第5話 第二の刺客ミール登場!やる気はないようだ。
「ふーん」
「へー」
「ビックリしろよ!!!!」
いや、ビックリしろと言われても昔から事あるごとに「勝負だっ!」って突っかかくるライリルにまた同じ事を言われただけのことで、いちいち驚きもへったくれもない。
「お前達は本当につまらない大人になったものだな! まぁいい! 出てこい! ミール!!」
げっ、ミールも連れてきてんのかよ。
「こんにちは」
棚と棚の間に巧妙に隠れてたミールが姿を表す。
俺こいつ苦手なんだよなぁ。
長い黒髪ををなびかせ服も全部黒で統一している。
なのに何で眼鏡だけ薄いピンク色なんだよ。
それは揃えようぜ。
「何? ミールも共犯なの?」
「違う。私はラーちゃんに無理やり連れてこられただけだ」
「仕事いいのかよ」
「いいんじゃないか?」
「よくねぇだろ! しっかりしろ!」
ミールは雑貨系リュースショップのピュアストームで二ヶ月前から働いている。
こいつは学校の時から頭もいいし魔法の才能もあるくせに飽き性ですぐに物事を辞める癖が酷かった。
大人になってからも仕事が長続きせず辞めては新しい仕事、辞めては新しい仕事の繰り返しだ。
「おいっ!! 話しを進めるぞ!」
ライリルがプンスカプンスカしながら指示してくる。
本当に小さいくせにうるさい奴だ。
「頭の良いボクは考えた。本当にこの街でリュースショップが三店舗もあっていいのかと。そして答えはノーだ! そんなにあってもお客さんが分散するだけで全く意味がない! だから売上差額勝負して勝ったら他の二店舗は閉店な!」
「全く意味がわからない」
「お子ちゃまが考えそうな勝負ね」
「ダルい」
「お前以外やる気ないんだけど」
「あー! うるさいうるさい! やるったらやるの! やらないって言うなら今からパンツ出してから大人呼んでコールをボクを襲おうとした強姦魔として裁判にかけるからな!」
こいつ、自分のやりたいことを優先しすぎて人の人生弄ぼうとしてやがる。
「わかったわかった。でも閉店はまずいから勝負だけにしような? それでいいだろ?」
「むーまぁパパに怒られても嫌だしな……じゃあ買った店が負けた店になんでも命令できる権利にしよう! ルールはさっきも言った通り買取と売上の差額でプラスが多かった店の勝利わかったか! ミールもわかったな?」
「まぁ、うん」
本当にわかってるのかこいつ?
「勝負は明日ね! よーし! そうと決まったら店に戻るぞー! 絶対勝てる作戦あるんだー! ふふーん! 教えないけどなー! ひひーん! じゃあなー! ほほーん!」
やたらテンション高く帰っていくライリル。
「マヂで勘弁してほしいわ」
「本当ね。いつまで立っても子供の時のままなんだから困っちゃうわ」
「本当だな。おい、コーくん飲み物くれよ」
「お前は店に戻れよ」
なに普通に居座ろうとしてんだ。
「戻れよと言われてもだな。どうせ戻ったら怒られるわけだろ? それなら長くサボった方がお得に決まってるだろう。そんなこともわからないのかコーくんは」
「何で上から目線なんだよ」
「コーくんでは話にならないなセーちゃん飲み物ちょうだい」
「何がいい? 紅茶でいいならすぐに入れるわよ」
お前も敵なのか。
サラが階段を上がって紅茶を作りにいってしまったので必然的にミールと二人きりになった。
「そうだ。偶然、店から持ってきたクッキーあるから皆で一緒に食べよう」
「お前のところ食品も扱ってんのかよ」
「これは仕入れ品だ。買取とかはしていない」
「そらそうだろ。食品なんてリスクしかないもん買取したくねぇもん」
いくら開けていないのが確実なものでも怖すぎる。
時々売りに来る人がいるんだけど、レベル的には確実に何回か使った水着を持ってこられるぐらい困るんだよな。
それにしても。
「ミール、お前って本当にいつも無表情だよな」
「そうでもない」
「いや、そうだよ。今だって無表情の塊みたいな顔してんぞ」
「今は満面の笑みだぞ?」
「どこがだよ!」
口角すら一ミリも上がってない!
「元が可愛いんだからもっとニッコリした方がモテるぞ」
「別に他の人にモテようとか考えてないし」
「さいですか」
意味のない話しをしていたらセラが紅茶の入ったティーカップをトレイに乗せて持ってきてくれた。
「熱いから気を付けてね」
「ありがとう」
「セーちゃんの紅茶は大好きだ」
「あら、ありがとうミール」
「クッキー開けてくれ」
「お前、昔からこういう蓋開けられないよな」
「いっつもコールに開けてもらってるわよね」
「力ないんだ」
ミールからクッキーの缶を受け取り蓋を開ける。
そんなに力いらないけどやっぱり女性の力だと固いんだろうな。
「そう言えばミールこの前可愛い洋服見つけて!」
その後はあーだこーだと雑談をして時間は過ぎていき最終的にはミールは四時間、店に居座っていった。
いや、クビになるぞお前。
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