第13話 嫉妬ですか?

お店は繁盛していた。

カフェは毎日、女性客で満席だった。

ジェースとレオは女性の扱いがうまい。

ちょっとした気遣いもできる。

もてるに決まっている。

大繁盛だ。


ブティックも順調だ。

ルーカスは毎日忙しそうだ。

無理をしない日程で服の依頼を受けている。

実際、ルーカスに会いに来ているというお客さまもいる。

ルーカスの接客をみてうっとりしているからわかる。

それはそうだ。

ルーカスは顔がいい。

そして、あのやさしい口調だ。

声をきいているだけでうっとりしてしまう。


――――


そんなある日、2人組みの男性が店にやってきた。

珍しいこともあるものだ。


「いらっしゃいませ」


カフェに来たようだ。


ふたりは注文をして席に座った。

レオがふたりの席に食べ物を運んでいた。

ふたりは食べ始めた。


「なあ、繁盛してるからきたけどこの店の料理はまずいな!」


ええっ?

なにを大きな声でいっているんだ。

まずいわけがない。


お店の女性たちは驚いて、嫌な顔をしている。

その女性客にたいして声をあげた。


「なんだよ! 文句あるのか? まずいっていっちゃいけないのか?」


これはあきらかにいちゃもんをつけているのだ。


「お客さま、なにかお口にあいませんでしたか?」

「あ? まずいっていったんだよ!」

「そうですか、申し訳ありません」


ジェースが大人の対応をしている。


「なあ、イケメン兄ちゃんよー! もっとおいしいもの作ってもってこいよ!」


お客が立ち上がってジェースの肩を押してきた。

手を出したのだ。


もう、黙ってはいられない。

まい!

ルーカスがわたしを止める声も聞かづにお客の前に出た。


「あの、お客さま!」

「なんだ、お嬢ちゃんは!」

「お店で大声をだすのはやめてもらえますか?」

「はぁ! お嬢ちゃんよく見ると可愛いな~」


はぁ!

なにいってんだこの不細工が!

イケメンに嫉妬しちゃって最低だよ!


と言ってやりたいが我慢した。


そのお客はわたしにべたべた触りだした。


「やめてください!」


手を振りはらっても髪の毛を触ってきたりした。


「お客さま、そこまでにしてもらえますか?」


ルーカスの声にわたしは振り返った。

すると、ジェースとレオ、さらに厨房からもリエルとディアムも出てきて勢ぞろいしていた。


「なんだよー」


ルーカスが前に出て話はじめた。


「ここの料理は超一流シェフが作っていますのでまずいことは絶対にありません」

「まずいんだよー」

「でしたら、お客さまの口にはあわなかったのでしょう」


おぅ!

さすが!


「少なくても、ここにきてくださるお客さまはおいしいと言って来てくださっています」


そうだ、そうだ。


「今日はおかえりいただけますか?」

「なに!」

「おかえりいただけないと、他のお客さまに迷惑をかけるわけにはいかないので強制的に外に出てもらうことになりますが……」


ルーカスたちは、かなりの威圧感を放っている。


「わ、わかったよ」


2人組は慌てて帰っていった。


「またのご来店をお待ちしております」


わたしたちは全員で送りだした。


「よし! お店に戻ってお客さまにお詫びをしよう」

「じゃあ、お詫びにデザートを作るよ」


リエルがお客全員にデザートをサービスするといった。


「いいね。手伝うよ」

「お願い」


お店にはいると、そこにいた女性たちは笑顔だった。


「みなさま、お騒がせして申し訳ございませんでした」

「いいのよ」

「お詫びにシェフからデザートのサービスをさせていただきます」

「わ~うれしい~」


お店はもとのほんわかした空気に戻っていた。

よかった。


「ルーカスさん、ごめんなさい」

「なにが?」

「つい頭に血がのぼってしまって」

「まいが怪我しなくてよかったよ」


「まいになにかあったら……みんな戦いモードになっていたよ」

「ええっ?」

「みんなの目をみなかったかい?」


そういえば、みんなの目は怒っていた。

我慢していたのか……。


「そういうことだよ、あそこで戦っていたらお店はぐちゃぐちゃだよ」


ルーカスは笑いながらいっていた。


無事に最後のお客さまを送りだした。


「ありがとうどざいました」


あ~ 今日も仕事が終わった。


「ビールでも飲もうぜ」


ディアムがいった。


「賛成!」


みんな賛成だ。

わたしも今日は飲みたい気分だ。


明日はお店は定休日です。


リエルがおつまみを作ってくれた。

みんなでたくさんのお酒を飲んだ。


「今日はまいが突然出てくるから驚いたにゃん~」


レオが絡んできた。


「だって、ジェースさんに手をだしたから黙っていられなくなっちゃって」

「あ~まいちゃん、おれのために~うれしいね~」


ジェースが抱きついてきた。


「でも、おれのためにけがをしたら大変だ。おれは、まいちゃんを守りたいよ」


う~ん、最高!

ドキッ!っとすることを簡単に言うんだよな~


「ジェースさん! まいはぼくが守ります」


レオは結構酔っているようだ。


「そうか、そうか、わかったレオは可愛いな~」


ジェースはレオに抱きつきながらじゃれあっている。


「まい、でも無茶はするな」


ディアムがいってきた。


「はい、迷惑かけてすみませんでした」

「迷惑ではない。心配なだけだ」


ディアムなりに心配してくれているようだ。


「ぼくも、まいさんになにかあったら魔法をぶちかますところでした」

「ええっ? お店がつぶれちゃうよ」

「そうなんだけど……」


みんな、わたしを守ってくれているんだな。

嬉しい。

こんな気持ちになるなんて思ってもいなかった。


異世界にきてよかったー

女神さま、ありがとうー


そして、朝まで飲み明かした。

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