第19話 心が満たされている
おばあさんが店に来る日がやってきた。
「じゃあ、いってくるにゃん」
「必ず、お孫さんを連れてきてくださいね」
「わかってるにゃん」
ルーカスから聞いて、ジェースとレオはおばあさんの家にお孫さんを迎えにいった。
計画スタートです!!
しばらくすると、おばあさんが店にやってきた。
「こんにちは」
「いらしゃいませ、お待ちしておりました」
ルーカスが出迎えた。
「こちらにどうぞ」
ルーカスはカフェに案内した。
「わたしは、注文していた服をとりにきただけです」
「わかっています。今もってきますのでここでお待ちください」
「はい」
そういうと、おばあさんは椅子に座ってくれた。
――――
『ジェースとレオ編』
おばあさんが家をでたあと、ジェースとレオはドアをトントンとノックした。
でも、お孫さんは出てくる気配がない。
ジェースとレオは中にいる彼女に聞こえるように演技をした。
「大丈夫か?」
「水をくれ~」
「このままでは死んでしまう~だれか水をください~」
すると、その声を聞いていたお孫さんがドアをあけてくれた。
ジェースとレオは顔を見合わせてニヤリとした。
「すみません、どうかお水をいただけませんか?」
「はい、どうぞ」
彼女は家に入れてくれた。
そして、テーブルをつたいながら上手にコップに水を入れてもってきてくれた。
レオはお水を飲み、元気になったふりをした。
「ありがとうございます。元気になりました」
「それはよかったです」
「お礼にわたしたちのカフェにご招待いたします」
「え? いえ、結構です」
「そんなこといわずに……」
「いえ、結構です」
彼女は断り続けた。
「それでは気がすみません。わたしたちが責任をもってあなたをお連れします」
そういうと、ジェースが彼女を抱え外にでた。
「あの~やめてください」
彼女は久しぶりに外にでて太陽の光を浴びた。
その顔は嬉しそうに見えた。
「よし、いきますよ~」
「え? ちょっと……」
レオは部屋にあった車いすを外に出し、ジェースは彼女を車いすにのせた。
ジェースとレオは、急いでカフェに向かった。
「大丈夫ですか?」
「はい、風が気持ちいいです」
「それはよかったです」
はじめは怖がっていた彼女も、うれしそうな表情になっていた。
――――
ジェースとレオがお孫さんを連れて店にきた。
「よかった~」
「ごめん、遅くなったにゃん」
「いらっしゃいませ」
お孫さんは緊張していた。
「こちらにどうぞ」
ルーカスが案内した。
ジェースが車いすを押している。
お孫さんをみたおばあさんは驚いた。
「ミサちゃん!」
その声を聞いて、お孫さんも驚いている。
「おばあちゃん! なんでここに?」
おばあさんは外にでたお孫さんをみて泣いていた。
彼女はミサさんというらしい。
ミサさんをおばあさんと向かいあうように案内した。
「いらっしゃいませ。今日はご来店ありがとうございます」
「いえ」
「おふたりにお食事をご用意したので楽しんでください」
「あ、はい」
リエルが、厨房から食事を運んできた。
「オムライスになります」
ふたりは戸惑っていた。
実は、ルーカスが近所の人からこんな話を聞いていた。
「ミサちゃんはオムライスが大好きでね~誕生日には決まってオムライスだったよ。でも、あの日からいっさい食べなくなったっていってたねえ~」
「あの日って?」
「ご両親がなくなった日からだよ」
「そうなんですか」
どうなんだろう。
食べてくれるかな?
ミサさんはスプーンをもってオムライスをひとくち、口に運んだ。
ぱくっ!
ミサさんの目から涙がこぼれだした。
でも、ミサさんはまたオムライスを口に運んだ。
泣きながら食べ続けた。
「おいっ……しいっ……」
おばあさんもおいしそうにオムライスを食べた。
「食事ってこんなにおいしかったんだね、おばあちゃん」
「ああ、そうだねミサちゃん」
気づくと、ふたりはキラキラした笑顔になっていた。
「こちらおばあさんからです」
ルーカスはおばあさんに頼まれていた服をミサさんの手に渡した。
ミサさんは服を広げた。
「ピンクの花柄ですか?」
「え? 見えるにゃん?」
「こら、レオ!」
「あ、ごめん」
「ふふっ。わたし……はっきりとは見えませんが、ぼんやりとは見えるんです」
「そうなんですか」
おばあさんが声をあげた。
「これは……」
「はい、サイズはミサさんにピッタリですよ」
「どういうことですか?」
「すみません、わたしが直接ミサさんを見てサイズを確認させてもらいました」
「そ、そんなことまでしてくれて……ありがとうございます」
ふたりは何度も『ありがとう』と言っていた。
「また、来てもいいですか?」
「もちろんです」
「では、おばあちゃんとふたりでまた来ます」
ミサさんが素敵な笑顔でいってくれた。
「お待ちしております」
みんなで答えた。
そして、ルーカスがふたりを家まで送った。
それから、何日かして本当にきてくれた。
「いらっしゃいませ」
「本当に来ちゃいました」
「はい、嬉しいです」
「ルーカスさん!」
わたしがルーカスを呼ぶとミサさんに気づき、すぐにきてくれた。
「こんにちは」
ルーカスはそういうと、ミサさんをお姫さま抱っこしてカフェに案内した。
それを見ていたお客たちはキャーキャー騒いでいた。
そりゃあ、そうだよ。
ルーカスにお姫さま抱っこだよ。
女性があこがれるお姫さま抱っこだよ。
いとも簡単にやってしまうところが憎いね~
それを見たジェースがおばあさんの手をとり歩いた。
この兄弟ただものではない。
素敵すぎる!
そしてそれをみたレオが車いすをもった。
そして、ディアムが席の用意をした。
すごい、連携だ。
みんなかっこよすぎる。
厨房にいたリエルも手を休め、お水とメニュー表を席までもってきた。
普段近くでみられない、ディアムやリエルがでてきたものだから店の中のキャーキャーがしばらくやまなかった。
この世界でもまれにみるイケメン揃いなんだな~
そんなイケメンに囲まれている、わたしは幸せ者なのだー
そして、こんな優しい人たちと一緒にいられて、幸せだー
だからわたしは今、心が満たされているのだー
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