第18話 ルーカスの優しさ
また今日も1日が始まります。
「さあ、今日もお店開店です」
みんな、いつもと変わらない感じで安心した。
ルーカスも変わらない。
よかったー
ルーカスはお客さまの相手をしている。
わたしも入口でブティックにきたお客さまなのか、カフェにきたお客さまなのかを確認していた。
「いらっしゃいませ」
「ブティックをご覧になりますか? それともカフェに行かれますか?」
「ああ~ どっちも行きたいけど、まずはカフェに行きます」
だいたいがこんな返事がかえってくる。
あまり時間がないお客さまは、ブティックだけで済ませて帰るようだ。
そんなある日、おばあさんがやってきました。
足が悪いようで、杖をついていた。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「こんにちは。ブティックをご覧になりますか? それとも……」
「はい」
「あ、ではこちらになります」
わたしはルーカスに声をかけた。
「ルーカスさん、このお客さまお願いします」
「はい、わかりました」
そういうと、ルーカスはそのおばあさんの手をとり杖替わりのように手を引いて店の中を案内していた。
こういう優しいところがかっこいいんだよな~
わたしなんて、杖もってるからいいかなって思っちゃった。
おばあさんは、気に入った服があったようだ。
「これをくださいな。でもサイズをワンサイズ大きいものにしてください」
おばあさんは大きいサイズを注文しているようだ。
「お客さま。なぜ、大きいサイズがいいのか聞いてもよろしいですか?」
「はい。それはわたしの孫に買ってあげたいんです」
「お孫さんにですか?」
「はい。でも孫はわたしよりちょっとからだが大きいので……」
「そうですか」
「すみません、へんなこといって」
「いえ。わかりました」
でも、なぜお孫さんは自分でこないのかな~
わたしは気になっていた。
ルーカスは納得したのか?
「お客さま、今は在庫がありませんので3日お時間いただけますか?」
「はい、わかりました」
「家の場所を教えていただければ、お届けいたしますけど……」
「いえ、足の運動のために歩いたほうがいいのでわたしがきます」
「わかりました。では、3日後にお待ちしております」
ルーカスは頭をさげてお客さまを送りだしていた。
すると、ルーカスが突然急ぎだした。
「まい、わたしはちょっとでかけてくる」
「あ、はい」
「ここを少しお願いしてもいいか?」
「わかりました、でもどこに?」
「帰ったら話す」
そういうと急いで出て行ってしまった。
わたしひとりでこのお店にいてもお客は喜ばないな~
考えろ~
よし、決めた!
「ジェースさん、ちょっとブティックの方手伝ってもらえますか?」
「いいよ、まいちゃんの頼みなら」
「ディアムさんは厨房で手があいたときに、ウエイターやってもらえますか?」
「おれがか?」
「はい、お願いします」
「ああ、わかったやってみるよ」
「レオお願いね」
「わかったにゃん」
よし、これでお客さまは喜ぶだろう。
「キャアー! いつも厨房にいる人じゃない?」
「そうだよー! 近くで見れてうれしい~」
やぱっり、ディアムで正解だ。
顔がいいもんね。
これで、少し料理がでてくるのが遅くても大丈夫だろう。
リエルが忙しくなったらわたしが手伝おう。
ブティックの方もジェースがうまくふるまっている。
「お客さまは、この服もお似合いですよ~」
「そうかな~ じゃあ、これも買っちゃおうかな~」
やばい、この調子だと売りすぎてルーカスが大変になっちゃうよ。
ん……。
思いついた!
これって、ルーカスはもう衣装を作ることだけに専念してもらってジェースを売り場に配置しよう。
ルーカスが衣装を作っている姿をお店で披露すれば……。
【妄想中】
♪~ミシンを使うルーカス。
カタカタカタ……
スピーディーにかつ優しく、衣装が作られていく。
まるで女の人を扱うときのように優しい手そして綺麗な指。
布を裁断する姿。
はさみを持つ、綺麗な手。
布は一気に気持ちよく切られる。
シャァ!
見ているお客はうっとり……♪
これはお店の売り上げにもつながる~
ってことは……、厨房にひとりイケメンを増やしたいところだな。
今日、みんなに相談してみよう。
「ただいま」
わたしがいつものように妄想していると、ルーカスが戻ってきた。
「ルーカスさん!」
「わるかったな」
「いえ、ジェースさんに入ってもらいました」
「ジェースわるい」
「いいよ」
「でも、ルーカスさんどこにいってたんですか?」
「あとで、みんなで話そう」
「はい。わかりました」
この日は無事に最後のお客さまを送りだしました。
「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」
――――
夕食の時、ルーカスがおばあさんの話をみんなにした。
「今日は悪かったな、おれのせいで迷惑をかけてしまった」
「大丈夫だにゃん」
「実は……今日お店におばあさんがきたんだ。そして気に入った服を注文してくれた。でも買うのはワンサイズ大きいものを注文したいと」
「なんでだ?」
「そうなんだよ。それで理由をきいたんだ、なっ! まい」
「はい。そしたらそのおばあさんはお孫さんに買ってあげたいっといっていました」
「そうか。なら自分でくればいいのに」
「そうなんだ。だから気になって……でも、なんかこれ以上聞いてはいけないような気がして」
「それでどうしたんだ」
「おれはおばあさんのあとをつけた」
「それで……」
「はい、そうなんです」
「わたしも気になりました。どうして自分でこないのかと」
「そうなんだ。それで確認したいと思って3日、時間もらったんだ」
「在庫あるのにないっていってたからおかしいな~とは思いましたけど」
すごいな、それであとをつけたのか~
「それでどうでしたか?」
「お孫さんはどうやら目がみえないようなんだ」
「え?」
「近所の人に話を聞いたところ、最近はまったく家から出ないらしい」
「そうなんですか」
「きっと、おばあさんは少しでも気分転換になるように服をお孫さんにあげたいんじゃないかと」
「きっとそうです」
「そうだな」
「ああ、いいこと考えちゃったにゃん」
「なに?」
「3日後に、そのおばあさんとお孫さんを、このカフェに招待しようよ」
「いい! きっと喜ぶよ!」
「レオ、いいアイデアだ」
「その日はお店は休みにしよう」
みんなで計画をたてた。
おばあさんは3日後に服をとりにくる約束だからその時間に合わせることにした。
おばあさんが家をでたあと、お孫さんをつれだす。
お孫さんはジェースとレオが連れてくることになった。
なんとしても、お孫さんをつれてくるらしい。
さらってこないことだけを祈ろう。
まあ、あのふたりだから大丈夫だろう。
よ~し、なんとしても計画を成功させよう!
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