19話 ダウンする悪魔は小物 林間学校終了

「見つけたぜぇぇ」

 その言葉に反応しすぐさま、灯は後ろを向いた。

 そこにいたのはーーーーーー悪魔:カサンドラがいた。


 改めて見ても、蛮族な見た目。今にも私を噛みつきそうな狂暴な獣のようだった。


「よくも俺様の邪魔したなぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁ!」




「憂さ晴らしにテメェの倒し持っているソドールの力をもらいぜぇぇぇ!!!」





「逆にあなたの持ってる能力を頂くわ!!」


『イエロー』


 カサンドラはいわゆるパワータイプの悪魔。

 一撃一撃は強力だが機動力に優れている【ブルー】に任せるのも考えたが立地があまりよろしくないため機動力が活かせない。

 なので、同じパワータイプの【イエロー】で立ち向かうことにした。



 以前の戦闘の反省から定期的に【捕食者の影爪】シャク・ロドエに備え付けられている【リッキープレイド】を蓄えていた。



 カサンドラは石ころが散乱している不安定な場所でも、それを物ともしない強く地面を蹴り穿った。

 想像できない程の速度でこちらに向かった来た。

 自身の力に速度が加わったので、更なる力を生み出した。

 迫ってくる速度で駆ける圧迫感に、黄華は息を詰まらせた。

 正直、今まで戦ったソドールとは比べられない程の緊迫感があった。

 マトモにこの攻撃を受ければ、無事では済まない。



「危な......!」


 バカなのか頭に血が昇っていたのかフェイントなどもなく真正面に駆けてきた為、カサンドラの動きを見切り、横に転がり身を躱した。



 先程から闘牛のように駆けてきており、それに合わせて適切な行動で避けていた。



(単調な行動だが、回避しかできない......。どこかに隙があればいいんだけど......)


 一方で、自分の攻撃が一切当たらないことにカサンドラは苛立ちを隠せないなっていた。

 突進して獲物を狩れば済むはずだったが目の前のガキがここまで動けるとは正直、思わなかった。

 しかも無傷のまま俺様の前に立っている。それを見て、カサンドラはより一層、怒りを露わにしていた。


 先程、自分でも危うく吹っ飛ぶかもしれないエネルギーを放ったのに関わらずそれをすっかり忘れ、チェーンソーに【ライオン】を装填した。



 無意識に後ろに下がっていき、黄華と距離をとった。


 黄華自身も反撃に転じる好機を失い同時に警戒した。

(さっきの攻撃がくる......)


 警戒通り、武器が光り出していた。橋で見せた攻撃だった。

 だが、橋との戦闘とは違い、溜めているのを感じた。徐々に光が強まり光り始めていた。




 ーーーー西部劇でガンマンが睨み合うように、ただ待っていた。


 黄華は深い集中状態に入った。あんなデカい攻撃なら隙が生まれる。そこが勝機だ。



 地面を蹴ったカサンドラは横に武器を持ちながら、放たれた矢のごとく駆けてきた。

 駆けながら武器を頭の方に向け振り下ろした。

 チェーンソーが当たらなくても纏ってる黄色のオーラは放てる。


 だが、ソーチェーン、ガイドバーにかけて黄色の光を纏っていたオーラは、制御できず地面に向かって放たれた。




(まずい!!)

 直撃しないにしてもエネルギーの余波でこちらにも被害がくる。

【ダイヤモンド】


 緋山の方に駆け寄り防御に徹した。


 煙に巻かれながら【ダイヤモンド】の柱のおかげでなんとか衝撃から守ことができた。

 いくら【ダイヤモンド】でも無傷とはいかずボロボロになり崩れた。



 考えるよりも早く、身体が動いた。できた隙を見逃さずカサンドラのように向かった。

 超至近距離までカサンドラの方に進み体勢を整えた。

【捕食者の影爪】シャク・ロドエを力一杯に握り、拳を構えた。相手への打撃を繰り出すために。

 黄華はカサンドラへ拳の照準を定め準備完了。



 そして、そのまま腹部を正確に抉り込んだ!!



「ガハッ......!!」

 血反吐を吐きながら、後ろに吹っ飛ばされたカサンドラ。

 吹っ飛んだ衝撃で【ライオン】がチェーンソーから抜け黄華の前に落ちた。



「これが【ライオン】か......」

 自分が持っているソドールの能力が入っているマガジンのように彩られていなく無色透明な状態だった。



「こ、こんなことで俺様が、お前みたいな奴に......」

 次第に空中から地面に帰還したカサンドラは大の字で倒れ込んだ。

 余程さっきの攻撃が効いたのか起き上がる気配すらないカサンドラを一瞥した。




 どれくらいそうしていたか分からなかった。実際、そこまでの時間がかかっていない。

 予想以上に疲労困憊の息を荒々しく吐き出しながら、僕は空を仰いだ。

 刻々と色を濃くしていく夕焼けを見ながら美しいと思った。




(クロ、早く来ないかな......)


 黄華や他の2人の武器には悪魔を封印させる能力はなく、試しに注射器を挿しても特に変化はなく注射器の中身が黄色になるだけカサンドラはそのままだった。



「お前は......!?」


 黄華は驚くべき反応速度で呼ばれた方向には振り向いた。振り向いた先には緋山がおぞつかない状態で立ち上がりこちらを見ていた。

「なぜ、怪盗がここに......」



「偶々だ!! ソドールと悪魔が騒動を起こしていると情報が入ったからこんな山奥まできたわけ。ただ、それだけ!! そうだ、お前が助けた女の子は安全だよ。離れた所に寝かしておいたから」




「そうか......。良かった、無事で......」


「助けを呼びな、僕はこいつを運ばないといけないから......」


「こいつ?? そんなやつ、どこにいる......」


「えぇ......!?」


 振り向くとそこにカサンドラはいなかった。

 いつの間に逃走した? そんな気配がしなかったのに......。

 自分で逃げれる状態ではなかったはずなのに。


 逃げられたのなら、仕方がないか......。後で悪魔のクロに言うとして問題は目の前にいるこの警察官だ。

 このまま戦闘になるかもしれないが、疲労感で今にも意識が落ちそうな状態のため、気を強く持ち目の前の警察官と戦う準備をしていた。


 青奈:ストップよ!!


 黄華:まだ、戦えるよ僕は......。


 青奈:あなたが思っている以上に疲労してるわよ。同じ身体なんだから、それくらいわかるわ。あの悪魔のことは一旦、頭の片隅にでも追いやって退却するわよ!!


 黄華:はぁ〜。了解!!



「じゃあ、さようなら。おまわりさん!!」


【ホッパー】を装填し、空中に等間隔に足場を作り退却した。






 予想以上に遠くにいたことがわかり宿泊施設の近くに着くことには夜になってしまっていた。

 木々に隠れながら変身解除し、歩いていると広場に人が集まっていた。


 後ろから草花が不自然に動いたのを感じた数名の生徒が振り向くと私と目が合い、驚いていた。


 数名の生徒につられてみんな見てさらに驚き、密集した人混みの中から影が2つ抜き出た。

 その2つは橋間すずと鈴木綾だった。


 咄嗟のことでそのまま抱きつかれながら地面に倒れた。

 2人は大声で泣きながら抱きつかれ身動きが取れずにいた。


「「ううううー......。良かった......」」


 もしかしたら、死んでいた状態かもしれない。2人につられて灯も我慢していたのが弾け、涙が止まらなかった。青奈ちゃんや黄ちゃんがいて安心していたがそれでも涙を抑えることができなかった。

 次第に泣き止み、3人は見つめ合い、微笑み合う。


 話によせば、緋山さんは私より30分前に同僚の緑川さんに助けられており、今ベットで療養しているらしい。



 で、私はというと自分の部屋にいて後ろからクロに抱きつかれていた。

「良かった、心配したんだから......」


「ごめん......。でも、無事だったからいいじゃん......」


「そういうことじゃないの......。心配するのは当たり前でしょう!!」


「あとさ......。ごめん。カサンドラって悪魔と取り逃したこと......」


「良いわよ、また見つければ良いから!!」


 2人はたわいの無い会話を続けた。






「全く、あんなに威勢張っていたのに無様ですね。僕がいなかったらクロさんに封印されていましたよ」



「うるせぇ......。サンキュー、ヴィルスト......」


 灰色の紳士服を着て、左手にステッキを持っている上品なお年を召した紳士がいた。











 そこから、何事もなく帰路に着いた。私は病院での検査などから13日の早朝にクロと一緒に山を降りた。


 病院には行かず、そのまま家で検査受けることにした。

 璃子さんの実験室には病院以上に精密な検査が可能。傷が多少、あるだけで特に問題なかったそうだ。

 私は、回収したソドールと無色透明なマガジンを璃子さんに渡した。

 一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに冷静になり2つを受け取ってくれた。


「そっかーー全部抹消したと思ったけど。データをサルベージされたのかな......。ごめんなさい」


 璃子さんは昔、私がいた実験施設で研究員として所属していた。

 在籍していたのは5年くらいでその後は隠れるように過ごしていたところ私とクロが見つけた。

 元々、璃子さんはソドールを兵器としての価値を見つけ、軍事兵器として研究していた。

 しかし、組織の理念はあくまで人間と人間以上にすることを掲げており、璃子さんと対立していた。

 そして、ソドールの人体実験から5年が経った時、璃子さんは研究データを持って姿を消した。

 もちろん、実験施設にあるデータを全て、消してから......。





「でも、これでソドールを倒す以外の方法が見つかりましたし。敵が使ってきたら奪えば良いんです!!」



「灯......。悪魔がこれを使えたってことは今、あなたが持ってる物も相手は使えるってことだよ。奪われたら目的が果たせなくなるのよ......」


 確かに、同じようにソドールの力を使えるのなら、当然、私たちが持っているソドールの

 能力が宿っているマガジンも狙われる可能性は上がる。自身の力に別の攻撃手段が身につけば戦闘の幅が増える。

 この半年、私たちがソドール相手にそうしてきたように・・・・・・


「でも、多少のリスクは想定しています」


 懐から出した【スパイダー】のマガジンを見つめながら璃子さんに話した。

「璃子さんが作ってくれたことでソドールの回収が早くできました。この力を悪のために使わせません!! それに、みんなの魂が残っているこれをみすみす奪われることは絶対にさせません。奪われたら、奪いかいします!!!」


 少しの間があったが、不意に璃子さんが笑ってくれた。


「変わったね......。灯!!!」


「みんな言ってるますけど、私は変わっていませんよ。少し、前向きになっただけです!!」


「それとこれ......」

 璃子さんとクロの前に出したのは注射器。

 クワガタ型の成分を採取したのとは違う注射器。


「悪魔には逃げられましたけど、試しに刺したら成分が採取できました。何かの役に立ててください!!」



 璃子さんにカサンドラの成分を渡したと同時に実験室が突如、青く染まった。

 部屋の入り口に備え付けられている警報器が作動し、部屋中に鳴り響く。

 全員、耳を押さえながらモニターに向かった。防犯システムが作動したのだ。

 防犯システムには段階的に設定している。


 レベル1(小):警報器が青く鳴る

 この状態だと外の玄関の入り口に誰かが勢い良く駆けてくる状態で扉を叩いたり、ドアノブを回し続けるなどで作動する。


 レベル2(中):警報器が黄く鳴る

 なんとかして強引に中に入った不届き者を各場所に設置している警備ドローンが向けへ撃つ。


 レベル3(強):警報器が赤く鳴る。

 最大レベル。この状態は未曾有の災害や敵であるソドール、悪魔達がここを攻めてきた時に発動する。

 このレベルになると取れる選択肢は2つ。

 ①研究室と隣の実験場が家から切り離され地下からの脱出。

 ②家ごと爆破。証拠は残さないための処置。爆破と同時に膨大なデータも完全削除され、

 永遠に闇に葬られる。


 今回は、青だったのでそこまで警戒する必要はなかったが、念の為3人でモニターを見ると

 坂本零冶(さかもとれいじ)が勢い良くドアを叩いていた。


 3人で顔を見ながら、オフィスに向かった。


 クロはいつの間にかメイド服になっていた。

 今回のメイド服は黒墨の着物ベースの和風なメイド服だった。容姿や髪型もメイド服に合うように変化していた。


 クロがカギを開けると勢い良く入ってきた男がいた。

「姫いるか......」


 普段の冷静さが全くなく妙に慌てていた零冶が私を探していた。


「どうかしたんですか??」


 私を見るなり腕を掴みそのまま連れ去られた。



「えぇ......。ちょっと......」



「ごめんーー緊急事態だ、一緒に来てくれ!!」




「クロォォオオオオオオオオォ」


 その言葉を最後に天織灯は姿を消した。

 残った2人は互いにお互いの顔を見てから正面に戻した


「「嘘でしょう!?」」


 普段の声量で2人は言葉を発した。



19話現在、灯が使えるソドール能力。

No.25 カメラ 黄茶色

No.33 ホッパー 青ピンク色

No.35 スパイダー 赤紫色

No.47 シャーク 青水色

No.48 ボーン 茶橙色

No.52 ダイヤモンド 水白色

No.53 ミラー ピンク赤色

No.56 ラッキー 茶黄緑色

No.59 アイヴィー 緑黄緑色


new

No.37 ??? ???色

No.14 ライオン ???色


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