型がいなかった。昨日あった車はどこにもなく隠れる場所はほとんどない。何台が残っていたがそこにもいなかった。
あと2階分ある。念の為に進んでみた。車用のスロープ道路を進んでいたが地味に足にきていた。
4階に上がる瞬間、上が騒がしいのがわかった。
「もしかして......」
嫌な予感がして灯の足が徐々に早くなり、走っていた。
5階、この立体駐車場では屋上の位置になる。
もうすぐ正午になるためか太陽の光がいつも以上に威力を増していた。
そこに居たのは灯と再戦を予定しているネコ型のソドール。
そして、3人の警察官が戦っていた。
「----ッ!!」
目を見開き、驚く灯。
3対1の状態でも両手の武器であしらっているネコ型。
不意にこちらを見てきた。
「ちょっと、どういうこと怪盗ちゃん!?」
「私も想定外よ」
「うん? 怪盗!?」
この状況だとネコ型のソドールが倒される危険性がある。
先にネコ型のソドールの成分・カプセルを回収し、そして残りを倒し全て手に入れる。
「いきなりやりますか」
勿体ぶってても意味がない。さっさと倒してまた楽しいことをしよう。
みんなで。
クイーンズブラスターASKに付けていた【レッド】のスライドキーを取り外し、後ろから縦長の山吹色の箱
『デストロイ』!!
「変身」
引き金を引いた。
縦長の山吹色の箱が展開し徐々に形を変え、スコープ付きのライフル銃に変形した。
着ていた衣装も赤から山吹色になった。
アシンメトリーデザインで山吹色の革ジャンに軽くて滑らかで美しい表面をもつレザースカート。アクセントになるウェイトベルトが付属している。
右手に持っている武器は
黒と黄色のバスターブレード。
灯の身の丈ほどもある大剣で見た目からは大きく重量もあるものだが持っている灯からすれば意外と軽いことがわかった。
「やりますか!!」
が、それを阻むかのように緑川(みどりかわ)と七上(しちじょう)が出てきた。
灯は左足のつま先に力を入れ、地面に対して垂直に回りながら進んでいる。
これが意外と難しい。芯が真っ直ぐではないコマを回すのは難しいように意識しないと回ることができない。肩や腹、全身を意識して行動しないといけない。
そして、遠心力も重要。
普通の回転の勢いだと、回転によって生じる渦が広がる方向になる。腕を振り回すと背中が、足を振り回すと腹が耐えることができず大変なことになる。少しでも気を抜くと乱れて軸が崩れてしまう。
灯達は昨日、一通りの性能を確認した後、大剣をうまく有効活用するためにひたすら回る練習をしていた。
タオルなどを使って、巻き取るようにバランス良く、タオルを身体にぐるぐる巻きしていた。
ただ回るだけでは敵を倒すことができないため、回りながら前へ移動する練習もしていた。
こっちもこっちでかなり大変で一朝一夕では完全にマスターすることはできず意識して臨んでいる。
いくら、今の灯の状態で大剣を持つと軽く感じられるがそれでもバランスを崩す恐れがあるためものすごく上手に各部位の力を揃えないといけない。
自分が進んでいく道に直線を引くように意識し、肩や腕の力で巻き取ると身体は振り回せるらしい。
初めは目が回る心配をしていたが、意外とそんなことがなく、回転し続けることができた。
「いけぇぇぇぇぇぇっぇ!!」
「ここで止めさせてもらうぜ」
緑川が『アヒェントランサー』に埋め込まれていた『Pパス』を2回押し、真理必義(フルチャージ)を発生させた。
緑川の真理必義(フルチャージ)は、持っている専用武器の銃から発射される弾が一度に何十発放出される。
放たれた銃弾がミサイルの形になり、回りながら進んでいる灯に向かって撃ち出された。
「待ってました!!!」
その言葉を言った直後、無数のミサイル弾が灯を直撃した。
灯がいた場所が巨大な爆発が起こり、爆風が辺り一面を襲った。
「やったか?」
爆煙の中から人影があった。
煙が徐々になくなり、その人影が現れた。
仁王立ちして持っていた大剣を右肩に乗せている怪盗がそこにいた。
ミサイル弾を直撃したのに傷一つ付いていなかった。
「お返しするよ!!」
「させません!!」
煙に紛れていた七上が灯の懐に持っている武器の刃を当てようとした。
灯は右肩に乗っている
「それも貰うね!!」
七上が横に振った刃が
刃から放たれた威力が全て
灯はそれを確認し、刀身に近い柄部分にトリガーがあり2回引いた。
七上は放たれた刃状のエネルギーを直撃し、後ろに吹っ飛んでいた。
吹っ飛んだ七上は変身解除される。
うつ伏せになりながら七上は話した。
「何が起きたんだ?」
着地した灯は大剣を引き抜き、右手首の前腕を動かし大剣を回した。
再度、右肩に乗せた灯。
「次は貴方よ!!」
緑川に向かって笑顔を向けた灯。
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