第15話 おっはー!

おはようなのです!」

 

 「すぴー。すぴー。」


 「むにゃむにゃ。ミーヤ....」


 「ご主人様?」


 「エリス様ぁ!ナーフ様ぁ!起きて欲しいのです。」


 「うん?...あっ!ミーヤ!大丈夫なの?」


 「ミーヤぁ!」


 「何がなのです?」


 「昨日の事覚えて無いの?」


 「昨日.........」


 記憶が完全に抹消されているんだね。


 昨日私達は、熱を出したミーヤに付きっきりで看病したのだ。


 母親の気持ちがわかったぜい。親の心子知らずとはよく言ったもんだな。


 「なのですー?コホっ!」


 「まだ咳が出るのか。」


 「はいなのです。奴隷商のとこで病気になったのです。」 


 「そっか...これ飲みな。」


 「ありがとうなのです。」


 ゴクリと薬草の青汁みたいなのを飲み干した。私が調合した奴だから効果は減少してるかもだけど。


 「まずいのですー!おえー。」


 「良薬口に苦し!ちゃんと毎日飲みなさい。」


 「うう〜...」


 ミーヤの元気が戻った様なので、皆んなで食堂の方へ降りて行く。そして朝ごはんを注文した。


 「私は駆け出し冒険者セット。」

 

 「僕も同じものを」


 「わ...私も!」


 「ミーヤ?いいの?いつも頼んでるお子様セットじゃなくて。」


 「私は冒険者です!だから同じものを下さい!」


 「駆け出し三つー!」


 ミーヤはまだ成人して無いから冒険者じゃ無いけどね。冒険者見習い?


 十分程でご飯が届いた!


 うーん、美味い。ここ以外のご飯やサービスを比べたわけじゃ無いが、風呂も良い。部屋も良い。食事も良い。ここはとても良い宿だと思う。


 うめぇーーー!


 女将や、他の客の獣人への態度を除けば最高の宿だ。


 ヒソヒソ


 こちらをチラリと見ながら話している輩がいるのがわかる。獣人という単語が聞こえるので、ミーヤの事を話しているのだろう。


 素早く食べ終え、店を出る。


 「ナーフ、行こう!」


 私たちは、最近毎日朝早くギルドへ行き、細々としたFランク用の依頼を受けていた。三人分の宿代は稼げている。


 今日も、依頼を受けようとギルドに行くと、依頼の掲示板一面に緊急依頼が貼られている。

 そう、この前持ってきた猪の数が多すぎて、人手が足りていない。


 「お前ら、猪百匹なんて聞いた事ねぇよ...大変な仕事持ってきやがって...」


 という風に、毎日誰かしらの冒険者から愚痴られている。


 そんな人達を横目に、受付に向かうと、


 「あ!「緋色の夜明け」さん達!おめでとうございます!Fランクから昇格ですよ〜!」


 「猪の件と兎の件で貢献度は充分だと上から判断が出まして!今日からEランクです!


 この町に来て約一週間!Eランクに昇格した!


 「今日からはEランクの依頼が受けられますので、そちらもご覧くださいね!」


 Eランク依頼...Eランク依頼...


 スライム討伐、迷宮探索、小鬼討伐、妖精討伐...


 Fランクの時は、薬草採集や、雑用ばかりだったが、Eランクからは魔物の討伐がメインになっているらしい。


 「最近魔物が増えていて...依頼が多いんです。」


 「何で魔物が増えるんですか?」


 「一説には魔王復活の予兆とも言われていますね。」


 魔王!?この世界ってそんな強そうなやつがいるのか!?


 「魔王って強いんですか?」


 「歴史書によると、約千年前に封印され、それ以来記述は無いですね。ですが、一千万以上の魔物の大軍勢を率いたとか、近づくだけで死ぬとか言われてます。」


 「そんなの復活したら世界終わるのでは?」


 「うーん...まぁ私達が生きてる間は大丈夫なんじゃ無いですか?知りませんけど。」


 あやふやな答えだ。神様は何にも言ってなかったけどなぁ...


 「エリスー!今日はこれにしよう!」


ーーーーーーーーーーーーーー

       Eランク依頼

 小鬼討伐

 リコ村の警備をお願いします。

 

 募集 パーティ二つ

 期間 一週間

 報酬 金貨二十枚

 

ーーーーーーーーーーーーーー


 「こちらの依頼ですね!この依頼は二パーティが協力して行う依頼ですので、パーティの方のところへ案内します。」


 ふぉぉぉ!初!協力依頼〜!


 なんてこった!これはアツいぜ!


 「よろしくな!」


 まず挨拶してくれたのは、明るそうな二十代後半くらいの大男だった。大剣を担いでいるので、剣士だろう。


 「よろしくね!」


 次に挨拶してくれたのは、弓を装備した、短髪の女性。人懐っこい笑顔を向けてくれている。背が大分高い。


 こんなに背の高い人滅多に見ないなー


 「....よろしくお願いします...」


 控え目そうな声の女の子は、身長が一番低く、大きな杖を持っており、金髪で長い髪の子だった。


 「俺らは全員二十五歳で、幼馴染なんだ!Dランクパーティの、「栄光の盃」だ!がんばろうな!」


 「はい!私はエリス、こっちはナーフです。そしてこの子はギルドに入っては無いんですが、ミーヤです。」


 「ミーヤちゃん。小さいな。こんな子に魔物が倒せるのか?」


 「勿論ですよ!ミーヤは下位猪くらいなら余裕です!」


 「へぇ〜ちいせぇのにすげぇな!」


 「ムキー!!小さく無いです!」


  「俺はザール、こっちはサリー、一番小さいのはサンドラだ。自己紹介も済んだ事だし、早速行こうぜ!」


 「あのー、騎士団が後進しているのを見たんですけど、あれってなんなんですか?」


 「あれは....迷宮....っへの探索に向かったんだ!騎士団の資金繰りが厳しいらしくてな。二か月位はいないんじゃ無いか?」


 「そうなんですね。」


 「だが、団長だけは町に残ってるって話だぜ。」


 「団長だけ?普通付いていくものでは?」


 「そうなんだがな。今回の遠征も急に決まったし、何かおかしいんだよなぁ。」


 急に決まった長期の遠征、団長は町に残る、対立する奴隷商ダゴミと団長。


 近々何かある。町の動向は常に注意しておかないと危険が及ぶかもしれない。


 ナーフもこちらを見て頷いている。


 「まぁ、俺らには関係ない事だ。依頼に集中しようじゃねぇか!」


 「そうですね....」


 「私達は小鬼を何度も討伐してるから、あんまり気を張らなくても大丈夫だけどね〜」


 「いっ...いけません!小鬼とは言え、何が起こるかわからないんですから!それにっ...貴方達....」


 マリアさんからお叱りが来た。


 「へいへーい、わかってるって!」


 マリアさんが何か言い切る前に、話を切った。


 「サリー、そんな事言ってると危ないよ?」


 サンドラの言うことも気にも留めない様子で、笑って手をヒラヒラさせた。


 「サンドラは本当に心配性だよねぇ〜。私達、何度もやってんだから、大丈夫よ!」


 「....そうだね。」


 サリーさんは豪快な性格で、サンドラさんは心配性。正反対の二人だな。


 こんな三人と、初めて仕事をする事になったのだった。この人達とは今後も上手くやって行けそうだ。

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