幼馴染への告白

三上 蒼太

高校の卒業式.....好きな人が死んだ.....


 

 

 ——卒業——

 

 これは一生に数回しかない貴重な体験だ。

 だが、俺、細沼春人の高校の卒業は一風変わったものになった……。

 

 ——三月十五日——

 

 桜の蕾も少しづつ開花してきて、春の陽気も顔を出し始めた三月中旬。

 俺は今日、高校を卒業する。

 

「そうか……今日で卒業か……」

 

 卒業すると説明はしているが俺の心境はまだ卒業をすると言う実感がなかった。

 毎日制服姿で通った校門を通り、いつも通りに自分の教室に向かう。

 

 教室に入ると、いつも通りの制服の左胸に胸花リボンがみんなについていた。

 俺はいつも通り、窓際の三列目の自席に座る。

 ここまでは、高校生活三年間毎日繰り返してきた日常だ。

 だが、今日は少しだけいつもとは違う行動を俺はするつもりだった。

 幼馴染の細田遥香に告白する。

 告白なんて人生で初めてだ。

 振られたらどうしよう。

 もう、幼馴染の関係には戻れないかもしれない。

 昨日の夜ベッドの上でそんなことも考えた。

 だが、俺は今日、幼馴染という枠から脱却し恋人という関係まで駆け上がることを遥香への「明日伝えたいことがある」という、メッセージとともに、決意した。

 

「……みんな席につけ……」

 

 そんなことを考えていると、五十代後半ぐらいのクラスの担任が神妙な面持ちで教室に入ってきた。

 やはり、いくつになっても卒業式と言ったら複雑な気持ちなのだろうか……。

 

「………大変残念なのだが……ほ、細田遥香さんが……昨日の夜亡くなった……」

 

「…………は?」

 

 俺の高校の卒業式の日……好きな人が死んだ……。

 

 

 ——卒業式——

 

 卒業式は遥香の死にも触れずにスムーズに進んで行った。

 今は、卒業証書授与の時間だ。

 

「細田遥香」

 

 証書授与の呼ばれる順番は出席番号順なので俺の一つ前が遥香の番だった。

 卒業式練習でも二日前までは元気に返事していた遥香の姿はもうない。

 

「…………」

 

 当然、遥香の名前が呼ばれても、誰も返事はない。

 あるのは、遥香の名前が呼ばれたあとの若干のざわつきだけだ。

 

「細沼春人」

 

「……はい」

 

 担任も遥香の名前を呼んだあとすぐに俺の名前を呼んだ。まるで細田遥香という人間は最初からいなかったかのように……。

 

  ——教室——

 

 卒業式が終わり、みんなが教室に戻ってきた。

 本来ならみんなで最後を楽しくワイワイ過ごすのが当たり前なのだろうが、俺の教室は静まり返っていた。

 俺も、自席に座って俯いて黙っている。

 他のみんなも俺と同じように座っているだけだ。

 

「……春人」

 

 そんな中、俺に話しかける奴がいた。

 幼馴染の和泉康介。

 彼も俺と同じように遥香と幼少期を一緒に過ごしてきた奴だ。

 そして、俺の今日の告白のことを唯一知っている人物である。

  

「………」

 

「………」

 

 数秒間の沈黙が俺と康介を包む。

 何秒間たっただろうかというところで先に口を開いたのは康介だった。

 

「…………いや、なんでもない。ごめん」

 

 この言葉を聞いて数秒後俺は自席を立って康介に一言、

 

「……先に帰るわ」

 

 これだけ言って俺は家に帰った。

 

 ——自宅——

 

 学校から徒歩十数分の所に俺の家はある。

 ここまで希望がない状態で俺の家を見るのは初めてだ。

 

「……ただいま」

 

 覇気のない形だけの挨拶。

 それを聞いて奥のリビングから出てきたのは俺の母だった。

 

「春人、遥香ちゃんが……」

 

 どうやら母も知っているようだ。

 

「……知ってるよ。ごめん……少し……一人にしてもらえる?」

 

 そう言って俺は二階の自室に向かう。

 俺の部屋には本棚に机、ベットがある。

 至ってシンプルな部屋だ。

 机の上には俺に遥香、そしてさっき話しかけてきた康介が写っている写真がある。

 

 部屋に入ったら俺はまずベットに横になった。昨日は成功するかどうか緊張とワクワクが入り交じりながら眠りについたベットにこんな気持ちで再度横になるとは思わなかったな……。

 

「………遥香……」

 

 遥香の名前が自然と出たあと、十数年間分の思い出が思い出された。

 

 

 ——公園——

 

 ベットに横になって数時間後……

 涙も全てだしきって俺は公園に来た。

 ここは、俺と遥香が小さい頃よく遊びにきていた公園だ。

 

 皮肉にも今夜は綺麗に月が出ていた。


「……この雰囲気で告白したら成功したのかな……」

 

 そんな誰も聞いていない独り言を言っていると、小さい頃よく遥香と一緒に乗っていたブランコが目に入った。

 

「っとと、こんなに小さかったっけ?」

 

 数年ぶりに思い出のブランコに乗ってみた。

 やはり体が成長しているだけあって、小さく感じた。

 ギコギコと錆びた鎖が擦れ合う音を立ててブランコを漕ぎ出した。

 

「…………覚えてるかな?遥香。ここで俺と一緒にどっちが高く漕げるかってよく対決していっつも俺に負けて泣きながら俺にバカとか言って怒っていたこと。あの時は本当に大変だったよ。母さんには、たまには勝たせてあげなさいって俺が怒られたんだぞ?」

 

 こんなことを一人で語っていると隣のブランコが微かに動いた。

 不思議と隣のブランコには遥香が乗っていると確信ができた。

この揺れているブランコは俺に何かを訴えている。

まるで早く来いと言うようにギコギコという音が早くなっている。


そして、俺は生まれて初めて乗るブランコに乗った……。

 

 

 

 

 

 

 こんにちわ!三上蒼太です。

 皆様お久しぶりです。

 初めましての方は初めまして!

 本作はカクヨム甲子園に出そうと思っていたのですが、すっかり忘れていてさっき久しぶりに発見致しまして、一時間で途中を書いたものです。

 拙い文章ですが、感想やレビューをくれるとすごく喜びます、

 よろしくお願いします!

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幼馴染への告白 三上 蒼太 @koushien

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