15話 寝惚けろ!! その身体
警察とは社会の安全や秩序を守る責任を課せられた行政機関。
怪盗とは所有欲や嗜好のために物を盗んだりする人または、奪われた大切なモノを取り返すなどといった自分以外の誰かのために力の限りを過ごす人。
片や市民の安全を守るヒーロー
片や義賊でありながら人々から支持されているアウトロー
目的や信念も違う両者は相容れることのない宿敵同士。
両者は一定距離を保ったまま対峙していた。
荒野の荒くれ者の男達がどちらが早く相手より銃を抜き無力化するかの決闘シーンのように
「前に言ったはずだ。次、会ったときは捕まえると」
「その熱意はすごいですけど......。私、がっつく男が嫌いなの!!」
私は一呼吸置いてから、銃を乱射した。
それを合図に両者は対峙から衝突へと変わった。
「2人とも俺はこの怪盗をやる。2人はソドールを任せる」
紅警察官の仲間があと2人はいるらしいが姿が見えず周りを探してそちらに目が行くと今尚ラグビー選手のタックルのように盾を前に出しながら突進してくる奴にやられると思い、一旦目の前の敵に集中することにした。
敵の女怪盗まであと5歩ぐらいの距離まで詰め、そこから勢いよくジャンプし1回転しながら盾で攻撃を仕掛けた。右手に持っている特殊警棒ではなくなぜ盾で攻撃を仕掛けたのか。
それは、あり得ない攻撃をして相手が動揺し、その拍子に隙が生まれる。そこにこの特殊警棒で動きを止める。本来なら、通常の警棒にこのような機能はないが敵が人ではないためこれ位は必要だと改良された。
紅警察官は銃弾を物ともしない姿勢でただ私の方に襲いかかってきた。
あんな闘牛のように突進してきて尚且つあれを直撃したら流石に無事じゃ済まない。
突進してくるやつを止め、怯んでいる隙に攻撃を仕掛ける。
そう考えながら、【ダイヤモンド】を装填し自分の目の前にダイヤモンドの柱を作るための準備をしていた。
あらかじめ、作ってしまうと左右に移動され攻撃をされる危険性があるため至近距離で銃弾を撃つしかない。
突進してきた紅警察官は私とも距離が大体、5歩ぐらいのところでジャンプし1回転しながらなぜか盾を前に突き出し拳のように扱っていた。
そういう攻撃をしてくるのは予想していた。変な行動をして私を動揺した後右手で持ってる武器で私に攻撃を仕掛けるとか......。
なら、こちらは硬い柱で迎え撃つまでと思い銃弾を撃つ瞬間......。
青奈:避けて!!!!
青奈に言われたと同時に左手に違和感があった。先程まで持っていたクィーンズブラスターASKが私の頭上に放物線を描くように移動し右側に落ちてきた。
一瞬、何が起こったのかわからずだったが相手はこちらを待ってくれず裁紅の短剣でガードしたが体格差や推進力などの問題で私は吹っ飛んでいた。ビルに直撃ではなく地面に倒れただけで済んだ。
もし、ビルの壁に直撃していたら背中を中心に電気マッサージのように全身に電流が駆け巡って動けなかった。
電気もとい電流にはあまり良い思い出はない。
灯:何があったの??
青奈:左のビルの屋上にスナイパーがいるわ!!
黄華:よくわかったな?
青奈:まぁ。貴方達より少しだけ殺気や気配を感じやすいの
黄華:で、どうするよ。これから......
青奈:一旦、退却よ!!
灯・黄華:「「なんでぇぇぇ!!!」」
青奈:貴方達ねーー敵の攻撃が未知数部分が多く、遠くからスナイパーに狙撃されているのよ。それにスナイパーが正確に銃だけを撃ったところを見ると相当腕が立つわ。身体を狙われなかったのは運が良かったのね。兎に角、スナイパーの銃弾を全て避け、あの紅警察官の攻撃を避けながら攻撃をするのはあまりに無謀よ!!
黄華:だったら僕が行くよ!! その位の芸当、やってやるよ!! 完全回避特化、敵の攻撃なんて避けまくってみせる!! ソドールと悪魔はどうするのさ......
青奈:それならあの2体、撤退し始めてるわよ!! どうやら、向こうもこの状況はあまり宜しくないみたいだし......。それにーーあのソドールもしかしたらまたすぐに会えると思うし......。
灯:わかったよ!! 今回はここまでね......
うつ伏せの状態の私にゆっくりこちらに歩みを進めている紅警察官。
遂に超至近距離まで追い詰められた。
右手に持っていた武器を右肩に装着されているバックパックにしまい怪盗を捕獲するために手を伸ばした。
『カメラ』
そう鳴り響いた後自分の周囲が煙に包まれた。
嫌な予感がし、また手を伸ばしたがそこには誰もいなかった。
「見えるか??」
「こっちはダメだ。煙が邪魔で何も見えない。適当に撃ってお前らに当たったら洒落にならないし」
「ちょっと、道路の方に行ってみます!!」
すぐに煙は晴れ辺りを見渡したが先程まで居た怪盗やソドール達が居なくなっていた。
「先輩!!」
道路までソドール達を追いかけに行ったが見失ったとのこと。
「また、次回だな」
緑警察官は装備していたスナイパーライフルを2つに分解しサイレンサーのような長い棒はバックパックに片手銃は右脚のホルスターにしまった。
灰警察官は装備していたダガーを両足に付けれあるナイフ用のホルスターにしまった。
「現場は後続の警官に任せよう!! 撤収するぞ!!」
3人の特殊警官はその場を後にした。
目を覚ますと見慣れた天井だった。
いつもの自分の部屋の自分のベットに私は横になっていた。
外の風景と近くに置いてあった携帯端末で時刻を見てみると深夜2時を回っていたのがわかった。
端末が置いてあった電気スタンドのベース部分に折り畳まれていた紙があった。
中身はクロからで「研究室で待ってる」とただその一文のみだった......。
ものすごい倦怠感が襲ったが何とか立ち上げり部屋を後にした。
黄華:おい!!灯まごごごごご
黄華は何かと言おうとした瞬間、青奈に後ろから口を塞がれそれ以上話せない状態にされた。
青奈の表情は恍惚としておりうっとりしている目で灯と見ており青奈は幸福感に満ちていた。
そんな2人に目もくれず進み実験室に入った。
「クロいる??」
研究室には誰もおらず静寂が響いていた。研究室とは対照的に隣の実験場は何かが落ちる音がした。
それも1つではなく間髪入れずに次々、かなりの重量がある物が地面に落ちていく音が鳴り響いた。
ドアを少し開け、中を覗いてみると金属・金属・金属、金属の破片の山がクロの周りに散らばっていた。
所々、亀裂が入っているロボット?達が起き上がり一斉にクロの周りを取り囲み上左右逃げれない状態にして押さえ込もうとしていた。
しかし、クロは自分の忍者刀
モニターには100とデカデカと表示されておりそれ以上増えることはなかった。
「ロボットにAIを搭載させ、私の弱点の動きを学習し無尽蔵に攻撃してくるように設定したわ。お陰でさっきまでずっとロボット達と乱戦してたわ」
今回、クロがやったトレーニングモードは「無双」と呼ばれるもので大多数(100体)にわたって群がるロボットが襲いかかってきて単身でそれらを倒すトレーニング。
璃子さんが多種多様なトレーニングモードを用意してくれたが試運転第1回でやめた。最初はただ向かってくるだけのもの。
それが段々、学習し敵の弱点や攻撃の癖を見抜きそれに合わせた行動をとってくる。
さらに、周りの落ちているロボットの部品を武器にし、打撃や投擲をしてくる。
これを四方八方にしてくるため、クリアを断念した。そもそも、これが完成した時にはソドールは単体でしか出現せずまだ変態したばかりなのか動きも単調で成分も回収しやすかった。
しかし、ここ最近、複数で攻撃を仕掛けてきたり、悪魔と手を組んできたり、それに......
「警察も中々、侮れないわね。灯!!」
こちらに振り向いたクロは物凄い量の汗をかきながらこちらへ歩いてきた。
「もう、平気??」
「うん!!」
「はい。これ......」
扉の近くにかかっていたタオルをクロに渡した。
「ありがとう!!」
警察があんな物を開発していたとは思いも寄らなかった。
「まぁ、ソドールが巷で出現し一般人が被害に遭ってるんだから。市民を守る警察が何かした対抗策を準備するのも納得がいくし......」
私が紅警察官と小衝突している間にクロは灰の警察官と悪魔、ソドールの3つ巴?いや、4つ巴?
まぁ、どっちでも良いか。つまり、乱戦していたことが重要。
両手にダガーを携え攻撃を仕掛けてきた。時々、ダガーを合体させ手裏剣のように投げ、追尾ミサイルのように当たるまで標的を狙っていたらしい。ダガーが全部で4本あるらしく2本をミサイルにしている間残った2本で至近距離の攻撃をする。
「黄色ーーカサンドラは楽しそうだったけどね。でも、流石に自分が育てたソドールがやられると思い離脱したわね」
「育てる??」
「カサンドラは7色の悪魔の中で1・2と争う戦闘狂。自分の好敵手を探し、育て、戦うそして勝つ。この一連の流れが彼は好きらしい。だから、いくら目の前に良さそうな敵がいても途中で自分の流れを変えてまでやる必要はないのモットーでやってるの。カサンドラがあのクワガタ型に勝ったら、次を探す間に警察との再決闘を行うはず」
「悪魔にも色々いるんだね......」
「私達悪魔は人間と同じで自分の決めた目標のために行動するの。あえていうなら欲望に忠実ってところ。ただ、人間とは生きている時間が圧倒的に多いからそれらにかける時間も膨大なの。その目標を達成できないと自分のプライドが許さないみたいな感じで何をしでかすかわかったもんじゃないわ。過去に他の悪魔が自分の目標を達成できずヤケをおこし現世の村人全員を殺害した。もちろん、その悪魔は他の悪魔が討伐したわ」
「もしかして、クロも......。あの悪魔みたいに......」
「ストレス解消にこのトレーニングモードを利用したの。爽快感がたまらないわ。これから、どんどんやっていこう!!」
「毎回、あなたの癇癪のためにロボット達が大破したら何もかも足りなくなるわ。特に金や資材などがね」
璃子さんが少し嫌味な感じで実験場に入ってきた。
「メイドの時みたく大人しくしていれば良いのに」
「今の私はメイドじゃなく、怪盗よ。派手に行かないと!!」
「それはそうとさっきクロが言って通り、警察であんなものができてるなんて驚いたわ。こっちで探ってみるわ」
「はい!!」
璃子さんがパッンと一回だけの1拍子の拍手した。
「今日はもうおしまい。2人とも明日も学校でしょう??」
少し間があったが璃子さんが苦笑して私に話した。
「それと灯......」
「うん? 何?」
「あなた、なんで下着だけなの?」
「えぇ!?」
璃子さんから衝撃的な告白をされ、状況をよく飲み込めずに表情が固まっていた。
恐る恐る自分の今の姿を見てみると確かに下着しか身に着けていなかった。
いくら家の中でもここまでくるのに堂々と下着で歩いたいたことを徐々に思い出し、顔が段々と赤くなってきた。
「いやぁぁぁぁっぁぁ!!」
恥ずかしくなってきて身を屈めていた。
「それって自ら進んでやってるもんだと思って声に出さなかったけどーー気が付いてなかっただけだったとは」
「違うの、違うのよ!! 起きたばかりだったから寝ぼけていたの」
「うーーーーーー!」
灯:てか、2人は知っていたでしょう!!
黄華:うん......。だってこいつが
青奈:灯ちゃんの下着姿で堂々と歩く、初めて頂きました!!
灯:忘れなさい!!
青奈・黄華:「無理!!!」「無理だね」
黄華:同じ身体、同じ脳だから自然と思い出すかもしれないし......。まぁ、一応、僕がやったわけじゃないから少しはマシだけど......
青奈:忘れるなんてそんなこと出来るわけないじゃない。全て私しの脳内メモリに焼き付いているわ。もっと詳しく言うなら灯ちゃんの身体の各部位をタグ付きフォルダで保存してあるわ。
黄華:お前は灯のことになると急にバカになるな!!
私の黒歴史が1つ増えた......。
「水着と大差ないんだから今のうちに慣れときなよ!!」
などとほざいたクロに向かってチョップし、クロの頭部に直下した。
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