38話 5月28日 Ⅲ
先週は、あの怪盗ちゃんに出会ってからやたら爆発に巻き込まれている感じがする。
ここ何日から怪盗ちゃんから受けたダメージを回復するために盗むのをやめていた。
回復した矢先にあの赤さんにの依頼で空港に向かった。
ネコの化け物のままだとすぐに目的の物をどこかに隠される恐れがあった為、人間体で空港内に潜伏していた。
潜伏してから20分後に目的の物が入っているアタッシュケースを持っている男とその護衛数名がいた。
すぐに盗んでタクシーで逃げる予定でいたが、何があるかわからないため一応、男が外用の出口から出てから盗む計画を立てた。
先回りし出口の周りに大きな白い柱があったのでそれを使って身を隠していた。
顔だけ出して観察していると、白と黒のボディカラーで天井部分には赤いランプが取り付けられている車が男達の前に止まった。
車から降りてきた奴らを見ると、その中に先日、緑色のアーマーを着て私と戦った男がいた。
(あいつらが追加の護衛なら、中身はものすごいお宝なのだろう......)
赤さんからアタッシュケースの中身が写っている写真を貰ったが正直、よくわからないものだと思った。だが、あそこまで厳重に運んでいるのを見るとその認識を改めた。
(じゃあ、行きますか!!)
携帯端末を使って指示した。
”いつでも良いよ”と全員に対してメールを打った。
空港の出口から大勢の人が出てきた。
出口付近はちょっとした人の密集エリアになっていた。程なくして人がいなくなる。
そして、アタッシュケースを持っていた男は騒いだ。
なぜなら、先ほどまで自分が持っていたアタッシュケースがなくなっていたからだ。
それに気づき警護の人達が辺りを捜索したがどこにもなかった。
「意外と簡単だったわね」
この日のためにSNSで募集した人を使って密集状態にしてその中で目的の物を盗む。
「さぁ〜て、これを赤さんに渡しますか」
ついでに追加報酬でも貰いますか等を考えていたが不意に肩を叩かれた
私は反射的に後ろに後ずさった。
「もしもし」
「えぇ!?」
「それ、返してくれますか。泥棒さん!!」
私の肩を叩いたのはあの緑のアーマーを着ていた警察官だった。
「ソドール対策室日本支部担当の緑川颯(みどりかわはやて)と申します」
警察手帳らしき物を私に見せた。
「どうしてわかったのかしら?」
「これでも色んな窃盗犯を逮捕してきましたので、手口は分かります。ただ、疑問なのはどうしてあなたがそのアタッシュケースの存在を知っていたのか」
「知りたい?」
「えぇ、勿論!!」
「だったら、どうぞ!!!」
窃盗犯の女はすぐさま化け物になった。
持っていた猫の手を模した熊手で空港の外に備え付けられている白い柱を壊した。
壊され、緑川の方に柱の残骸が落ちてきた。
そして、そのまま下敷きになってしまう。
「では、さようなら!!」
すぐさま、タクシーに変形し、逃走した。
長い道路を走っていると急にバランスを崩した。
タクシーの状態になると内部情報がすぐにわかり、原因を知ることができる。
後ろのタイヤ。右後ろのタイヤから空気が漏れているのがわかった。
「なんで!?」
よく見るとタイヤに銃弾の跡が残っていた。
「まさか、あいつか」
さらにバランスを取るのができなくなり、車全体で回転しながら近くに停車していた何台もの車と衝突した。
私が操るタクシーにはガソリンは使われていないが衝突した車が別。
衝突によって配線断裂が起き、それにより生じた火種や他の衝突火花などがガソリンタンクなどから漏れ出たガソリンに引火すると火災が発生した。
最初は少し燃える程度だったが、次第に威力を増し黒煙と火柱が出てきた。
「私って、爆発にやたら縁があるんだけど......気のせいかしら??」
大きな炎を背にネコ型のソドールは嘆いていた。
周りを見てみるとやたら家族連れが多かった。
「そういえば、近くにでかいショッピングモールがあったっけ。そこに入って身を隠しましょう」
そう言ってそのまま、ショッピングモールに向かった。
歩いていると後ろで連続して爆発音が鳴り響き炎上している。
「これは予想外ね」
歩いていると空中で見知った人影を見た。
腰まで伸びている真っ赤な髪、モデル体型のような細い体は烏の羽のような艶のある黒色のワンピース・ドレスに包まれている。ドレスの上に羽織っている深みのある華やかなワインレッドカラーのコート。
そう、先週、ずっと私と対峙していた怪盗ちゃん。
おそらく近くに居て爆発音が聴こえたから向かっているのだろう。
今は相手をしている状態ではないのでスルーしていたが、上から何かが落ちてくる感じがしたので間一髪で避けることができた。
「ヒィィ、危なかった」
「貴方、ここで何やってるのかしら」
私に銃を突き立て睨んでいる怪盗ちゃんだった。
「久しぶりね、あの時のパンチ結構痛かったんだけど。お陰で数日、寝たきりだったのよ」
「それはよかったですね。そのまま、窃盗から足を洗えばよかったのに」
「残念、これは私の天職なの。辞める訳ないでしょう!!」
笑顔で私は怪盗ちゃんに答えた。
「あれは貴方がやったんですか?」
「どうしてそう思うのかしら?」
「私の情報網を甘く見ないでください」
「はぁ〜、確かにあれは私が起こしたわ。でもね、私も被害者なものよ。タクシーのタイヤに銃弾を受けなければこんなことになっていないわ」
「あの対策室の連中、イカれているわ、絶対に。私を足止めするために容赦無く攻撃してくるもん。周りを見てからやって欲しいわ」
「対策室の連中......まさか!?」
空港の方から車が1台こちらに向かってきた。
私とネコ型のソドールの前に急停止して降りてきた人達がいた。
ネコ型のソドールのは緑川颯(みどりかわはやて)が銃を出し、真ん中には七上賢人(しちじょうけんと)が、そして、私に向かって特殊警棒を向けている緋山燐兎(ひやまれんと)がいた。
「お前らを逮捕する」
怪盗と化物を睨みながら緋山がいい放った。
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