インプから始まるダンジョン経営
ザベス
第1話 転生
「お前は前世で罪のない人間をたくさん殺した」
誰かがそう語りかける。
光に包まれていて姿がハッキリ見えない。
誰だろう。もしかして、カミサマ・・・?
「これだけの罪は一度の人生ではあがなえない。お前が前世で犯した人殺しの罪は・・・"永遠の罪"に等しい!」
人殺し?なんのことだ。
前世のことはちゃんと覚えてるが、人なんて殺してないぞ。
「ま、待ってくれ!」
「今さら罪を逃れようとしても無駄だ。お前は永遠の罪に縛られて生きる"悪魔"に転生するのだ」
まさか。俺の罪ってなんだ。人殺しってなんだよ・・・。
くそっ。なにがなんだかわからない。俺の記憶違いか?
いやいや、そんなはずない。
どうやら無実の罪を着せられたようだ。でも、相手はカミサマだよな・・・?
勘違いなんてありえるのか。おれは夢でもみているのか―――――。
そして、気付いたときには悪魔になっていた。おれは無実の罪を着せられ、インプとよばれる小悪魔に転生させられていた。
インプは、小さく醜い低級悪魔で、「ギピギピ」となく。
一度も日の光をあびたことがない地下世界の住人だ。魔力を持たない、虫けら同然の悪魔。
悪魔は死ぬことはない。小さな体に無限の罪を背負いながら、地底の暗い世界で永遠に暮らすのだ。
インプが虫けららしく惨めな暮らしをするのは当然のことだ。悪魔は生まれたことが罪で、存在することが悪だから。はじめからそう決まっている。
こんな虫けらみたいな悪魔に転生しても、前世の記憶はちゃんと残っていた。
そのおかげで、常に自らの復讐の炎と、身に覚えのない罪を贖罪し続けることの苦しみに耐えながら生きていくことになった。
ただ一つ、それと引き換えに、神が完全でないということを知ることができた。
何年、何十年、何百年、そんな苦しみを続けたある日。
「ぎぴ・・・」
俺はただひたすら坑道を掘っていた。アリが巣穴を広げるように。
これは虫けらインプの宿命的な仕事の一つだ。何も考えずひたすら坑道を掘る。罪が軽くなるわけでもないのに、ただひたすら掘る。
気づかないうちに、ずいぶん奥まで掘り進めていたようだ。他のインプたちの形跡が全く見られない未開拓の場所まで辿り着いた。
割れた岩壁の隙間から光がさしているのに気づく。
「ぎぴぃ~」
思わず声を漏らした。
目が焼けるようだった。何百年ぶりに強い光を見たからだ。
光に誘われていき、近づくとそこにはインプの体長の何倍もある巨大なオーブがあった。
オーブは、太陽みたいに強い光を放っている。
俺は浄化されそうになりながらも、なんとかオーブに触る。
あたたかい。
「ぎ、ぎぎぎぎ!」
オーブに触れた瞬間、体から力があふれ始めた。
「ぐ。ぐぎっぎ・・・ぐわあああああ!」
何百年ぶりに人間の声を発した。
体が、オーブから魔力を吸収している!
オーブは、まだ手付かずの状態で残っていた【ダンジョンコア】と呼ばれるものだった。偶然、魔力の結晶であるダンジョンコアに触れて所有権を得たのだ。
そして、コアから大量の魔力を吸収したことで体が変化を起こしている。
インプから、より高位の悪魔に・・・
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