第13話 帰りたい?
好きな子を呼び捨てにする事になった。慣れないな……。
「ダイヤはさ、元の世界に帰りたいと思う?」
お店が休みの日、依頼されていた装備品を全部調整し終えてモコと雑談している時に来た質問。
「うーん……モコはどう?」
正直、モコが居るならどの世界にいるとか些細な事だ。
「私が聞いてるの。どうなの?」
「んー……帰りたくないかな」
「なんで?」
「こっちの方が色々できることが多いし……」
帰った所でひとり暮らし。それに時間も経過してるだろうから授業にはついていけないだろうし、モコは他学年だし……。
「モコは、帰りたい?」
「私は帰んないよ」
「そっか。じゃあ僕も帰らない」
まぁ……帰る帰らない以前に帰り方とか分かんないんだけどね。
「良いの? 帰り方なら分かってるんだけど」
「えっ、そうなの?」
もっとこう……お約束として帰り方は分からないものじゃないのかな。
「来るのと同じ方法で、1年で1番月が綺麗な日に行きたい場所を強く念じながら山で1晩過ごせばいいの」
来るのと同じ方法……あっ、確かに! 僕、モコに会いたいと思いながら山に登って頭ぶつけて山で1晩過ごしたんだ!
「だからここに来れたんだ……」
1年経ってから山に登ったのも、色々偶然が重なって来れただけなんだ。
「ゲームのオープニングムービーで毎回この話されるからさ、試してみたんだよね」
「じゃあ、モコは自分からここに来たんだ」
「そ。どうせ居なくなったって誰も探さないだろうからね」
確かに、警察が捜索を打ち切ったあとに探してたのは僕だけだった。
「僕はずっと探してたよ」
「あー、それは予想外だった。アンタ思ってたより私の事好きだったし」
「えへへ……。モコが居ない1年間、生きた心地がしなかったよ……」
本当に、あの1年でかなり痩せたもんな……。
「そういうダイヤは? 心配してる人居るんじゃないの?」
「うーん……両親はもう死んじゃったし、親戚の家は中学卒業と同時に出てそれ以来だし……友だちも居ないし……」
押し付けられた文化祭実行委員は相方の子がちょっと困ったかな……。
「ふーん。まぁ、私もそんな感じ。あんまり私に興味無いみたいだし、妹じゃなくて良かったって思ってるくらいじゃないかな」
「モカさんだっけ……?」
中学から私立に通ってる双子の妹さんが居るって話は聞いた事がある。
というか多分モカさんは同じクラスだった事がある。
「そ。こっちならモカのこと知ってる人も居ないし、ある程度知識が有るから活躍できるかなぁと思って」
「そっか……」
モコも強く見えるけど、やっぱり自分の過ごしやすいところの方が生きやすいよね。
「モコの事、僕が1人にさせないからね」
「んー……まぁ、ありがと」
あれ、思ったより反応が優しい。
もっと気持ち悪がられるかと思った……というか、僕そういう扱いなのに慣れちゃってるな。
「アンリってさ」
「え、うん」
カッコイイとか、実は好きなんだよねとか言われたら僕泣いちゃうかも。……泣かないけどね。
「ゲームの頃から出てくるキャラなんだよ」
「そうなんだ!」
良かったゲームの話だ。
ゲーム自体を全く知らないから、こういう話聞けるの楽しいな。
「ルネと奥さんと3人で出てくるキャラなんだけど」
「えっ、奥さん居るの!?」
俺はルネ一筋! とか言ってるのに?
「ゲームの進行で奥さん死んじゃうんだよね」
「重いね!?」
思ってたのと違う理由で泣きそう。
「ルネは奥さんと自分に似せて作ってるからアンリはすごくルネの事愛してるの」
「そうなんだ……」
永遠の証、だもんね。
「それでこの前のミムンさん」
「ミムンさんもゲームのキャラなんだ」
「そう。アデールさんとの恋が実らなかった腹いせに暴れてルネを拐おうとしてアンリに倒されるモブ」
「結んじゃってよかった……?」
原作改変だ……原作厨の人に怒られる……。
「このイベントの後からアンリがおかしくなっていくってストーリー進行だから、ナイスと思って」
「良かった」
アンリくんがおかしくなっていくのは見たくないもんね。
……というか、DHF重いな……。もっと可愛くて優しい世界だと思ってた。
「……ダイヤ、この後時間ある? って無いわけないか」
「うん。あとはゆっくり休むだけだよ」
明日もお店だからね。
「じゃあさ、今夜空き部屋に来てよ。今日、すごく星が綺麗に見えるんだよ」
「わぁ、見てみたい!」
この世界に来てから……というか、両親が死んでから、まともに空なんて見てなかった気がする。
でも、モコと一緒にモコが綺麗だって言う空を見るのはすごく魅力的かも。
「じゃあ決まり! 寝落ちしたら許さないからね」
「うん!」
夜になるのが楽しみだ……!
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