第2話 悪魔の世界
名前もないインプだった俺は、ダンジョンコアの所有権を得たことでダンジョンマスターと呼ばれる超越的悪魔に進化した。
高位の悪魔は人間に擬態する能力を持つ。ダンジョンマスターもその例外ではない。
俺は久しぶりに人間の姿に戻った。
しかし、姿だけ。悪魔であることには変わりない。罪が消えない限り、どの悪魔も完全に人間になることは出来ない。
「ギピピー!(おーい)」
「ギュピーッ(どこいったー?)」
インプたちの声がする。
「ギュピッ!? ギピギピ(はっ!? ダンジョンマスターさま)」
「ギュピー!ギュピピー(なぜこんなところにダンジョンマスターさまが!)」
仲間のインプたちだ。
いなくなった俺を探しにきてくれたのか。
「インプたち、私はダンジョンの支配者となった。これからこの地下世界にダンジョンを建設する。お前たちにも手伝ってほしい」
「ギュピー!ギュピー(はぁー!当然でございます。ダンジョンマスターさまぁ!)」
インプのような低級魔は、高位の悪魔に対して従順だ。
「よし。では、まずこのダンジョンコアを中心に掘り進めろ。ダンジョンを拡張していけ。他のインプたちも呼び寄せて、手伝わせるんだ」
「ギピギピ(はぁっ。了解しました)」
インプには名前がないので、俺は見た目の特徴で判別することにした。
たいていは傷やすれの数で覚えるしかない。羽がもげてたり、ひしゃげてたりするともっと覚えやすい。特徴的なのは、眼球が一つしかないカタメくん。尻尾が裂けてるネコマタくん。カエルみたいにぴょんぴょん跳ねるカエルくんなど。
インプの生態は、一日十五時間働いて、六時間を三回にわけて眠る。好物の虫やトカゲを見つけると一度巣に持ち帰って皆でわけて食べる。残る時間はパートナーとの性交にあてる。性交は前戯が九割。
「ぎぴぴっ(ダンジョンマスターさまっ!これをっ!)」
ある一匹のインプが、ダンジョンの拡張を進める途中で、【魔鉱石】を見つけた。
「おおっ。よくやった!」
魔鉱石はダンジョンコアとおなじ魔力の結晶だ。
コアには到底及ばない小さな欠片だが、これがあればコアを成長させることができる。
俺は小さな魔鉱石を半分に割り、一方はコアに吸収させ、もう一方はインプに褒美として分け与える。
「えっと・・・お前はカタメくんか。食べていいぞ」
「ぎゅぴぃ!?(ぇええ!? いいんですか!?)」
インプはおそるおそる魔鉱石を口に入れた。
俺がコアの魔力を吸収してダンジョンマスターに進化したのと同じように、このカタメくんにも上級悪魔に進化してもらうことにした。
「ぎ、ぎ、、ぎぎぎ。ぎぴー!」
カタメくんは、デビルロードに進化した。
上級悪魔は人間の姿を模倣する。このデビルロードも醜いインプの姿から人間の姿になったのだ。そして、失った眼球は【魔眼】として復活した。
「・・・見える。ずっと遠くにいるインプたちのことが。ダンジョンの隅々まで、この魔眼を通してみることが出来ます」
「なるほど。それはちょうどいい。お前にはダンジョンの管理人になってもらおう」
「はっ。承りました、ダンジョンマスター。この力はあなたに貰った力です。あなたの為だけに使いましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます