40話 5月28日 Ⅴ
怪盗ちゃんと紅の警察官が小競り合いをしている最中に私は近くの立体駐車場に一旦、身を潜めた。
ショッピングモールに逃げる手を使うはずだったが、ソドールから人間に戻りながら向かっていると自分の着ている服が炎と黒煙の影響、煤(すす)だらけになっていた。
この状態で中に入れば注目の的になり周りの人に顔を見られる。
タクシーになって逃げるのもありだったが、先程タイヤを撃たれた影響か傾いた状態で変形された。タイヤが修復するまで待っても居られず、近くの立体駐車場に向かい、車を盗むことにした。
薄暗い駐車場を進んでいく。
1階の駐車場から車専用のスロープ道路を上がり、2階の駐車場に行くことにした。
1階にある車を選ばなかったのはいつの間にか現れる怪盗ちゃんを警戒してのこと。
あの子はいつの間にか私の目の前にいるから。
2階に上がり終え、盗む車を品定めしていた。
「こいつにしますか」
ドアハンドルに手をかける。
「逃げるなんて酷いな」
声がした方に顔を向けると立体駐車場の外堀の上に怪盗ちゃんが立っていた。
「やあ、ネコ型」
こちらもネコ型のソドールになり、アタッシュケースをその場に置き、右手に熊手を構えた。
「さっきの暴君、どうなった?」
「仲間に止められているよ」
お互いに武器を構え、徐々に間合いを詰めながら、両者呼び出した。
ギィィィィンッ!!
僕の爪【リッキープレイド】とネコ型ソドールの熊手がぶつかり合い、金属音が鳴り響いた。
左手の爪がこちらを攻撃してくるのがわかり、1歩下がった。
「そのケース、そんなに大事なの? 前みたいに動けなくて追い詰められるよ」
「私も正直、こんな物に興味はないんだけどね。依頼されてね!!」
「へぇ、誰からなの?」
「守秘義務よ」
「強盗犯にもそういうのあるんだ、意外。逆に興味ができた」
「君の成分と”それ”頂くよ!!」
「やってみなさい、怪盗ちゃん!!」
僕は前に進み、攻撃を仕掛けた。
熊手で突きをしてきたので、ジャンプし、熊手の上に乗り真上に突き抜けるための力を蓄え、一気に解き放つために前傾姿勢になる。身体を後ろに傾けるために足で溜めていた力を放出し回転した。空中で抱え込みのような姿勢をとる。空中で回り終わる最中に
僕は自分の膝、爪先のクッション性を高め、衝撃を吸収し着地した。
着地してすぐに加速して一直線にネコ型のソドールに突貫した。
ネコ型のソドールは熊手で防御したが加速した僕の攻撃を受け止めることができず後ろに転がっていき、側にあったアタッシュケースにぶつかり中がぶち撒けられた。
僕の方に中身の1つが転がってくる
「これがあいつが後生大事にしてたお宝か......えぇ!?」
転がってきた物は掌サイズのカプセル。カプセルの中は小人サイズの人形が入っていた。
小人は橙色。細身の女性型の人形になっている。
ネコ型のソドールの方に転がった物はこっちに転がったカプセルと同じ形状で緑色の人形が入っていた。
緑色と橙色の人形?
確か、悪魔が言っていたな。
悪魔の元部下は赤、青、黄、緑、橙、茶、灰色の7体。
今、確認できたのは赤、黄のみ。
他は目撃情報もない。
もしかして、こいつは......
などと考えていると雄叫びが下の1階の駐車場から聴こえてきた。
「怪盗はどこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」
「うげぇ、またぁ〜 逃げるか、一旦」
「また逃すのは嫌だけど、めんどい奴がすぐ近くにいるしなぁ〜 あぁ!? そうだ!!」
「ねぇ、ネコ型......」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それ、ほんとでしょうね?」
「貴方もこれ取り返したいでしょう!!」
橙色の人形が入っているカプセルを振る。
「まぁ、良いでしょう」
「決まりね!!」
「貴方もここからすぐに逃げな。じゃあ、また!!」
僕は不慣れな【スパイダー】で逃走した。
「はい、クロ」
黄華から灯に戻り、研究室にいるクロにさっき手に入れたカプセルを渡した。
「これ!?」
速攻で手に持っていたカプセルがクロに取られた。
じっくり中身の橙色の人形を見て興奮していたが、すぐに冷静になり、一呼吸してから話した。
「ごめん、興奮してた。これは私の元部下の橙よ」
今度は璃子さんがクロからカプセルを取り、中身を凝視していた。
「えぇ〜、これが橙の悪魔なのね」
「女性型なのね」
「えぇ、そうよ」
クロが言うには男性型は赤、黄、茶、灰色。
女性型は青、緑、橙色に分けられている。
「圧縮されて小人サイズか、すごい技術ね」
璃子さんの目がキラキラしていた。
「少し霜があるから冷凍保存? 圧縮して......質量を......細胞......形質転換......老化......肉体......冬眠......」
私とクロはお互い顔を見合わせた。
「璃子は科学者モードに入ったわね。まぁ、良い兆候として捉えて良いのかしらね」
「ついこの前までカサンドラの成分を使って何かできないかずっと研究室に籠っていたのに。どうしようか、クロ?」
「その前に灯」
「うん?」
「またネコ型逃がしたのね?」
「ちゃんと考えているから。あのカプセルを餌にまたネコ型と戦う」
「明日、今日戦った立体駐車場に行く手筈になっている」
「ふ〜ん、よくそんなの思いついたわね」
「あぁ、これは......私しよ」
灯から青奈に瞬時に切り替わっていた。
「相手のネコ型もあのカプセルが欲しいから誘いに乗ったわ」
いつも私と話す時より機嫌が悪い表情を浮かべていた。声にもそれが現れていた。
近くの椅子に座り、足を組んでいた。机を右手の人差し指で叩いている。
コンッコンッ
どんどん叩くのが早くなっていた。
「璃子! この前のできてるの?」
不意に我に返り青奈の方を見ていた璃子。
「えぇ!! 出来ているわ、待ってて」
璃子はソドール能力が内包されているマガジンを生成するための装置の方に向かっていった。
「お待たせ。以前手に入れたカサンドラの成分を使ってできた貴方たちの強化アイテム。その名も......」
縦長の山吹色の箱を青奈に渡した璃子。
「これが......」
「貴方とクロのクイーンズブラスターにスライドキーの代わりにセットすることで使用可能になる強化アイテム!! で、性能なんだけど、これは......あれ?」
「じゃあ、早速試してみるわ」
右手を振りながら実験場に向かった青奈。
「行っちゃった、青奈なら、詳しい説明聞くのに、珍しいわね。ねぇ、クロ」
「うん?」
「なんで、青奈、あんなに御立腹なの? もしかして、私のせい?」
「いいえ、違うわ。もしかしたら......」
実験場に入った青奈は目の前から敵ロボットがこちらに向かってくるのを確認した。
「正義か......くだらないわ......」
『デストロイ』!!
40話現在、灯達が使えるソドール能力。
No.14 ライオン 白黄色
No.25 カメラ 黄茶色
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.35 スパイダー 赤紫色
No.44 ?? ??色
No.47 シャーク 青水色
No.48 ボーン 茶橙色
No.52 ダイヤモンド 水白色
No.53 ミラー ピンク赤色
No.55 クレーン 煉瓦橙色
No.56 ラッキー 茶黄緑色
・橙の悪魔回収成功
ネコ型ソドール
・緑のカプセル入りのアタッシュケース
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