17話 死守しろ!! 自分の身体 そして林間学校 2日目
確認したが、男子生徒がいる2階から4階に移動する階段は屈強な先生達が仁王立ちして立ちはだかっていた。
非常階段の扉は夕方までは閉まっていたが、さっき、確認した所こじ開けられていた。
先生達に言うことできたが、もうすぐ女子のお風呂の時間。きっと例の対象者はこの機会を逃さない。
そう思い、引率で一緒にきたクロと罠を張る事にした。
使用するのはNo.25とNo.53の2つ。
作戦を実行する前にまずはNo.25の説明をしよう。
No.25は【カメラ】という能力。ややこしいやり方で1回引き金を引くと四角型のドローンが3機出現する。
そのドローンに対象物に向かってシャッターをきるとドローンが一定時間撮った物になる。
これは物でも、人物でも対象になる。ただし、あくまでその時の状態のものを撮るだけで別の場所に動かすことはできない。その場所に留まる。
例えば、ペットボトルが2つあるとする。1つは本物。もう1つは見た目は本物と同じ中身がいっぱい水。
本物の方を飲むと当然、中身は減る。だが、【カメラ】で撮ったペットボトルを飲みと中身は減らない状態になる。
3機別々に撮ることが可能で3つのアイテムが使用できる。この能力は対象を撮ることも可能だが、録音機能も付いている。録画時間に制限はなくいつでもその音が流せる。
今回は靴の音を録音し、ソドールを3階に誘き寄せる事にする。
次に使うのがNo.53【ミラー】
こいつを撃つと、人の身長が全部見える鏡が出現し、中に入ることができる。中は【ミラー】が映したものと同じ世界になっている。【ミラー】の中は入ってくる人以外は居らず、左右が逆になっている。
【ミラー】の中に入れられるのは最大で5分となっており、それを過ぎると中の世界が徐々に縮小し世界に押し潰されてしまう。その後、出ることはできるが捻れた状態で出てくる。試しに中身が入っている缶を5分以上、【ミラー】の世界に入れたら捻れた状態で押し出されたところてんのように排出されていた。
【ミラー】の中に入り階段を降りている音が止み、気が一瞬でも抜けた時が攻撃開始。
出るタイミングを待つために壁にもたれかかった状態で待っていると外から驚いた声が聞こえた。
正直、そこまで怯えた声を上げるなんて、ひどい。
まるで、お化けでも見たかのように。
早速、出来きましたか。なら、攻撃しますか。『ミラー』から出た私はクワガタ型のソドールを見上げたがクワガタの顔をしているため人間のように表情を見ることは少し困難だがなぜか怯えたような顔が想像できた。
まぁ、良いか!!
そう思い左足でクワガタ型のソドールの横腹を蹴り、外の向かって吹っ飛ばした。
上から何やら逆さまに落ちてくる謎の物体が1つ。灯が立てた作戦がうまくいったようだ。
私はソドールが逃げないようにするために生捕りにすることにし、【アイヴィー】を使って捕まえる事にする。捕縛できるだけではなく、敵の力を吸い取れてので『アイヴィー』を選んだ。
ソドールの巻き付いたことで宙にぶら下がっている状態にのソドールが滑稽だった。
(こんなにうまく行くなんて思わなかった......)
同時期に灯とクロは同じことを思った。
「貴方がお風呂場に行くことなんて最初から分かりきった事ですから」
階段を降りながら淡々と話す女に見覚えがあった。
「テメェー、アノトキノオンナカイトウ。オマエユウレイダッタノカ。イヤ、ユウレイダッタラコウゲキハアタラナイハズ」
「幽霊? なんのこと??」
「トボケルナ。カガミミテイタラキュウニデテキヤガッテ。メチャメチャコワカッタンダゾ」
「あぁ、それであんな表情していたのか」
なるほど、【ミラー】に入ると外には自分の周りに誰もいないのに急に人が現れる現象になるのか。
【ミラー】を使うときは注意しないと・・・・
「私はこれでも狙った獲物は逃さない怪盗だけど......。それとは別に怪盗である前に1人の女としてうら若き女子生徒の裸を死守するためにここに参上したわ」
「フザケルナーーーーーーーーー」
体力を随分、持っていったハズなのに自力で脱出した。両腕の付いている刃で蔦を切り脱出したと考えられる。
「オレハオンナブロヲノゾクンダァァァァーーーーーー」
「何たる執念でスケベ根性」
「敵ながら天晴れ!!」
「関心しないでよ。あまりに非常識だわ......」
「今の私達よりよっぽど、欲望に忠実ってとこかな」
「アマオリサンノハダカヲミズニオワレナイインンダ」
「はぁ......。は、はぁぁぁぁぁ!?」
こいつ、まさか私のは、裸を見るためにこんなことを......。
青奈:処刑する......
黄華:一旦、お前は落ち着け
青奈:こいつ、灯ちゃんの神に等しい御神体を見るなど万死にあたいするわ
黄華:間接的に僕らの裸も見られるね
灯:正直、引いてるよ......。そんなに私の姿が見たいの??
黄華:男はそういうものだ
互いに臨戦態勢になりながら、しばし睨み合い。
そしてーーーーーー
私は狼狽しながら言った。
「あああああああ、貴方の成分頂きます!! 的確かつ迅速的に貴方から成分を頂き、その子の裸は私が死守します!!」
世界一くだらない戦いの火蓋が切って落とされた。
銃で攻撃しながら距離を詰めていく。相手の刃は脅威だが当たらなければどうってことはない。
振り下ろすタイミング。攻撃後の追加攻撃。それを見極めながら回避していった。
腕だけではなく、足を使い、一旦両足を沈めつつ、その状態を回し両足で飛び上がった。
それを空中で下半身を回しながら蹴りを右、左と繰り返してながら攻撃してきた。
後ろに回りながら回避したり、しゃがんだりと回避。時には真上に飛び上がった。身を屈め、腕を左右やや後ろに広げながらバランスを取り、クワガタ型ソドールを威嚇した。防戦一方ではなく銃を撃ちソドールに命中させていた。
以前、戦った時より攻撃が鋭い。【アイヴィー】に力を吸われているのでほぼ気力だけで動いているだけなのに力が上がっている。
性欲ってすごいのな......。
などと考えているとソドールがこちらに向けって急発進しホールドしにかかってきた。
「コレデオワリダ」
確かに、あの腕に捕まり力を入れられたら潰れてしまう。
抱きつこうとしたソドールを素早く頭を下げ、前屈みになりながら相手の腕をかわす。
曲げた両足を伸ばし、伸びた身体はそのまま相手の顎の下めがけて頭突きで攻撃した。
その反動でクワガタ型のソドールはよろめき、すかさず私は男の急所の1つである股間を狙って蹴りをお見舞いした。
いくらソドールの姿になっていても男。効果抜群だった。
あの場所は、強い衝撃でなくともかなりのダメージを受ける箇所であり、こいつには少しお灸をそえなくてはいけない気がしたため、攻撃した。
その結果、あまりの苦痛で内股になりながら前屈みになり、そのままもう一度、顎下めがけて下から上に腕を押し上げた。顎を突き出しながら後ろへのけ反りながらバランスが崩れ後方に大きく倒れる。腕を前に伸ばしながらその場で倒れたクワガタ型ソドール。顎に強い衝撃が当たったことでクワガタ型ソドールは軽い脳震盪を起こした。
ダウンしており成分を回収するのは簡単だった。
成分を抜けれたソドールは元の人間に戻りそのまま大の字で倒れていた。
「クロ、後はお願い......」
「了解!! ここからは先生として対応するわ。灯は風呂に入りなさい」
「そうさせてもらうね......」
風呂に入り、そのまま部屋に行き泥のように深い眠りについた。
2日目ーーーー。
非常階段の扉には警察が良く使用している黄色のテープ。いわゆる、規制線だ。ここから先は入らないで下さいと立ち入り禁止の設定がされている場所とそうではない場所との境界線みたいなテープ。私が勢い良く吹っ飛ばしたところの非常階段が壊れており、扉は地面に落ちていた。
4階はこじ開けられた後しかなかったが危険だと判断され同じく規制線が貼られていた。
2日目のウォークラリーが始まる前に昨日の夜の騒動の説明があった。
非常階段の扉が腐りかけており誤って生徒の1人が扉に触りそのまま落ちたということになっている。幸いにも生徒は軽傷で済んだが念の為、今回のウィークラリーは不参加になった。
色々、話があったがいよいよウィークラリーが開始された。
・5つのコースから1つ選ぶ。
・班は4人1組。
・チェックポイントは全部で6つ。
・チェックポイントの3つ目が中間地点であり、来たコース以外の4つのコースを選び進みスタート地点に戻る。
・チェックポイントにはスタンプがあるためそれを配布したしおりの最終ページに押印する。
・特に制限時間はないが夕方6時までにはスタート地点に戻る。
私の班は
①柿崎透(かきざきとおる)
②鈴木綾(すずきあや)
③柳照明(やなぎてるあき)
④そして私、天織灯(あまおりあかり)
以上、4名である。班のメンバーは完全にランダム。大ホールに集まりクラスごとにくじを引き一致するアルファベットが同じメンバーになる。
メンバーも決まったことなので次はコース選びだ。正直、どこを行っても変わらないと思い、今は5月だから五のコースになった。
前の班が出発して10分後、いよいよ私たちの班が出発した。
「山道は何が起きるかわかない。俺が先陣を切って、誘導する!!」
柳さんがサムズアップしながら意気揚々と私達の前を歩いていた。
「いや、僕が!!」
柿崎さんも前に出て、お互いの肩に当たりながら2人競う感じで歩いていた。
2人はここが危険な場所でも思っているのだろうか?
山道とはいえ、今私たちがいる場所はウィークラリー用に整備された道。周りは森に覆われているが歩く場所は周囲よりも少し低く凹んでおり草花が取り除かれている地面になっている。
それに左右に存在している太い木々にロープが括りつけてあり例え、道に迷ってもロープを辿れば宿泊施設に辿り着けるようになっているため早々危険はない思われる。
「全く、男子は何でこういう時に限ってやる気になるのかな〜」
「見栄を張りたいのかな? アピールとか?」
「それって、天織さんのことじゃない!! 私はそこまで可愛くないし」
「何言ってるんですか!? 鈴木さんの方が可愛いですよ!!」
鈴木綾。山吹色の明るめの髪、ふんわりと膨らんだ髪型。身長160cm位。
普段から明るい性格をしているため男女両方から好かれている。
「そういえば、天織さんとこうしてお話するの何気に初めてだね!!」
「そ、そうですね......」
「少し前は高嶺の花っていうか、本人の前で言うのもアレだけど近寄り難かった印象でさ〜。流石の私も話をするのを躊躇ったくらいだし」
鈴木さんの言う通り。私は今までちゃんとみんなと話をするのが怖かった。間違えて何を言ってしまうのかずっと考えていて自分の殻に閉じこもっていた。
「でも、最近変わったね!! 時々、大人の女性になったり、妙に勝気な性格になったり色々だったけど。最初はみんな、遂に天織さんに彼氏と付き合い始めてはっちゃけたのかって〜。一時期、周りの男子が絶望の渦にいたわよ」
何でも、私が青奈ちゃんや黄ちゃんに変わっている間、その日その日で性格が変わるものだから錯乱しているのか、ストレスか、付き合っている男の趣味で日替わり弁当のようにコロコロ性格を変えているのかなど色々、言われていたらしい。
最後の日替わり弁当っていうのはどうかと思うけど・・・
以前、青奈ちゃんが変に誤解を招くようなことを言ったもんだから妙に、疑心暗鬼な状態が生まれているとのこと。
「でも、心配しないでよ!! 女子の方は天織さんに彼氏がいないことわかっているから!! どっちかって言うと何かに吹っ切れた感じだったから」
「あ、ありがとう!!」
「でぇ、本当に彼氏いないの??」
「いないよ、私はそもそも、恋愛はそこまで......」
話に夢中で3つ目のチェックポイントまで来ており折り返し地点に到着していた。
チェックポイントには急遽、作ったようなテントが設置されており、パイプ椅子に座っている男性と目があった。
「君達が4組最後の班か」
そこにいたのは妙に真面目で正義感が強い、ザ・熱血警察官の印象で私達2年生ではそう思われている緋山燐兎(ひやま れんと)さん。
普段はクールな性格しているのに時々、正義感が強すぎる性格なのか強い激情家の一面があるらしい
(同僚の緑川さんからの情報)
「どうしてここにいるんですか?」
「一応、ここではスタッフとしているわけだから先生たちの手伝いだ」
鈴木さんが躊躇いもなく話した。
「そういえば、お仕事はどうなんですか? 緋山さん〜」
「そんなこと、君たちが気にする必要はない。さぁ、次のコースを選べ!!」
鋭い眼光でこちらに次のコースの地図を渡された。
みんなが悩んでいると私が「四番で」と。
私たちが来た道とは逆方向に歩いてきた生徒達によると、奇数は唯の山道を歩き、偶数には吊り橋が何本も設置されているらしい。
どうせなら、行ったことがない道を行くのも悪くない。
班のみんなも納得し、四のコースに行くことにした。
少し休憩を挟み再び出発した。
「緋山さん〜、行ってきます!!」
鈴木さんが手を振っているのを見て全員で手を振った。
「危険な動物はいないと思うが気をつけろよ」
こちらに軽く手を出しながら忠告してくれた。
四のコースはチェックポイント3の出入り口がすぐ吊り橋になっている。
今この山の中には限られた人しかいない。今回の林間学習の主役の生徒達、引率の先生、施設にいるスタッフ。今回は例外だが警察官もいる。そう、限られた人しかいない。当然、前から人が来たらそれは生徒や先生、スタッフの誰か。
だが、そこにいたのは
「ねぇ〜、あれ何?」
反対の橋の端に男が1人。野生的で乱暴そうな風貌の全身に着こなし、要所に動物の骨が付けられており頭を覆い隠せる骸骨兜は黄色の立髪にこめかみ部分に2本の角が後から付け加えられた様な加工がされている。手には黄色のチェーンソーを持っていた。
「ちょっと、怪しくない? あれ?」
「誰かのコスプレか何かか?」
「どうした? お前達......」
「あぁ、緋山さん! あそこに変な人が......」
「変な人? 確かに変な格好のやつがいるな。誰かが変装して生徒をいたずらするなどの計画は聞いていないが......。お前達はそこに居ろ! 俺が行ってくる!」
緋山さんが私たちの前に出て橋を渡って行った。
「テメェには用はねぇ。後ろにいる奴に用があるんだよぉ」
「なぜ、彼らを......」
「俺の楽しみを奪いやがってテメェは許さないぜぜぜぜえぇぇぇぇっぇ!!!!!!」
怒号が鳴り響いていた。目の前の男は怒りが激しい波のように全身に広がっているのがわかった。そんな様子を見たみんなと肩を小山のように聳え立たせ、唇がプルプル震え出していた。
緋山さんは目の前の男が危険と判断し、左腕に装着していた籠手を左右にスライドさせ、懐に入れていた紅四角形のようなものをスライドした籠手の中央に嵌めた。
『着装』
その言葉で全身が謎の霧に包めれ、紅く燃えながら霧が晴れるとそこには何度も戦った紅警察官の姿がいた。
右肩後ろに収納している一番BOXが開き、中から紅警棒が飛び出し緋山さんの右手に収まるように自動的に移動していた。
「俺は今、機嫌が悪いんだ。どけ!!!!!!!」
「そうはいかない。市民を護るのが我々、警察官の使命だ!!」
熱血おまわりさんと沸騰中の悪魔さんの戦いが始まる。
No.25 カメラ 黄茶色
No.33 ホッパー 青ピンク色
No.35 スパイダー 赤紫色
No.47 シャーク 青水色
No.48 ボーン 茶黄緑色
No.52 ダイヤモンド 水白色
No.53 ミラー ピンク赤色
No.56 ラッキー 茶青色
No.59 アイヴィー 緑黄緑色
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