第17話 もう走れません

ーーー村


 「村長、今日の魔石だ。二十匹ちゃんと狩ってきたぞ。」


 魔石の入った袋を手渡す。


 「おお、ザールや。ありがとの。」


 「じゃぁな。」


 「ちょっと待て。村の者が森の奥で十数匹集まった小鬼を見たと言っていた。」


 「.....」


 「少し格好の違う見た事の無い小鬼も混じっていたそうじゃ。気をつけるんじゃぞ」


 「格好の違う小鬼だと?依頼内容には小鬼としか書いていない。もし出ても俺らは逃げるぞ。」


 「ちょ...ちょっと待ってくれ!そいつが村に来たらどうなるんじゃ...!」


 ザールの目からは光が消えていた。


 「知るか。あばよ。」


 「ザール...お前そんな事言う奴じゃ...」


 「黙ってな、ソンチョーさん!」


 「....」


 三人はそのまま出て行ってしまった。


 「あの...すみません。あんな事言ってしまって...」


 ナーフがすかさず謝る。


 「んにゃ...お前さん達が悪い訳じゃ無い。ましてやあやつらが悪い訳でも...」


 「あの三人に何か有るんですか?」


 「お主ら、おかしいと思わなかったか?普通パーティは五人で組むものじゃ。」


 「いや...」


 そんな常識知らん!でもよく考えると、ギルドでは五人で固まってる奴が多かった。


 「二人死んでしまったのじゃよ。」


 驚きのあまり誰も声が出なかった。


 「でも、どうして死んでしまったのです?二人も...」


 「一人目は、ルークと言ってな、索敵が得意で、短剣で戦っとったかの。盗賊と言う職業じゃった。」


 「盗賊と言えば、身軽で素早さに長けた職業と聞きます。そんな人が何故?」


 「あれは数年前の事かのぉ...」


 晴れた、いつも通りの午後じゃった。


 「お前ら!行くぞ!」


 「栄光の盃、いつもありがとうね!」


 「お前らのお陰で村が助かってるぞ!」


 「今日巣を壊してくれれば、依頼を暫く出さなくて済みそうよ。」


 「いいってことよ!ガッハッハ!」


 ザールをリーダーとして、あのパーティは無償で依頼を引き受けてくれての。その時は小鬼の巣を壊すと言う依頼じゃったが、村の為だと言って森へ入って行った。


 その当時、今程魔物は出現しておらず、巣にも大した魔物は居ないじゃろと言うことで、村の者もまだ若い五人に任せたんじゃ。


 だが、


 「ザール達、遅いわねぇ。」


 「ああ。もう七時を過ぎるぞ。」


 「何かあったのかも知れぬ。誰か見に行ってくれんか。」


 森へ村の若者が見に行った時には、そこらに小鬼の死体が転がっておっての。村の近くの森の浅い所に四人が倒れておったそうじゃ。


 「おい!見つけたぞ!」


 「ザール!大丈夫か!?」


 何人かは、森の奥へ捜索へ行った。その間、段々小鬼の死体が増えて行ったそうじゃ。


 巣まで行くと、巣の中には大量の小鬼の死体がこんもり盛り上がっていたらしい。


 五人入って行った筈なのに、ルークだけが居ない。村へ四人を運び、軽傷だったサンドラが一番に目を覚ました。


 「サンドラ、ルークはどこに居る?」


 真っ先にルークの事を聞いたんじゃな。


 すると、


 「ルーク...ルーク...!ル....!!!」


 血走った目で、空を見つめながらルークの名を呼ぶんじゃ。そのまま眠ってしもうて結局分からん。


 後から目を覚ましたザールやサリー、もう一人の仲間だった者に聞けば、巣には、少し多かったが、対処出来るだけの小鬼しかいなかった。

 だから普通に倒そうと陣形を整えると、奥から小鬼魔法士が出てきたと言った。

 

 そいつが小鬼達に命令して、自分達を追い込んだそうじゃ。後ろに周りこまれ、魔法士の魔法も当時は十分に対応できず、体力を削られて行ったらしい。


 ルークがこのままでは全員死ぬと思って、自分だけ巣に残り、四人を逃したそうじゃ。


 それからの四人は、もう二度と過ちを繰り返すまいと、必死で鍛錬に励み、Dランクパーティまで昇格した。


 「ここまでは、あやつらもあんなふうでは無かったんじゃ。」


 「仲間の死を乗り越えたのですね...」


 Dランクパーティになって数ヶ月、四人での戦いも大分慣れてきていた頃じゃろう。サザール王国と言う所へ、迷宮探索へ行ったんじゃ。


 迷宮と言うのは、階層ごとに階層守護者がおっての。強いがそいつからドロップする素材を売れば結構な金になる。

 しかも出る魔物も外の奴より強く、素材の質が良い。宝箱もあって、見つけられれば一攫千金が狙えるんじゃな。


 わしらの居る国、アイン帝国にも迷宮は有るが、出る敵が強い。だから比較的安全だと言われているサザール王国へ行った。


 そこで悲劇が起こる。四人目の仲間の魔法使い、アリスが魔物に殺されるんじゃ。


 「魔物の暴走スタンピードと言うのは知っとるか?」


 「魔物が突然大量発生して、凶暴になるやつなのです。理由は解明されてないと本で読んだことあるのです!」


 「そうじゃ。」


 わしが知ってるのは、その魔物の暴走でアリスが死んだと言うことだけじゃ。あやつらはそれ以降、今みたいな風になってしまったんじゃ。


 「あやつらには内緒じゃぞ。」


 「....」


 「魔物の暴走や、魔物が大量発生する原因は魔王に有ると思う。だからあやつらは悪くない。」


 後ろで扉が開く音がした。


 「ザールッ!そこに居ったのか!サリー、サンドラまで...!」


 「アリスは人間に殺されたんだ。」


 「「!?」」

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バブルでブイブイ言わせたダンサー、異世界に転生して踊り子として生きる。神様に与えられた、「踊っている時のみ素早さが四倍になる」だけのゴミスキル<舞姫>で無双する。絶対貰うスキル間違えた!! 服英字髑髏 @fuku_eizidokuro

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