2 恋のライバルは強敵?!
「結菜さんって、お兄ちゃんのどこが好きなの?」
やはり奏斗の妹とは仲良くしておきたい。
そう思った結菜は帰宅後、落ち着いてからIDを教わっていたメッセージアプリからメッセージを送ってみた。すると通話をしようと言う。もちろんOKの返事をした。
奏斗の妹、風花は貴重な黒猫シリーズ好き仲間でもある。
先日奏斗の家に遊びに行った時、手土産として新作のストラップをプレゼントしたらとても喜んでいたことを思い出す。
奏斗が席を外している間に、少し彼女の黒猫コレクションを見せてもらって驚いた。プレミア物のぬいぐるみがたくさんあったから。
『ちょ……これ!』
その中にネットオークションで二十万もするぬいぐるみが混ざっており、思わず声をあげてしまったほどだ。
『それは、お兄ちゃんの元カノさんから貰った』
一瞬、愛美のことかと思ったがどうやら違うようだ。
騒がしかったのか、二階に戻ってきた奏斗が風花の部屋を覗き込み、どうかしたのか? と言う視線を結菜に向けた。
『なんだ、結菜も欲しいのか? 俺が買ってやろうか』
などと奏斗が気軽に言うものだから、結菜は彼を廊下に連れ出すと声を潜め、
『何言ってるの。あれ、オークションで二十万もするプレミアものだよ?』
と教えたのだ。
『え?!』
と驚いたあと風花の部屋の方に視線を走らせ、唖然とする奏斗。
──きっと風花ちゃんにあれをくれたのは、奏斗くんが引きずっている年上の元カノさんなんだよね。
元々持っていたとは考え辛い。
コレクターなら手放したりしないだろうと思うから。
とすれば、風花にプレゼントするためにわざわざ買ったのだろう。
そこでやはり疑問が浮かぶのだ。
──元カノさんってホントに遊びで奏斗くんと付き合っていたのかな……。
それなのにあんな高額なものを遊び相手の妹にプレゼントする?
お金持ちということも考えられるけれど、なんか引っかかるんだ。
引っかかると言えば、風花のその彼女に対しての反応も変だった。
『今でも連絡は取っているよ。たまにご飯に連れて行ってくれるの。お兄ちゃんには内緒ね』
気になるのは奏斗に内緒にしている点だ。
名前は教えて貰えなかった。
『お兄ちゃんが言わないなら、知られたくないんじゃないのかな。風花からは言えない』
その判断は正しいと思う。
自分の知らないところでプライベートなことを明かされるのは誰だって気持ちのいいものではないだろう。
「見た目に惚れたなら、やめた方が良いと思うよ」
風花はそう言った。
「そんなんじゃないわ。一緒にいて気が合うし、楽しいから惹かれたの」
結菜は見えない敵がいるように感じている。
風花は一体誰の味方なのだろう。
「そうなんだ」
「奏斗くんって、すごくモテるよね」
言ってしまってから、妹がそんなことを言われても困るかと思った。
だが彼女は、
「みんなフッちゃうって聞いたけど」
とつまらなそうに言う。
「その割にはすぐ次の恋人ができる。懲りない人」
”お兄ちゃんと付き合っていても幸せにはなれないよ”と彼女は言う。
別れさせたいわけではなさそうだが、奏斗には他に想い人がいるのだと言われているような気分に陥る。
奏斗の心に影を落としているのは年上の元カノ。
それは本人が言っていたことだから、そうなのだろうと思う。
やっぱりこんなの負け戦だと心の中でため息をついた。
──たくさんあったぬいぐるみは、その元カノさんがくれたものだと言っていた。あれは……賄賂なんじゃないかと思うの。
風花を味方につけるための賄賂だとするならば納得もいく。
しかし現状、二人は別れている。
だとするなら、賄賂の報酬はなんだろうか?
──どうしたらいいの?
愛美さんは凄く可愛い子だし、年上の元カノさんはお金持ち。
わたしには武器なんてない。
わたしだって奏斗くんが好き。
負けたくないよ……。
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