第15話 本当に王子さまなの?

馬車から降りたわたしは驚いた。

だって、お城のような家なんだもん。

門からも長かった。


お手伝いさんのような人たちが出迎えた。


「おかえりなさいませ、ルーカスさま、ジェースさま」

「「ああ」」


ふたりはいつもとは違う感じで挨拶していた。


「まいちゃん、ついてきて」

「あ、はい」


わたしはふたりの間を歩いてついていった。


トントンッ!


ドアをノックした。


「どうぞ」


中から、男性の声がした。

お父さんかな~


「ただいまもどりました」

「ああ、よくもどった」


わたしも恐る恐るお父さんの顔をみた。

これは、超イケメンだ。


やばい、めっちゃタイプだ!

ドンピシャ!


「お客かね」

「はい、今一緒にくらしています」


ええええええええええええっ!

そんな言い方したら勘違いするでしょうよ。


「そうか、一緒に」


隣にいた女性、たぶんお母さんだろう。

驚いて聞いてきた。


「ええっ! ルーカスさんと一緒にくらしているのですか?」

「いえ、ジェースも一緒にくらしています」


おいおいおいおい!

ルーカス。

そんな言い方したらわたしはふたりの男をたぶらかしているようではないか?


「あ、あの……、6人でくらしています」

「そうなの?」

「はい、まいといいます」


「まいさん!」

「はい」


お父さんが話しかけてきた。


「噂は聞いていますよ」

「なんのですか?」

「あの家でお店をやっているようだな」

「はい、繁盛しています」


お父さんの顔色が変わったように感じた。


「わたしは反対だ!」

「え?」


わたしは驚いた。

ルーカスが反論した。


「父上、なぜ反対なのですか?」

「お前たちがこの家を出ていることも反対なのに、さらにお店をやっているなんて……」

「まあ、そういわれると思っていたよ」


ジェースが少し怒りぎみにいった。

あのジェースがめずらしい。


「お前たちはオーガ族の王子なんだぞ!」


いまオーガ族の王子っていったよね。

やっぱり、王子さまかぁ~


でも、わたしを一緒につれていきたいといっていた理由がわかったような気がする。

でも、お父さんはなぜ反対するのだろう。

息子が遠くにいるのが寂しいとか……。

まあ、親子関係はあまりよくなさそうだ。


「ジェース、なんだその態度は」


ジェースは反対側を向いている。


「ジェース、落ち着け」


ルーカスがジェースをなだめている。

おう、ルーカスはちょっと大人だな。


「ルーカス、お前がついていながらこんなことになるなんて」


ルーカスの顔がかわった。

これは、だれも止められなくなっちゃうと思ったのでどうにかしないと考えた。

そして、お父さんと話をしたいと思った。


「あの~お父さま、わたしとふたりでお話しできませんか?」

「「まい!」」


ふたりにとめられた。


「お嬢さんがわたしになんの話があるのかな? まあ、いいだろう」


「大丈夫よ、少しふたりでお話しさせて」

「「わかった」」


お母さんとルーカスとジェースは部屋を出て行った。


「それで話とは?」

「お父さま、あの家でお店をやろうといいだしたのはわたしです」

「なに?」

「わたしはルーカスさんに助けられました。そしてあの家で一緒に生活するようになったのです」

「ああ、それで」

「リエルという子が食事を作っていました。そして、スキルをマックスにしてこの世界最高のシェフとなりました」

「……」

「わたしは、この世界の人においしいものを食べさせるべきだとおもったのです」

「……」

「お父さま、ルーカスさんの特技知っていますか?」

「と、特技?」

「はい、ルーカスさんは服を作ることがとても上手です」

「え? そうなのか?」

「はい、スキルアップしたので人の体をみただけで寸法がわかるんです」

「それは……」

「そして、服をささっと作ってしまうんです」

「そう……」

「そんなすごい人たちがなにもしないなんて、もったいなさすぎる。活用するべきだと思いました」

「……」

「ジェースさんの特技を知っていますか?」

「ジェースはなにもできないだろう」

「そんなことありません」

「……」


ジェースは直接みてもらったほうがいいと思った。


「いいこと、思いつきました。お店に来てふたりをみてください」

「……」

「きっと違ったふたりを見ることができるはずです」


しばらくお父さんは考えていた。


「わかった、明日にでも行くとしよう……だが、ふたりにはいくことは言わないでほしい」

「わかりました。お待ちしています」


この日はこのまま帰った。

馬車の中でふたりからどんな話をしたのかとか、嫌な思いをしなかったかとかいろいろ聞かれた。


「まい、なんの話をしたんだ?」

「え? たいした話はしてないよ」


わたしはごまかした。


――――


「ただいま」

「おかえりにゃん」


レオのお出迎えだ。

リビングにリエルとディアムもいた。

この和やかな雰囲気が大好き!


ふたりも何事もなかったかのように接していた。

明日お父さんが店にくるけど、大丈夫だよね。


――――


次の日。

お店開店です。


「いらっしゃいませ」


いつものようにお客さまの相手をしていました。

ルーカスは忙しそうに服を買いに来たお客さまの相手をしていた。

そして、ジェースはカフェのお客さまの注文をとり食事を運んだりと忙しそうにしていた。


窓の外にお父さんの姿がみえた。

わたしは急いで外に出た。


「お父さま!」

「おぅ! まいさん、来させてもらったよ」

「はい、ようこそいらっしゃいました」


わたしは隠し持っていた帽子をお父さんにかぶせました。


「おい、これはなんだ」

「いいから、これをかぶって中に入りますよ」

「あ、あ、おい!」


「いらっしゃいませ」


ルーカスがよってきた。

お父さんは顔を少しかくしぎみにうなずいた。


「ああ」


「ルーカスさん、このお客さまはわたしが案内します」

「そうか? じゃあ、頼む」

「はい」


ルーカスは他のお客さまのところにいった。

その様子をお父さんはこそこそみたり話を聞いたりしていた。


「お父さま、次はカフェに行きましょう」

「あ、ああ」


カウンターにジェースがいた。


「いらっしゃいませ、なにになさいますか?」

「ああ……」


お父さんが困っていたらジェースがおすすめを言ってきた。


「決めるのにお困りのようでしたら、このお店のおすすめメニューはいかがですか?」

「ああ、じゃあそれで」

「はい、かしこまりました」


お父さんは会計をすませ、ジェースに席を案内された。

わたしも一緒にいった。


「お父さま大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」


すると、近くに座っていた女性のお客さまがコップにはいったお水をこぼしてしまいました。

それをみたジェースがいち早く気づき、タオルをもってきた。


「お客さま、大丈夫ですか?」

「あ、はいすみませんこぼしてしまって」

「大丈夫ですよ、お客さまの服は濡れていませんか?」

「はい、大丈夫です」

「べつのお水お持ちしますね」


このお客の女性はこの早い対応にうっとり。

さすが、ジェースです。


これをみていたお父さんはどう思っただろうか。


「まいさん」

「はい」

「ありがとう」

「え?」

「今日、来てよかった」

「本当ですか?」

「ああ、そしてこれからも息子ふたりを頼む」

「はい!」


頼むってどういうことかな?

結婚?

まさかね~


【妄想中】


♪~「息子を頼む」

「はい」

「どっちがいいかね」

「ええ~どっちって選べないよ~」

しっかり者のルーカスか。キラッ!

優しいジェースか。キラッ!

困っちゃうよ~

「なんならわたしでもいいけどな」

お父さん~……♪


「ありがとう、またふたりと一緒に遊びに来てくれ」

「はい、ありがとうございます」


お父さんはふたりに内緒で帰っていった。


これで親子の中がよくなるといいな~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る