第14話 効いたよね、遅めの薬草


 何故か窓が開いていた事に気づいた直後。


 「ミーヤはまだ起きないのかなーん。」


 「起こさない様にね。」


 「はーい。」

 

 ミーヤのいるベッドを覗き込む。


 顔色が悪いし、苦しそうな顔をしている。


 「ゴホッゴホッゴホッ!!」


 突然ミーヤが咳をし始めた。


 「ミーヤ!?大丈夫?」


 ふと、ステータスに「病気」と表示されていたのを思い出した。


 額に手を置くと、熱い。高熱だ。


 「エリス、直ぐ薬屋に連れて行こう。」


 「うん!!」


 ナーフがミーヤをおぶってくれる。


 「先行くよ!速度上昇!」


 「後から追い付く!」


 ナーフは大通りの方へかけて行き、まだ開いていない薬屋のドアを叩く。


 奴隷商も病気だと言っていたのに...!元気そうに見えて、大丈夫だと安心し切っていた。


 全力でナーフの後を追いかけていく。すると一心不乱に扉を叩くナーフが居た。


 ドンドンドン!


 「すいません!子供が高熱なんです!助けてください!」


 ドンドンドン!


 「くそっ!」


 ドン....


 「おい、叩くでない。」


 ガチャ


 「ドアが歪んだらどうする。入れ。」


 中から、五十代半ばに見える男が出て来た。髪は全て白く染まり、気難しそうだ。眉間にシワがよっている。


 やな部長風店主...!


 「なんだ?患者がいるんだろ。」


 「はっ、はい!」


 店の中に運び込み、ミーヤを机の上に寝かせた。


 「はぁ、俺は医者じゃ無いんだがな...」


 文句を言いながらもミーヤの症状を診てくれる。


 「この子はどうなんでしょうか?」


 「見たところ、奴隷だな?」


 「どうして分かったんですか。」


 「この症状は栄養失調や、不衛生な環境に置かれる事で罹りやすくなる病気だ。奴隷は大体持ってる。」


 「治るんでしょうか?」


 「うーん...病気になった奴隷を治そうとする物好きはいねぇからな。生憎うちにはねぇ。」


 「それに、素材はリリス大陸の最も西にしか生えてねぇんだよな〜。薬草って知ってるか?アレは西の方にしか生えてねぇんだよ。」


 「薬草!?持ってます!!」


 「はぁ!?アレは一部にしか生えてねぇ貴重な....しかも騎士団が権利を独占してた気がするんだがな。」


 ん?生えていた場所には人が来ているような痕跡は無かったし、殺人蜂も居るから入ってこようとは思わないんじゃ....


 「まぁ、持ってるなら良い。寄越せ。」


 命令口調だなー


 「はぁ、どうぞ。」


 「なんだぁ?その態度...ブツブツ」


 何やら文句を言いながらも、薬を調合する手際は滑らかで、洗練されていた。


 「出来たぞ。乾燥しきってたせいで戻すのが面倒だったぜ...」


「ありがとうございます!」


 手渡された器から直接飲ませる。緑色で凄く不味そうだ。


 「ミーヤ、薬だよ。」


 意識が無いミーヤに、薬を無理矢理口に運んだ。


 こくん...


 何とか飲み込めた様だ。


 すーーすーー


 ミーヤの呼吸が段々落ち着いてきた。


 「これで良し。お前らたらふく飯食わせてやってんだな。」


 「え?はい、一応。」


 「奴隷に飯食わす奴なんて聞いた事ないぞ。栄養が付いてたお陰で症状も少しマシだった。」


 「そうですか....良かった。」


 ミーヤはご飯ものすっごい食べてたもんな。


 「俺は奴隷って奴が嫌いなんだ。最近の若者はちとおかしい。そう思わないか?」


 「....はい。何かが欠けている様に思います。」


 「お前ら気に入った。今回は無料で良い。」


 「いえ、お金は払いますよ。」


 「良いんだよ。あと、その娘には毎日薬を飲まさないとダメだ。」


 そう言った薬屋は、私に薬の調合を教えてくれた。


 ピロン♪


 <調合Ⅰ>を取得しました。


 「覚えたな?薬草は貴重なもんだから、誰にも場所教えんなよ。」


 「ありがとうございます!」


 こうして、ミーヤの病気を治す目処が立ったのであった。

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